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Airbnb CEO ブライアン・チェスキーが社員に送った「解雇」に関するメッセージが素晴らしい

新型コロナウィルスが観光業に大打撃を与えている中、Airbnb 社は全従業員7500人の内の約25%にあたる従業員1900人を解雇することを決定した。約25%と言うよりも、約4分の1と言ったほうが事の重大さが伝わるかもしれない。

このことがニュースになる前に、CEO のブライアン・チェスキーは従業員向けにあるメッセージを送っていた。その後、そのメッセージは会社のブログ上で公開されるようになる。

その内容があまりにも素晴らしく、ブライアンのリーダーシップ力に思わず感嘆してしまった。Twitter上でも多くの人たちがその素晴らしさを称賛している。

比較的優しい英語で読みやすく書かれているので、その素晴らしさに触れたければ、この記事よりも原文を読むことをオススメしたい! 原文を日本語訳したほうがその素晴らしさを伝えられるかもしれないが、こればかりは本当に原文で読むほうがブライアンの思いを感じられると思う。社内の情報をオープンにする良い事例として学ぶこともたくさんあるはずだ。

ブライアンが公開したメッセージを読んでみると、社員を解雇する会社の決定の裏側には、私たちが描写する会社が従業員を解雇する一般的な様子とは全く異なるものがあった。非情に戦略的な判断で、思いやりがあり、Airbnbのすべての人たちを応援したくなるものがある。

会社の HR(人事)事情に詳しい自分ではないが、社員の解雇に対するブライアンの対応が普通ではないことは明らかだ。それは、経営者が従業員を解雇することに関してオープンにメッセージを発信することからも分かる。こういうことを経営者がするのはまだまだ珍しい世の中だ。

この note ではブライアンが従業員に送るメッセージの内容が素晴らしいと思った点や今回の Airbnb 社の対応から学んだことについて書きたい。

(この記事は既に公開されているけど、まだまだ多くのことが学べられるので、追記中...)

従業員を解雇する核心的な理由がしっかりと説明されている

メッセージの冒頭では、ブライアンが従業員の解雇を決断するに至ったプロセスが記されている。

Airbnb は(コロナウィルスによる)大打撃を受け、今年度の収益は2019年度の半分以下であると予想される。これに伴い、20億ドル(約2100億円)の資金調達をし、Airbnb のあらゆるコストを劇的にカットした。

「資金調達」と「コストの削減」は新型コロナウィルスによる会社へのダメージを避けるうえで必要不可欠であったが、この時点では従業員を解雇するなんて考えはブライアンにはなかったそうだ。

では、なぜブライアンは従業員を解雇する苦渋の決断をしたのだろうか? それは、Airbnb の経営陣が次の2つの厳しい真実に直面したからだった。

1.いつ旅行が戻ってくるかわからない。
2.旅行が戻ったとして、旅行の姿は異なっているかもしれない。

新型コロナウィルスの蔓延が収まれば、人びとはまた旅行をし始め、遅かれ早かれ Airbnb のビジネスが将来的に回復することは予測できる。しかし、回復する時期がいつであるか、また新型コロナウィルスが私たちの生活に与えた変化が今度どうなるかを予測することはできない

人びとは今後も結婚式やビジネスをオンラインで済ますかもしれない。わざわざ旅をして、その場にいる必要がないのだ。また、人びとは安全性やお手ごろさを求めて、家の近場で旅を済ますようになるかもしれない。

会社が以前していたことすべてをアフターコロナの新世界ですることはできない。時代に合わせて Airbnb を進化させなければ、淘汰されてしまう。今一度 Airbnb のコアビジネスに立ち返るため、苦渋の決断ではあるが、人員を削減しなければならなくなった。メッセージの本文からはブライアンの真摯な姿勢が見受けられる。

もし自分がAirbnbの社員でこのような説明を受けていたら、おそらくブライの判断を支持していただろう。社員を解雇する核心的な理由がCEO自らの言葉で記されており、その大義名分はAirbnb社の一員として納得できるものであるからだ。

そのため、社員を解雇することは残念なことではあるが、経営陣のその決断に抗うこともなく、社員の関心事は、自分が会社に残るかどうかに自然と移るのではないだろうか? 社員にとってはこちらのほうが重要だ。ブライアンが冒頭で果たした説明責任は素晴らしいと言える。

社員を解雇する核心的な理由と関連しながら、解雇される社員の基準を明らかにしている

社員を解雇する核心的な理由(Why)が説明された後、解雇される社員の基準(How)が記されている。WhyとHowが紐付いていて、素晴らしい。

(社員を削減する)プロセスは、持続可能なコストモデルの上に成り立つ集中的なビジネス戦略を立てることから始まった。各チームが新しい戦略とどのようにマッチしているのか評価し、今後のチームのサイズと形を決定した。そして、各チームメンバーの総合的評価を行い、重要なスキルとそのスキルが将来のビジネスニーズにどれだけマッチしているかに基づいて判断を下した。

解雇される社員というのは一般的に会社に必要とされていない人材である。しかし、社員を解雇する核心的な理由(Why)と関連しながら社員の解雇基準(How)を対外的に示すことで、解雇される社員はあくまでもAirbnbの今後の戦略に合わなかっただけで、本当は手放したくないほど素晴らしい人材であることが言える。

会社は社員を解雇する判断基準があることで、意思決定がしやすくなり、社員は今後の雇用契約が会社によって公平に判断された結果であることを知ることができ、他社は素晴らしい人材を獲得する千載一遇のチャンスを得ることができる。まさに一石三鳥である。

また、自分が会社に残れば、辞めていった同僚の分も頑張って仕事をしようと思うだろうし、自分が会社を去ることになれば、会社に残る同僚たちとAirbnbを応援したくなるだろう。

解雇される社員に対する充実した思いやりのあるサポート

残念ながらAirbnb社を去ることになってしまった社員に対するサポートがこれでもかってくらい充実している。サポートの内容を簡潔にまとめてみたので、その充実っぷりをチェックしてほしい。

社員としてはAirbnbを去ることは心苦しいかもしれないが、ここまでのサポートがあると、Airbnbを感謝するとともに、新たな一歩を前向きに踏み出せそうな気持ちになる。特に会社に残った社員が会社を去る社員を支援することは、Airbnbのミッション「べロング(belong)」に基づいていて、改めてミッションドリブンな会社であることが感じられる。

<退職金>
・14週間分+「勤続年数を切り上げた数」週間分

例)3年7ヶ月勤務した社員Aさんは4週間分の給与が追加され、合計18(=14+4)週間分の給与がもらえる。

これはアメリカで働く社員の場合で、アメリカ以外で働く社員は最低14週間分と社員が働く国のルールに順守した分の給与がもらえる。
<株式>
・Airbnb社の勤続年数に関係なく、今回Airbnb社を去る社員は全員株主である。
<ヘルスケア>
・12ヶ月間の健康保険
これはアメリカで働く社員の場合で、アメリカ以外で働く社員は少なくとも2020年末までの健康保険が支払われる予定。

・外部の専門家による4ヶ月間のメンタルヘルスサポート
<就職支援>
・元 Airbnb 社員のための人材名簿サイトの公開
会社を去る社員が新しい仕事を見つけるための人材名簿サイトを Airbnb が公開する予定。サイトの利用に同意した元社員は、潜在的な雇用主がアクセスできるページに、プロフィール、レジュメ、仕事のサンプルを記載することができる。
https://www.airbnb.jp/d/talent

・職業紹介チームの発足
Airbnbの採用チームは2020年度は人材の採用が仕事ではなく、会社を去る社員が新たな仕事を見つけられるにようにサポートすることが仕事となる。

・就職斡旋サービスの利用可能
4ヶ月間の就職斡旋サービスを提供。

・Airbnb社員によるサポート
Airbnb社に残る社員は、解雇される社員が新たな仕事を見つけられるように手助けするプログラムに参加することができる。会社は残る社員にプログラムに参加するよう推奨している。

・Apple 社のコンピューターを提供
コンピューターは新しい仕事を見つけるための重要なツールなので、Airbnb社を去る人たちは仕事で使っていたApple社のコンピューターを持ち去ってもよい。



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