ジャパニーズドリームを掴む外国人
「オワコン国家日本」とか呼ばれる昨今、オーストラリアに出稼ぎに行くのが最近の若者のトレンドだとテレビが報じていた。
それをぼーっと眺めながら私は思った。
そんなシンプルは話じゃないよなぁ
そう、そんなシンプルな話ではない。日本がオワコンで世界がハッピーなわけではない。それどころかワーホリの人たちが去っていった日本でチャンスを掴んだ外国人もいる。
そしてその逆に搾取の沼に落ちている人も。いやー本当に外国人になることは本当に恐ろしい。今日は同じ学校を出て全く違った運命を辿った二人の話をしよう。
俺は日本でチャンスを掴んだ
3月の神谷町は、まだ夜外で飲むには十分に寒い。友人は私がだいぶ待ったのではないか心配していた。だからこそ彼も知っている隠れ家的なバーを紹介してくれたのだろうか。その店の木の壁は随分と暖かく感じた。
そう言う彼の元に電話がかかってきた。
英語と日本語で軽快に会話していると思ったら、私の前でガッツポーズ。どうやら300万円のボーナスが確定した瞬間だったらしい。彼は興奮した顔で私に話しかけた。
そう、ここは東京。チャンスはある。そしてみんなが憧れるパリにはそのチャンスがなかった。金をがっつり稼ぐチャンスが。
人生が10代で決まるフランス
彼が日本をチャンスのある場所と思っているのには理由がある。20代から努力すれば破格の給料を稼げるチャンスをくれると彼自身が証明したからだ。そしてそれは彼の故郷にはなかった。
カレーを突っつきながら、ウィスキーを軽く挟み彼は言った。
一応、グランゼコールをご存知じゃない方に参考画像を載せておこう。簡単に言うと、フランスは早慶、旧帝大みたいなエリート校が「大学校」という別のジャンルの学校に区分されていて、さらに大学もある。話を戻そう。
彼はめちゃくちゃクレバーだ。パリ出身で、教育を受けた家庭の出身だと少し話せばすぐわかるナイスガイだった。
だからこそ、その努力も人並み以上だ。ある日自分で日本の某名門大学のMBAに入ったと思ったらしっかり2年で卒業して出てきた。こりゃ勝てないわと、思わず舌を巻いた正にThe 高度人材である。
なぜ、ここまで優秀な彼が逆にフランスのエリートを目指さなかったのか、私にはわからないが、彼にとって日本こそチャレンジすべき土地だと思っているようだ。
彼が語る姿は眩し過ぎて思わず自分がちっぽけな存在に感じた。毎回思うが日本にやってきた外国人との交流では時々こんな光る出会いがある。
しかし、この出会いが小川の中の砂金だとすればほとんどは石。外国人として成功する人がいる裏には、抜け出せない沼にハマっている人もいる。例えば彼が卒業した日本の某MBAを同じく卒業した、もう一人の彼女は全く逆の立場だ。
今の会社に騙されたのよ
転じて、この日は池袋に来ていた。彼女は遅れて約束場所にやってきた。仕事がどうにも終わらなかったらしい。
これがもう一人の今日の主役だ。出身はヨーロッパで、心理学を母国で勉強した後ずっと興味のあった日本に来日。先ほどのフランス人の彼と同じ日本の某MBAを卒業してから小さい旅行会社に入社した。
もちろん外国人として正社員になれることがすでにすごい。しかしその環境はお世辞にも良いとは言えなかった。
彼と同じ日本のMBAを卒業したとは思えない程、彼女の生活はギリギリで、普段見せようとはしないが内心ストレスだらけなのが透けて見える。何故こんなことになったのか彼女すら分かっていないだろう。
そんな酷い職場ならヤメてしまえばいいじゃないか、と言葉が漏れそうになる。だがその言葉ほど厳しいものはない。彼女は労働ビザで日本に滞在できているから、仕事を辞めたら数ヶ月以内に次の仕事を見つけないといけない。できなければビザは失効する。そうすれば、これ以上日本にいられない。
かといって仕事が忙しすぎて転職もできないらしい。仕事探しを手伝ってくれる外国人向けの転職エージェントもいるが、数が少ない。そして多くの外国人向けの仕事がエンジニアなどの技術職になっているので彼女のような文系人材が入りやすい職場の数は更に少ない…
正直、四面楚歌で打開策なんてなかなかない。
母国に帰っても仕事がない…若者にも仕事はないが、年寄にはもっと仕事がない…
これが彼女の国の現実なので、ワーキングホリデーが悪くない選択になってくるのだろう。どうせ大学まで出て仕事がまったくないなら、母国でニートしてるより、オーストラリアで肉体労働者やってるほうがマシだと言うわけだ。
そういう前提ならそりゃそうだろうと私も納得してしまった。
二人の差はなんなんだ?
同じ大学院を卒業したのにこうも対象的な二人を見ていると、この差は一体何なんだろうと興味が湧いてくる。
片方は努力したが、もう片方は努力していない?いいや、どちらも努力はしてチャンスを掴もうとした。じゃあ運か?いいや、運と言うには違う何か、何か要因がありそうだ。
そして思いついたのは二人のビジネスへの視点だった。二人共日本に来て、同じ学校に入ったが、片方は日本のビジネスに強い興味を持っているがもう片方はアニメが好きで日本に来た。
アニメに興味をもって来日した人材は仕事できない?
まず、彼女のケースから話をしよう。来日のきっかけはアニメだ。彼女は日本のサブカルチャーをその国で体験しながら生活したいと思ってやってきた。
それに対して彼が日本に来た理由はビジネスチャンスを感じてだった。日本は経済は落ち込んでいるが、それなりの市場規模があるし、外国人の数が少ない。だから優秀な自分が入り込めれば、給料の高い仕事が残っているのではないかという山師的な勘を持っていた。
自ずと、日本に来た理由がこうも異なれば自由時間の過ごし方も変わってくる。彼女は仕事が終わればアニメを見たり、シェアハウスの同居人達と遊びに行ったりしていた。それが彼女が日本に来た理由だから当然だ。
しかし、同じ頃彼は日本経済新聞の記事にかじりついて、片っ端から上場企業の情報を集めていた。日本の社会人としての常識がなければ金は稼げないと知っていたからだ。
そう考えると、サブカルに惹かれている人、つまり「文化を消費したい」側が経済的に成功できないのも当然のように思える。だって、ビジネスを勉強するのは彼らの幸せではないのだ。彼らは日本に憧れてきただけで、日本の嫌な面を見るつもりは最初からないのだから。
それに彼女の方だって仕事は頑張っている。ただしビジネス的な分析を怠ったので搾取されているが。
これを思いついた時ある会社の人事が言っていたことを思い出した。
「アニメ付きの外国人は使い物にならないんだよなぁ。すぐ現実に気がついたとか言って辞めるから」
来る人、去る人を見ながら
私は今日のお話しの中ではただの第三者だ。
いや、こうやって観察している分、たちの悪い第三者だとは思う。
だが、観察しているからこそわかる。
それは日本はまだチャンスのある国だということだ。
彼が言うように、いい大学に入れればすごいコネがなくてもどの企業でも入るチャンスがある。それを認めているのが日本人ではなく、外国人だということが私には不思議だ。何故日本人の中にはそのチャンスを活かさない人がいるのか。
自分は世界レベルでも屈指の環境に母国人として生まれていることに気がついたらもっと道もあるかもしれない。
この世界にはどうしても流浪していかないと生きていけない人がいる。それは例えば彼女だ。もしキャリアのことだけ考えたら、今年のうちに母国に帰るかワーホリをした方がいい。人生は短い。
よく他のブログで書かれる「海外生活の現実」という内容はえてして抽象的な内容が多いが実情をぶちまけるとこんな感じになる。これが他のキラキラYoutuberが言うほど幸せかどうかは読者の判断に委ねる。