橋本環奈の朝ドラヒロイン選出で、「女優界の出身地地図」はどう変わるのか

2024年後期のNHK連続テレビ小説『おむすび』(第111作目)のヒロインが、橋本環奈に決定した。NHK朝ドラのヒロインは、2023年後期の109『ブギウギ』で趣里、2024年前期の110『虎に翼』で伊藤沙莉が演じることが既に発表されている。趣里は東京、伊藤沙莉は千葉、橋本環奈は福岡県の出身で、3期連続で大都市圏出身の女優がヒロインを演じることになる。
※なお、本稿では国勢調査の定義に準じて、東京・愛知・大阪・福岡とその周辺の埼玉・千葉・神奈川・兵庫・京都・奈良の各都府県を「大都市圏」(5大都市圏から札幌を除いた4大都市圏)、そのほかを「地方」と呼ぶ。

朝ドラのヒロインは、オーディションで選ばれる場合と、NHKからのオファーによって決まる場合があるが、オファーで決まった場合は特に、その作品に最もふさわしい人を選ぶというだけでなく、その背景に「いま、世間の人たちはどういう女優を朝に見たいか」という思いも、少なからず込められている。橋本環奈は、オファーによって決まったヒロインである。彼女の起用は、今後の女優シーンに、どのような変化が起こりつつあることを示唆しているのだろうか。

2023年前期までの朝ドラのヒロインは、108『らんまん』の浜辺美波(石川)※主演は神木隆之介、106『ちむどんどん』の黒島結菜(沖縄)、105『カムカムエヴリバディ』のヒロイン3人のうち深津絵里(大分)と上白石萌音(鹿児島)、102『エール』の二階堂ふみ(沖縄)※主演は窪田正孝、100『なつぞら』の広瀬すず(静岡)と、100作目から108作目までの11人中7人が地方出身だった。

2023年現在、女優シーンは「地方出身者の時代」だと言っていい。朝ドラヒロイン組以外にも綾瀬はるか(広島)、新垣結衣(沖縄)、川口春奈(長崎)、長澤まさみ(静岡)らがドラマやCMで存在感を見せている(五十音順)。芸能プロ各社も、できるだけ多くの地方都市でオーディションの予選を行うようにしたり、地方でのスカウト活動にも力を入れた。ここ数年のオーディションやスカウトで芸能界入りして注目の次世代女優に浮上した人たちの中には、飯沼愛(香川)、片岡凜(群馬)、茅島みずき(長崎)、當真あみ(沖縄)など、地方出身者が少なくない。

しかし、ずっと「地方出身の時代」が続いていたわけではない。

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