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出産祝いに産褥ヘルプを。吉岡マコさんが伝え続ける”すべての家族に産後ケア”−後編−

今回は、2020年2月15日に大崎のカフェで開催された「とうきょうミライゼミ#3」のイベントレポートです。イベントでは認定NPO法人マドレボニータ代表の吉岡マコさんに、「産後ケア」についてお話しいただき、後半はワークショップを実施。妊婦さんやお子さん連れ、父親、独身の男性など、12名の方が参加してくださいました。

前編はこちら▶出産祝いに産褥ヘルプを。吉岡マコさんが伝え続ける”すべての家族に産後ケア”−前編−

4つの段階それぞれに合わせた産後ケアが必要

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出産後は体力的にも精神的にもきつい時期なので、産後ケアの準備は産前からやる必要があります。産後ケアは次の4つの段階があります。

①産前:産後の知識を得る
「産後」について夫婦で学び、産後に休める体制作りをしておく時期。ヘルパーさんや産後ケア施設の面談もこの時期。

②産後8週間:受けるケア
とにかく完全休養する時期で、「受けるケア」が必要。やるべきことは授乳と自分の食事ぐらいで、できれば家事や沐浴も他の人に頼み、パートナーの協力のもと回復に専念する。夫婦二人だけで乗り切ると疲弊してしまうので、自分たち以外にも助けを求めたり、外部のサービスなどにも頼ろう。

③産後リハビリ期(2〜6ヶ月):取り組むケア
産褥期にしっかり休養できると、少しずつ動けるようになってくる。休養期間に筋力や心肺機能が落ちているので、自分で体を動かし、体力の回復をはかる時期。体力がない状態で子どもを抱えながら子育てするのは危険。

④社会復帰準備期(7〜12ヶ月):社会復帰の準備
カップルで協力して家事や育児を行いながら情報収集をしたり、お互いの希望を聴きあったりして、社会復帰に向けて動き出す時期。

乗り越えなければならない「産後の3大危機」とは?

みなさんに知ってほしいのが、産後の3大危機です。

①母体の危機

厚生労働省の調査では11人に1人が「産後うつ」になるという結果でしたが、独自調査では、次のような結果でした。

産後うつと診断された 5%
診断を受けていないが産後鬱だったと思う 30%
産後うつの一歩手前だったと思う 47%

実際には8割近くの人が産後にしんどい思いをしているということです。

②赤ちゃんの危機

厚生労働省の調査では、乳児虐待は0歳で4割となっています。でも「虐待はしなくてもしてしまいそうになったことがあった」と答えた人が半数いました。虐待は特別な人だけの問題ではない、非常に身近な問題だということです。

③夫婦の危機

厚生労働省の調査では、子どもが0〜2歳での離婚がもっとも多いです。ベネッセの調査では、夫からの愛情を実感する妻の数が妊娠期は74.3%なんですが、産後1年で半分になってしまうんです。男性は変わらないんですけどね。

産後だからといって必ずそうなるわけではなくて、産後ケアがないとこうなってしまうんです。適切な手を打てば、「母体の危機」「赤ちゃんの危機」「夫婦の危機」は予防できるし、乗り越えられます。

産後ケアの必要性に気づいて欲しい

内閣府の委託を受けて2016年にインパクト調査を実施しました。教室に参加した人と参加していない人にアンケートをとって比較したところ、最も大きな差が出たのが次の質問でした。(インパクトレポート)

「パートナーを本当に愛していると実感するようになりましたか?」
産後ケアに取り組んだ人の回答 「実感するようになった」58.8%
産後ケアに取り組まなかった人の回答 「実感するようになった」 19.2%


通っている方を見ていて、私たちも産後ケアの効果を実感しています。はじめは「シェイプアップのために来ました」という人が多いんですが、終わってみると「夫婦仲がよくなりました」「仕事への復帰意欲が湧きました」という声が多いんです。

産後ケアの準備は出産前から始めるものです。そして産後ケアにはパートナーと力を合わせることや、周囲の協力が欠かせないものだということを忘れないでください。

出産祝いにおすすめの「マドレ式産褥ヘルプ」

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子どもを産んだ直後の家庭を友人知人でサポートすることを広めています。子どもが生まれた友達を訪ねて、一緒にご飯を食べるだけでもいいです。少しの間だけでも子どもを抱っこしてくれれば母親は手が空いて両手でご飯が食べられるし、家族以外の人と話すことで元気が出る。それだけでも助かりますから。

こうした協力体制をつくるのは、「制度」だけではなく「文化」だと思っています。「よく知らない人を家に入れたくない」という意見もあるんですが、子育ては母親一人でできるものではないですから。今後は自然とみんながサポートして、それを受け入れるカルチャーが当たり前になるといいなと思います。

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出産した友達や同僚に「おめでとう」とメッセージを送るだけのことも多いですよね。「落ち着いたら遊びに行くね」という人もいますが、子どもが生まれた直後の家庭はお客さんとして「遊びに行く」ところじゃないんです。ヘルプしに行くんです。

長居しない、着いたらすぐに手を洗う、今の時期ならマスクをする、アレルギーを確認するといった配慮も必要です。「産褥期は横になっていた方がいい」という知識があれば、「私が赤ちゃん見てるから横になって」と言えますよね。出産直後の友達を訪ねるなら、当事者以外の人にも産後のリテラシーが必要だということです。

サポートされる側も「申し訳ない」と尻込みしてしまう人が多いですが、新生児を抱っこできたり、サポートすることで友達が少しでも助かるなら嬉しいものですよ。産後真っ只中のご家庭には、どんどんサポートを受けて欲しいです。そしてそれをまた次の世代に返していければ。

母になったばかり、父になったばかりの友人が、少しでも休めたり、リラックスできる時間が持てれば、こんなに嬉しい出産祝いはないです。これからは出産祝いの代わりに、産褥ヘルプをすることが広まっていけばいいなと思っています。

ワークショップ

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ワークショップでは、グループに分かれて発表しました。たくさんの新たな気づきが見つかり、参加者同士、有意義な意見交換を行うことが出来ました。

・イクメンでなく愛妻家
・産褥期の情報をもっと伝え知れる場が必要
・当事者意識がある人はここにきているが、ここにきていない人にどうアプローチしていくか
・産褥期の人が能動的にアクション起こすのではなく、役所側からきてくれるような仕組みが必要では?
・夫婦ともに情報を「常にともに」受けられるのが鍵
・会社がプロジェクトマネジメント的な要素も含めて、従業員へアプローチしていってはどうか

まとめ

産後ケアがうまく行くと、夫婦仲がよくなったり仕事への意欲が高まったりとポジティブなことがたくさんあります。また、男性の育児ノイローゼも10人に1人の割合という数字から見ても、男性が育休をとればいいというものではなく、2人だけで頑張らずに家族や友人、行政、民間サービスなどを積極的に利用する手だてを産前から考えておく事も大切です。
妊娠、出産、子育てではなく、妊娠、出産、産後ケア、子育てが当たり前というを社会をつくっていきたいと思います。

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★今後のTokyo Cross Pointのミッション★

①区市町村における産後ケアの充実について政策提言していきます。
② 育休中の同僚や友人への「出産祝い」に「産褥ヘルプ」を広めていきたい。