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『男はつらいよ22 噂の寅次郎』と『ルパン三世』6-22「私のママの記録」/世文見聞録23

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第22作『男はつらいよ 噂の寅次郎』(前半部)

木暮林太郎:あの夢に出てくる「寅地蔵」は「寅次郎」と響きが似ていて面白かった。

川口世文:山田洋次監督がどこかで「寅さんは最後お地蔵さんになる」と話していたけど、その発想も案外“語呂合わせ”から来ているのかもしれない。

木暮:そうなのか……今回はいつになく和やかにはじまるね。お墓参りに行くと寅さんが先に来ていて、お墓を間違えたりはするけど、そこでケンカにはならない。

川口:前作もそうだったけど“不景気”だったんだな。だからなかなか帰ってこない社長が自殺したんじゃないかと妄想が広がる。葬儀屋こそ呼ばなかったけど、寅の「勇み足」パターンだ。

木暮:旅先で僧侶に「女難の相が出ております」といわれるシーンは有名なんだろ?

川口:直後に出会うのが泉ピン子というのがいいね。

木暮:泉ピン子はマドンナにカウントされているのか?

川口:残念ながらカウントされていないと思う。どちらかというと前作の武田鉄矢の役割なんじゃないか? 後からひょっこり現れて話をかき回したりする──。

木暮:博の父親も再登場するよな。以前のリンドウの話につづいて、『今昔《こんにゃく》物語』の話をする。

川口:贅沢《ぜいたく》に“池ノ内青観”的年上キャラと“ワットくん”的年下キャラの合わせ技になっている。

木暮:なるほど……一方そうこうしているあいだに、とらやでは“求人”の準備が進んでいる。大原麗子とはすぐに出会わず、入れ違いに寅さんが帰ってくるんだな?

川口:あの晩は『今昔物語』の話をして「反省」する必要があったからね。お楽しみは“翌朝”に持ち越しだ。

木暮:さりげなく“虚無僧《こむそう》”が出てきて芸が細かい。あと念のためいっておくけど、おまえが好きな“置き手紙”が今回は二通も出てくるからな(笑)。

○『ルパン三世パート6』第23話

木暮林太郎:今回はわかりにくい話だったな。なじみのない女性キャラの母親や祖母の話にまで遡《さかのぼ》るから、かなり混乱してしまった。

川口世文:それより明らかに“トモエ”が出てくるのに「ウィッチ・アンド・ジェントルマン」のエピソードにカウントされていないのが解《げ》せない。

木暮:前回に引き続いて完全に“女性視点”の話だし、ルパンは相変わらず背景に置かれているんだよな。

川口:彼も“トモエ”を追いかけていることは確かだから、前回より多少はマシかもしれない。あと二回でこの怪しげな女性の正体はきちんと描かれるんだろうか?

木暮:かといって“つづきは劇場版で”というほどスケールの大きな話でもないしな。「傷ついた記憶を癒せる」能力があるっていうのはどういうことなんだろう?

川口:むしろ「記憶を改竄《かいざん》する」能力があるといったほうがいいような気もする。

木暮:“教え子”の一人であるルパンも何か重要な記憶を彼女に改竄されているってことか?

川口:それはありうる話だな。一つ気になっているのはルパン以外の“教え子”がみんな女性ってことなんだ。

木暮:確かにそうだ……そこに何かヒントがあるのか?

川口:例の不二子の描き方も含めて、「性の多様性」を裏テーマとして持ち込む可能性もあるとしたら、一つ思いついたことがある。これは「パート5」の最終回とも関係することなんだけど……。

木暮:なんだよ、それは?

川口:ルパンは実は“女嫌い”だった。あるいは“ゲイ”だった。もっというと実は“女性”だったのに“トモエ”によってずっと“男性”だと思いこまされていた!──そういう真実の記憶だよ。

木暮:50年経ってようやくわかる真実がそれかよ!


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