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『男はつらいよ46 寅次郎の縁談』と『ルパン三世』1-20「ニセルパンを捕えろ!」/世文見聞録46

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第46作『男はつらいよ 寅次郎の縁談』(前半部)

木暮林太郎:夢のシーンの代わりに「花嫁行列」に出くわして言葉をかける。その後でポンシュウに「おれには夢があるんだ」って寅さんがいうんだけど、その夢って何だと思う?

川口世文:これまでの流れだと、満男と泉の結婚式で、同じ祝福の言葉をいってやることなんじゃないかな?

木暮:おれもそんな気がした。だというのに今回は泉が出てこない!

川口:「泉はつらいよ」に話が傾きすぎたからな。満男を結婚させるにはまだ若すぎる。だから、二、三年修行させる、つまり寅の生き方の真似事をさせて、満男の本質を浮き彫りにしようとしたんじゃないかな?

木暮:旅をさせたり、失恋させたりってことか? それにしてもバブルが弾けたタイミングで、満男の就職活動の時期が訪れるとは出来すぎだな。

川口:こればっかりは伏線の張りようがないから、作品自体が引き寄せたドラマだというしかない。最終面接に落ちた満男が歌ったのが“負のアリア”だとしたら、寅が帰ってきて、くるまやで歌うのが“正のアリア”。まだまだ満男は遠く及ばない──というか結局、満男には寅の二代目は務まらないってことが、はっきりしちゃったんじゃないかな?

木暮:それでも後半、満男らしさも出てくるけどな。しかし、寅さんもそんな立派なキャラじゃなかったのになあ。彼が戻ってくると妙に画面が明るくなって、こっちもホッとさせられる。「説得力」も増している(笑)。

川口:それにここ数作、満男の存在がなかったら寅の恋は成就していたかもしれない。

木暮:でも、満男がいなかったら、そもそもその恋に至っていないことも多い。その関係性が何とも面白い。

川口:実に不思議なバディムービーに変わってきたな。

○『ルパン三世パート1』第20話

川口世文:この話は当時九州の筑豊にあった「泥棒村」の話を元ネタにしているんだと思う。

木暮林太郎:「泥棒村」から「泥棒島」に設定変更か。しかし、どうしてわざわざ「元祖ルパン」なんて名乗ったのかな? それさえやらなければ平和だったのに。

川口:調子に乗りすぎたんだろう。結局のところ彼らは『盗術書』をきちんと体得していなかったんだ。

木暮:血筋が違ったわけか。それにしてもルパンが単身敵地に潜入して「岩ころび」みたいなテストを受けたり、ルパン一世が書いた『盗術書』を奪い返したりする展開は、初期の五エ門の話の焼き直しだよな。

川口:テクニックだけはルパン並みの「ジン兵衛」って男が五エ門ほどキャラが立っていなかったのが残念だ。もっともルパンと役割がかぶりすぎて、ファミリーには加えようがなかったけど。

木暮:そういえば今回はルパンと銭形しか出てこない。ルパンが「石川大介」って偽名を名乗るだけで(笑)。

川口:犯人が現場に残した「みかんの産地」をあそこまで詳しく特定してしまった警察はなかなかすごいよ。

木暮:あれがルパンの誘導だったら、もっと面白かったのに。実際、島に入ってからは銭形がやってきたことでルパンは仕事がしやすくなる。

川口:『盗術書』を盗むというニセの「予告状」を作って銭形に化けた自分を信用させるのもうまい。

木暮:とはいえ、リモコンボートを使ったり、二匹のワシで逃亡するというのは出来すぎだし、せっかく盗んだ『盗術書』を海に落とすのも、前作までの調子の良さの反動だったのかな?

川口:あれはまあ、海の藻屑もくずとなったほうがよかったのかもしれないけどな。

木暮:やっぱりテクニックよりも血筋ってことか。

作品内テキスト:ニセルパンの予告状


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