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『男はつらいよ28 寅次郎紙風船』と『ルパン三世』1-3「さらば愛しき魔女」/世文見聞録29
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
○第28作『男はつらいよ 寅次郎紙風船』(前半部)
木暮林太郎:今回は妙に夢のシーンに力が入っている。当然マドンナ二人も登場するし、セピア色の回想シーンをやって、さらに手術室のシーンまで。
川口世文:トンカツを揚げている料理番組に“ニュース速報”でノーベル医学賞受賞のテロップが入るんだけど、まさかそのトンカツがオチに使われるとはね(笑)。
木暮:トンカツ屋で目が覚めて、外には「パチンコノーベル」の看板だよ。何でこんなに手が込んでいるんだ?
川口:さらに今回の“まくら”は柴又小学校の同窓会。第12作でも登場した「デベソ改めカワウソ」が、そのときのことを全然憶えていないのが実にシュールだった。
木暮:きっと忘れたい思い出だったんだろうな。東八郎演じるクリーニング屋の泣かせるセリフを聞かされて、“翌朝”出ていった寅さんが先に出会うのが岸本加世子──しかも“相部屋《あいべや》”になる。
川口:「家出少女」で明るいキャラなのはいいけど、彼女がいることでマドンナの存在感が少し弱くなったよな?
木暮:あれは確信犯だと思う。だって死に際の仲間から「女房にしてやってくれ」と頼まれるんだぜ。前作の“弟の死”どころか“亭主の死”に直面したマドンナとまともに相対してしまったら、抜き差しならなくなるぞ。
川口:確かに普通の恋愛映画なら、マドンナにフラれてから本筋になってもおかしくないからな。
木暮:だけどこれは『男はつらいよ』だ。だから“決定的な展開”を避けるためにバランスをとっているわけ。
川口:穿《うが》った見方をするようになったなあ。
木暮:ついでにいうと、愛子という家出娘を家に戻らせたことで、彼女が将来、あのマドンナのようにヤクザな男と結婚することを防いだともいえる。
川口:そこまで読み取る? そんなに深い話だったとは思わなかったな。
○『ルパン三世パート1』第3話
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川口世文:今回の話はテレビスペシャルとしてリメイクしてもおかしくないスケールだった。
木暮林太郎:“第三の太陽”に、核ミサイルを積んだ潜水艦まで出てくるからな。「キラーインキラーズ」も今回だけの登場じゃもったいなかった。
川口:ウェットスーツを着た海中戦とかね。もうちょっと大規模にしたら『007/サンダーボール作戦』だった。それに何より「追われている美女を助けるところからはじまる」という意味で『カリオストロの城』ならぬ『ハインラインの島』だったからな。
木暮:しかし、リンダの謎が多すぎた。冒頭の彼女は逃げようとしていたのか、どんな人体実験を受けたのか?
川口:ある種の“特攻兵器”にされたんじゃないかな?
木暮:なるほど、そう考えると最後の“散り方”も象徴的に感じられるな。
川口:ルパンが彼女を「リンダちゃ~ん」と呼んでいたのも面白い。このシリーズではまだ不二子を「不二子ちゃ~ん」とは呼んでいないんだよ。
木暮:不二子の奴、実はここで有力なライバルを一人抹殺していたわけか?
川口:ルパンとモーターボートでデートしていたと思ったら、いきなりワルサーをぶっ放すんだもんな。あるいは本気でリンダを殺す気だったのかもしれないぞ。
木暮:彼をリンダと引き合わそうとしたんじゃなくて?
川口:もちろんそうなんだけど、もっとドロドロとした感情が裏にあったような気がする。
木暮:不二子の赤いジープ、ルパンの青いバギー、リンダの紫色のドレスという配色もちょっと意味深だしな。
川口:不二子とリンダの“過去”に何かがあった設定にしたら、十分にテレビスペシャル規模に話が膨らむ。
木暮:何かと“もったいない要素”が多い話だった。
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