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『男はつらいよ30 花も嵐も寅次郎』と『ルパン三世』1-5「十三代五ヱ門登場」/世文見聞録31

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第30作『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(前半部)

木暮林太郎:久しぶりに“ワットくん”パターンだな?

川口世文:どうもここのところ「“10作”前を参照する」パターンがつづいている気がする。

木暮:今回は特に意識的にそれをやったのかも。でも、同じことを繰り返している感じはしない。むしろテーマを深化させているんじゃないか?

川口:それはいえてるね。“ジュリー”らしさは夢のシーンだけ、寅さん自身の恋愛もとらやの向かいの江戸家の娘・朝丘雪路と焼け木杭《ぼっくい》に火が着くのかと思いきや、あっさり“夫”が現れてフラれちゃう。

木暮:「もうフラれちゃった」っていわれるんだよな?

川口:おいちゃんがいつになく機嫌を悪くしてケンカ。「出て行ってくれ」「それをいっちゃおしまいだよ」「さくら、止めるな」という黄金パターンをやって旅路に。

木暮:湯平《ゆのひら》荘にマドンナたち二人組と“三郎青年”と寅さんが集まってくる展開は自然でいいね。

川口:寅が三郎の母親を「供養してやろう」といい出すまでで30分だからね。相変わらず密度が高い。さらにそこから四人で楽しく観光する展開があって、波止場での別れはマドンナ螢子《けいこ》と三郎の間で起きる。

木暮:そのまま男二人、車で東京に帰ってくる。

川口:面白いのは三郎がとらやの“マドンナ席”に座ることなんだよ。今までこういうパターンはなかったんじゃないかな? それだけジュリーの扱いは破格だった。

木暮:寅さんに「変わっているだろ?」といわれるのがいいよね。二枚目過ぎてフラれそうにもなるし、当時の沢田研二のイメージをいい意味で逆手に取っている。

川口:“ワットくん”のときより寅さんの面倒見もいいんだよ。柴又滞在期間はかなり長かったんじゃないかな?

木暮:なるほど、寅さんがそこまで面倒見てやれば役者同士の“リアルな結婚”にも発展するよな(笑)。

○『ルパン三世パート1』第5話

「五右衛門」でも「五エ門」でもなく「五ヱ門」表記。

木暮林太郎:ついに十三代ゴエモン登場!

川口世文:ゴエモンの表記の問題はあるよな。これまでは「五エ門」だったけど、「五ヱ門」にしようか?

木暮:「五右衛門」じゃないことは確かだけど、いちばんシンプルな「五エ門」でいいんじゃないか?

川口:では、そうしよう。この話ではまだ「斬鉄剣」という名称は出てこなかった。

木暮:しかも師匠の百地《ももち》も実によく似た刀を持っていた。

川口:「世にただ一つの愛刀」と呼んでいるから、百地のほうは普通の刀なのかもしれないぞ。

木暮:ルパンより先に五エ門が「不二子ちゃん」と呼んでいるのには驚いた。

川口:五エ門を、パイカルを上回る強敵にすることもできたはずなんだけど、結局、二人は「似た者同士」だと気づいたんだろうな。

木暮:だからルパンは「液体燃料」を武器にしたのか。

川口:それはどういう意味?

木暮:だってあれはパイカルの十八番《おはこ》だろ? ルパンは「新案特許」なんていっているけど。要するに五エ門もパイカルには「勝てた」ことを証明したんだ。

川口:その発想はなかった(笑)。いずれにしても百地と不二子が手を組んで、二人をぶつけ合う作戦はまったく逆の結果を生んだわけだ。

木暮:不二子も今からするとあんな宝石一つでよく“転んだ”ものだな。和服姿はよかったけど。

川口:思うんだけど、次元と不二子は“ルパンの正妻”の座を争っている。ルパンと五エ門は“不二子の正夫”を争っている。そういう緊張関係がファーストシリーズの、少なくとも前半にはあった気がするね。

木暮:パイカルが残れなかった理由も何となくわかる。

今週のワンショット:作中のテキストその3


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