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『男はつらいよ25 寅次郎ハイビスカスの花』と『ルパン三世パート6』の総括/世文見聞録26

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(前半部)

木暮林太郎:いよいよ後半戦のスタートか。後半はリリーが出てくるこの話ではじまって、リリーが出てくる第48作で完結する──ちょっと出来すぎているけどな。

川口世文:当時はそんな意識はなかっただろうけどね。でも、「80年代に入った」ということは考えたかもな。

木暮:ここで一回最強のカードを出しておいた感じ?

川口:リリーの再々登場は大きな意味があったと思う。

木暮:前回の登場から5年経っていて、その間、寅さんとは会っていないんだよな?

川口:そうそう。それに以前のリリーを知らない観客も多かったんじゃないかな? 第15作のように一気呵成に、いきなりリリーから“速達”が来る展開も選択肢としてはあったはずだけど、あえてそうはしなかった。

木暮:なるほど。前回からかなり間が空いたので、今回はまず小岩で博と出会わせて前フリをしておいたんだ。

川口:それにしてもリリーのあの“紫の服”! 衣装は別に手に持っていたから、あれは私服ってことだよな?

木暮:確かにあれはすごかった。リリー以外には着こなせない。一瞬かなり羽振りよくやっているのかと思ったんだけど、相変わらず「不景気」だっていうし……。

川口:ステージで使わなくなった衣装を普段使いにしていたとか?……それぐらいの裏設定はやりそうな気が。

木暮:江戸川ではなく“嬬恋村”スタートなのも、「それから、ひと月」のタイトルが出るのも久しぶりだよな?

川口:いったん流れを見直そうという意識を感じるね。そのくせ寅が帰ってきたときのドタバタは変わらない。

木暮:「水元公園行く行かない事件」ね……肝心なところは成長していないんだよな、みんな(笑)。

川口:何気なく寅が“速達”を受け取ってから入ってくるのがいいね。いつものドタバタだけど、意外な終わり方になる。リリーの過去を知っている観客も楽しめる。

○『ルパン三世パート6』の総括

川口世文:一応全体を総括しておこう。前半と後半で大きく話が違うけど個人的な感想はどちらも変わらない。“緑ジャケット”を着せた意味がまったくなかった。

木暮林太郎:「大人の事情」以外にはな。おまえの主張は一貫しているな(笑)。

川口:いっそのこと“白”でもよかったぐらいだ。これからルパンはどんな色に染まるのか──そういう期待を持たせてもよかった。

木暮:確かにそのほうが作り手としても気が楽だったかもな。それぐらい“緑ジャケット”は重かった。今回のルパンはそれを着ていることに力を奪われて、自由な活躍ができなかった気さえするよ。

川口:それが“50年後”のルパン三世のキャラクターの現実を描いているのだとしたら、実はかなり高度な批評性を含んでいたことになるな。

木暮:まあ、それはないと思うけど。ルパン三世という作品に枠組みを使って、作り手たちはある意味やりたいようにやったんだと思う。

川口:後半のクールは『オッドタクシー』みたいことがやりたかったのかもしれないと、ふと思ったよ。最後まで観て「ああ、そうだったのか!」といわせたかった。

木暮:それとやろうとするとどうしてもルパンが“狂言回し”になってしまって当然自由さは奪われちゃうね。

川口:そう、自由なルパン!──それが観たかった。というわけで、いっそここから「パート1」に戻ったらどうかと思うんだけど、いかがでしょうか?

木暮:いかがでしょうかって……まだやるの?

川口:こうなったらおれたちが“円環”を閉じようよ。

木暮:そこにこだわるなぁ。どう考えたって、そこにはつながらないと思うよ。

川口:それはそれで“自由なルパン”を満喫しようぜ!


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