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『男はつらいよ20 寅次郎頑張れ!』と『ルパン三世』6-20「二人の悪女」/世文見聞録21

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第20作『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』(前半部)

木暮林太郎:サブタイトルの「頑張れ!」は、シリーズの存続に危機を感じはじめた表れなんだろうか?

川口世文:まだまだ“頑張る”決意表明だったのかも。

木暮:それにしても中村雅俊の存在は文字通り“デカかった”。とらやが狭く感じられたな。「押売りお断り」の札とか「電線音頭」も何となく懐かしい。

川口:マドンナだけでなく、寅さんと絡む“男性”の存在が話を面白くすると気づいたのは間違いない。古くは博の父親とか、池ノ内青観とか。寅さんはああいう年上の男性の懐に飛び込むのはうまいんだけど、年下の場合はどうなのか? それをやってみたかったんだろうね。

木暮:その結果が寅さんという“恋愛指南の名コーチ”誕生というわけか? 中村雅俊と大竹しのぶがリアルに結婚しなかったのが不思議だな(笑)。

川口:前半は完全に二人の話で、寅さんは一歩引いた立ち位置にいる。寅が“恋愛青年”と呼ぶ良介が自殺しようとして“ガス大爆発”を起こしたところで一区切り。

木暮:“火災保険”に入っていてよかった。

川口:今回も「まくら」に当たる話はなくて、一気呵成に最後まで話がつながっている。ただ、後半の良介の姉と寅さんの話は相対的に弱いね。

木暮:え?──後半の話もしちゃうの?

川口:いや、ちょっとだけ。よく考えてみると第17作のぼたんが“決定版”で、それ以降寅とマドンナのバランスが取りにくくなってきた。それを補強するために“男性キャラ”の強化がはじまったような気がして。

木暮:年齢的なバランスもあったのかな? フラれるパターンも限界はあるし。補強といえば、源公が彼女らしき女性を連れていたり、前回の犬につづいて「猿」が登場したりいろいろ賑やかなんだけど、あれは何なんだ?

川口:あれは……単なる“にぎやかし”だろう(笑)。

○『ルパン三世パート6』第21話

木暮林太郎:峰不二子が女性とパートナーを組む話は今までなかったのかな?

川口世文:記憶にないな。“人たらし”のアメリアというキャラクターは悪くない。女性なのに不二子の懐に飛び込んじゃうんだから。

木暮:それにはルパンもちょっと“妬いている”しな。

川口:このキャラがもっと以前に登場していたらかなり話が膨らんだ気がする。アイオン教団の本部があるアトラス島とか、以前ならテレビスペシャルに出てきそうな設定で、それぐらいの長尺にしても悪くなかったかも。

木暮:敵のホテイソンも単なるIT長者ではなくて、ダークウェブとか人身売買とか、わりとスケールの大きな悪事を働いていたしな。

川口:ホテイソンじゃなくてグレイソン(笑)。湊かなえの脚本回もそうだったけど、不二子だけで話を押し通すわけにいかず、脇役的にルパンが登場することになる。その登場の仕方が「リモート出演」みたいで面白い。

木暮:そんなところで時代を反映しているっていうの?

川口:いや、そこまではいわないけど……しかし、どうもルパン以外のキャラの世界を広げようとして、不発に終わっている回が多い気がするな。まあ、終盤になってからそれをやっても仕方がないんだけどさ。

木暮:「パート6」をはじめるに当たって、いろんなアイディアが出てきて、それらを少しずつ単発回で利用しているのかもしれないな。

川口:だとしたら、もったいない。今回のグレイソンもあんな「焼き印」じゃなくても、こちょこちょくすぐるマジックハンドにすれば“ミスターX”になれたのに。

木暮:どうしてもそこにこだわるんだな。

川口:「パート1」に繋がって“円環”を閉じる夢はまだ捨てていないからな(笑)。


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