『男はつらいよ14 寅次郎子守唄』と『ルパン三世』6-14「蜃気楼の女たち」/世文見聞録15
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
○第14作『男はつらいよ 寅次郎子守唄』(前半部)
木暮林太郎:“産土《うぶすな》の神”が登場する夢のシーンは、前作に引き続いて本編内容を暗示しているな。
川口世文:タイトルバックに江戸川が出てこないのは、博の怪我の騒動に寅を居合わさせないためだったね。
木暮:さくらと博の関係性を深掘りするのかとも思ったけど、怪我は意外と軽傷だったし、看護師のマドンナとの接点を作る作劇的な意図のほうが強かった気がする。
川口:一応、とらやの一同に“将来”を考えさせるきっかけにはなるんだけどね。お見舞いにフルーツを持ってきた御前様と“大黒柱”の話をしていると、フラッと寅が帰ってくる。自分の葬式のこともしっかり考えているなんていいながら、それが五艘の屋形船を浮かべたいなんて途方もない“アリア”になって一同を白けさせる。
木暮:さくらの名義で郵便貯金をしていたっていういい話を残しながらあっさり出ていっちゃう。ここまでで20分ぐらいだろ? 拍子抜けするほどあっさりだったな。
川口:九州で“赤ん坊”を背負いこんでしまう展開がすぐ後に控えているからね。
木暮:博の怪我の話を無くして、いきなりここからはじまっても違和感はなかったと思う。“赤ん坊”が発熱して病院との接点はできるわけだから。御前様のとらや来訪も一回ですんだし。
川口:寅を絶対にマドンナに会わすまいっていう、あの笑いを描きたかったからだろうな。
木暮:それと、やっぱり中盤の展開の前に“まくら”のような話を必ず語っておくのが『男はつらいよ』流なのかもしれない。
川口:それにしても中盤の展開には「置き手紙」が出てくるパターンが多いね。書くのは毎回別人なんだけど。そこもきちんと追いかけておけばよかったな。
木暮:次の“周回”時のポイントにすればいいよ(笑)。
○『ルパン三世パート6』第15話
川口:「ウィッチ・アンド・ジェントルマン」の2話目。赤毛の女盗賊はメルセデスで、エルヴィラという組織を率いていた。
木暮:クローンでも整形でもなくて、全員がメルセデスの変装をしているだけだった。
川口:その設定は本当に必要だったのかな?
木暮:ラストでのルパンとの“騙し合い”の一環として必要だったんじゃないのか? 全員が変装していなくてもよかったとは思うけど。
川口:装甲車でメキシコの銀行を襲う展開は、劇中でも語られているとおり「品がない」し、前半の敵としてメルセデスはあまり印象に残らなかった。まあ、ラスボスは“トモエ”だからいいのかもしれないが。
木暮:その“トモエ”の正体も単にルパンの“教育係”だったっていうことをあっさりバラしちゃったな?
川口:そこであまり引っ張るとガッカリ感が増しちゃうからじゃないか?
木暮:ただ、“トモエ”の過去の不可解さはちょっと気になる描かれ方なんだよな。「ミステリー」というテーマはまだ継続しているのかも。
川口:実は“トモエ”が「アイリーン・アドラー」だったというオチは考えられないかな?
木暮:「ルパン対ホームズ」はもう終わったんだぞ。
川口:終わったと思わせて……。
木暮:素人の予想がこれまで当たったことがあったか?
川口:そうだった……でも、花屋の女の子とか、銭形の部下に加わった女性捜査官とか、ゲストキャラクターが女性ばかりだってところにはきっと何かあるぞ。
木暮:そのうちの誰かが“トモエ”だっていうの?──年齢差はどうなるんだよ?
川口:うーん、今日のところはこれで勘弁してやろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?