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手を動かすのが好きだから、やりたいことがたくさんある/吉祥寺店 宮尾

 私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。

第15回目は吉祥寺店セールスメカニックの宮尾さん。彫金の作家業も続ける傍ら自転車の組立や特別なパーツを手作業で生み出す楽しさ、少しの工夫で印象が変化する店舗ディスプレイへの興味について語ってくれました。

宮尾 耕平(みやお こうへい)
芸術大学院卒業後、トーキョーバイク入社。谷中店を経て、2020年秋から吉祥寺店へ異動しセールスメカニックとして勤務。学生時代から専攻していた彫金で作家活動も行っており、同僚の何人かは彼に結婚指輪を製作してもらっている。

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入社から5年間の谷中勤務を経て、吉祥寺店へ

ーー入社のきっかけを教えてください

メカニックの募集を見て応募しました。大学生の頃、知り合いからピストバイクを譲ってもらって、自分で組んだりいじったりしていたんです。もう少しちゃんとやってみたいなと思って、自転車屋さんで働けるところを探していたんです。

トーキョーバイクのことは友人の買い物に同行した際に知りました。谷中店で試乗をして、その時に面白い自転車だなと記憶に残っていて。

ただの自転車屋ではなく、メーカーだったというのも応募理由の一つです。大学で学んだ彫金で小さな作家業を続けたかったので、プロダクトを作るという部分を勉強できればと思いました。

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ーーセールスメカニックとしての仕事は、接客・組立・修理と3つの側面がありますよね。どれが好きですか?

手を動かすのが好きなので、メカニックの仕事は好きです。

組立はただ単純に没頭できる。僕は身体で覚えるタイプなので、組立リストの手順通りに体が効率よく動けていることが面白いと感じます。考えずに体が動く状態でいるのが楽しいんですね。悩むことなく、どんどん手が動いていくのが好きです。

修理は手を動かしつつ、自転車の情報を拾っていく。こうしてみよう、ああしてみようと考えて、直れば嬉しい。

接客も面白いです。お客さんの意図や希望を上手く探っていく感じも、提案が着地する時も面白いですね。

だからどの仕事もそれぞれに好きです。

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ーー谷中で5年間勤務して、この秋から吉祥寺店へ

大学院までずっと上野に通っていたので谷中は近所でしたが、その頃はほとんど街のことを知りませんでした。トーキョーバイクで働くようになってから、いろんな場所を知って、谷中がこんなに面白いんだと気付きました。

吉祥寺も今回異動になるまで数回しか来たことがなかったんですが、同じようにこれからどんどん開拓したいと思っています。自転車通勤をしているので、通勤途中も攻めていきたいですね。

ーーチームにはすぐに馴染めましたか?

吉祥寺店のスタッフとは、谷中店時代に一緒に働いたり顔を合わせたりすることも多かったので、すんなり馴染みましたね。店長は僕より若いですが、スタッフはみんな安定感があるし、年齢差は感じません。

若い店長の下、みんなでしっかりまとまっていて、アットホームで仲が良い。柔らかい感じのチームだなと思います。

自分にしかできない手仕事と、深めたい店舗ディスプレイ

ーー宮尾さんはメカニック以外にも、外部の企業と特別な自転車を作る場合にオリジナルのヘッドバッジ製作を担当していますよね

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2019年 TRAVELER’S FACTORY × tokyobike コラボレーションバイク 

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2016年 MANDARIN ORIENTAL TOKYO レンタルバイク

ヘッドバッジのデザインデータから鋳造までは型やレーザー加工でできるんですが、それで完成というわけにはいかず手作業が発生するんですね。そのままだと表面がザラザラだったり、金属を流し込んだ際の跡が残っていたりする。それらを削り落として綺麗にして、歪みをとって、自転車のフレームに合わせた曲げ加工も行って、一つずつ製作しました。

ーーこれは彫金の技術を持つ宮尾さんにしかできない仕事でしたよね。他に今後やってみたいことはありますか

自転車のオプションパーツの開発は面白そうだなと思います。みんなでワイワイ、チームでできたらいいですね。

それから、ものづくりに限らず店舗のディスプレイにも興味があります。

昔、美術館のインストーラーという仕事に興味を持ったことがあるんです。インストーラーというのは、美術展を開催する際に作品を運搬・設置する職業です。ただ作品を運ぶだけじゃなく、展示する箱の中でアーティストの作品をどう具現化するのかを考えるんですね。美術館の入り口の大きさや消防法、観覧客の動線など色々な制限がある中で、アーティスト側にはこう表現したい!という要望があり、その中で作品をどう展示するかを考えるのが面白そうだと思ったんです。

トーキョーバイクの店舗のディスプレイは、各店に完全に任せられているので色々考えたいですね。先日も取り扱っているムーンスターのスニーカーを自転車の前に並べてみたんですが、ただ置いただけだといまいちで。そこに板を数枚重ねて調子をつけてみたら、ちょっと印象が変わったんです。上から植物を吊るしてもらったらそれも素敵で。

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お店の展示場所として、モノをどういう流れで置いていくのか。それを構成するのは、学生時代の課題と似ているんですよね。吉祥寺の箱はまだまだ可能性があると思います。

ディスプレイも時には本社と一緒に取り組むのもいいかなと思っています。やり取りの中でブランドとしての狙いをより深く理解できれば、店頭の接客で商品のコンセプトをお客さまにも伝えやすい。吉祥寺店だけではなく、期間を決めて各店の持ち回りでやっても面白そうです。

会社としてブランドとしての企画や見せ方を理解しつつ、さらにお店としての解釈でこの見せ方にしようとできればいいかもしれないですね。

好きなものと好きな時間

ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?

最近はTOKYOBIKE BISOU 26が好みです。シルエットがゆるめでゆったりした感じのモデルですが、色々とパーツを組み替えながら、少しスポーツっぽくしたい。今いじりながら、どこに落とし込もうかと考え中です。

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谷中店勤務時代は自転車で通勤すると結構距離があったので、ロードバイクの方がよかったんです。幹線道路を走っている時は、スピードにのれて早く移動出来る。でも吉祥寺店に異動して通勤距離が短くなると、もっと細い道を走るようになったんです。そうなるとスピードも出せないし信号にも捕まりまくるんですね。これならゆったりしたモデルでいいかなと思って。

ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?

ハブダイナモです。今年周りのスタッフ皆にお勧めして「絶対いらないです」と言われましたけど・・・。

でも僕はストレスのなさが好きですね。電池が切れないし、ライトも車体に固定されるから盗まれないし。ただカスタムのコストがめちゃかかるんですよね・・・。

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ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?

家でお茶をしているのが好きです。昼食の後、明るい時間帯にティーパックの紅茶を入れて、クッキーとか小さなお菓子をちょっと食べて、ぼーっとしてるのが好き。あったかいものを飲んで一息つくと落ち着きますよね。

気づくとすごく時間が経っていて、もう夕方だ!となったりする。ぼんやりするのが好きですね。

ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?

通勤でいいなと思った場所が、平井大橋です。特に帰り道、夜走るのが好きでした。

平井大橋は、荒川と中川という2つの川をまたぐとても長くて大きな橋です。そして2つの川と平行して首都高速道路も走っている場所です。

新小岩方面は都心に比べると、高いビルがあまりない。だから橋の途中に差し掛かると、頭の上を走っている首都高速道路の先に、開けた空間が広がっている。橋が長いことで、視界の景色が切り替わるんです。下を流れている川、上には夜空の中キラキラした高速道路の光、開けている向こう側。

その橋を渡っている時は、区切られたところを跨いでいるような感覚になる。そこがめっちゃ好きですね。


(取材・文)小西
(撮影)橋原