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SDSノート_08「芸術と技術の間にユーモアを」

こんにちは。ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。前回までのSDSについては下記をご覧ください▼
第8回目となる7月17日(土)は、「アートプロジェクトにダイブする前に知ってほしい7つのこと」レクチャーとしてAR三兄弟の川田十夢さんをゲストに迎えました。テーマは「芸術と技術の間にユーモアを」です。

 AR三兄弟は東京ビエンナーレでも作品を制作しており、ビエンナーレのタブロイド誌や雑誌オズマガジン裏表紙、カード(Softbankショップ設置)にARアートを組み込んでいます。

今回のお話しでは、川田さんのユニークな世界への眼差しと学び、そして世界へ働きかけていくユーモアある実装の数々をお聞きしました。

今回も、SDS第8回レクチャーを聴講されたメンバーにその様子をレポートしてもらいます。それではぜひご覧ください▼


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SDSメンバーの瀧戸彩花です。普段はある国の機関で科学と社会のつながりを考える情報発信や場づくりの仕事に携わっています。そのほか、文化人類学や芸術等の観点で、人と人、人とモノの関わり方や伝わり方・関係性を、ひっそりと研究しています。自身の関心は「人と人をつなぐこと」「場づくり」です。

今回は、技術と芸術にユーモアを交えて表現活動する川田さんから “コラボレーションやイノベーションを起こす方法に学ぶ回”でした。開発者ならではの視点で語る「AR(技術)×○○」紹介はまさにユーモアの嵐。特に、「技術」「美」への考えの持ち方や意識次第で新しい発想やイノベーションが生まれるという内容が印象的で、総合知やSTEAMにも通ずるのではないかと感じました。

「技術に芸術も含まれている、逆も然り」「芸術もスポーツも、今の分断は良くない」と川田さんの話にもあるように、現代はまだまだ各領域が離れた状態にもあるかと思います。

さまざまな領域を体系的に学ぶ総合知に価値が見出され始めている話にもつながると感じました。

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また、「美」的感覚の話からは、豊かな作品を生み出す可能性が得られることを学びました。「芸術の中に技術があって、技術の中に芸術がある。君がいて僕がいて、僕がいて君がいる」という川田さんのセリフは名言だと思います(古来、科学と芸術は一つのものとして認識され語られていたと言われています)。

現代は「技術」を使えば「表現したいもの」はたいてい実現できるそうです。悪いことにも使われうる。新しい技術を提案する際には、倫理面などの難しい問題も含め、周りを説得しなければいけないこともあるかと思います。そんな時どうするのか。

川田さんは「現実ではできないことを、拡張で現実的にかなえることが僕らの仕事。前例がないことこそ挑戦する価値があるのではないか」と説得するのだそうです。

そこで、他者(他領域)との関わりのハードルを下げるのがユーモア。さまざまな人との越境には、共通項を見出して共感を引っ張り出すのが大事なのですね。 

実際、ユーモアがきっかけで共通の認識を持ち、ともに取り組むこともあるそう。これは社会における問題意識を共通項として、一つのモノ・コトをともにつくろうとするSTEAM教育の考え方にもつながっているのではないかと感じました。地域へDIVEしようと思う時の、自分の動機や意義探し、問題発見や解決への重要なヒントです。 

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アプリ開発例からは「どうでも良いことにスポットをあてる。ストックから新しい作品が生まれる」という言葉が印象的で、日常の思いつきの重要性を実感。ディープラーニングの技術を応用させた開発例(会議の様子を石化する、楽譜が読めない人でも歌い弾ける)は個人的にも気になります。

川田さんや宮本先生、メンバーの質疑応答、皆さんとの対話から、表現してみたい内容をたくさんストックすることができました。言葉にならないさまざまな想いや情報を、文体を宿すディープラーニングで(奇跡の会話から議事録まで)石碑化し、保存していくアートはぜひ実現してみたいと思います。

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SDSメンバーの佐藤久美です。普段は企業に勤めつつ、細く長く国内外でモノをつくったり、自己理解・他者理解を深めるセッションをしたりしています。今回アートプロジェクトの鑑賞、企画に関心があってSDSに参加しています。

Deep Learning(深層学習)の活用や、プログラミングでアートをつくることにも興味があり、本セッションを大変楽しみにしていました。過去作品の紹介を交えてのトークセッションは本当にあっという間で、川田さんは物事をメタにとらえる人という印象でした。あらゆる事象を、異なる次元からとらえて、技術を使って実現する人。

「商品をカメラで読み取れば言葉がわからなくても注文できるな」「車いすの人がバレリーナや力士のように踊って自在に経験の橋渡しができたらいいな」

そんなメタな発想を、空間認識(超音波、加速度センサー)や手書きの文字を光学的に読み取るOCR技術、自動運転でも使われる光の反射を利用して物体との距離を測る技術「LiDAR(ライダー)」などその時々の先端技術を使って実用からアートまで作品を展開していました。

ご自身を芸術家というよりは技術者と呼ぶ川田さんは、技術を探求していると美しい瞬間を発見するので、表現の引き出しに取っておくそうです。東京ビエンナーレでは、その美しい瞬間をいくつも楽しめます。

私はARの拡張(拡張現実の拡張?!)がここ数年大きく進化したと感じています。コロナ禍前、今からほんの4、5年前は自分のアバターとなったロボットが遠隔で会議に参加するだけで話題になりましたが、今ではリモート会議は当たり前のものになりました。

長くARの研究に携わってきた技術者、東京大学大学院情報学環 暦本純一教授など、先達をどう思うか聞いてみました。川田さんは、技術開発をしてきた暦本先生に感謝と尊敬の念を抱いているし、そのARを広く紹介してきたことをありがたいと思っていただいている、とのことでした。

ユーモアと笑いを交えて技術をつかった同世代アーティストを紹介する川田さんから、先達への真摯なリスペクトを感じ、また一つ川田さんの引き出しを垣間見ました。

第8回レクチャーの記録はここまでとなります。それでは、またSDSノートにてお会いしましょう。

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