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夜の流行歌教室

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「香水」って歌は、『きみの、ドールチェアーンド、ガッパーナーの香水のせいだよー』っていうリズムなんですが、夫は何回歌っても『きーーーみの、ドーーールチェアーーンド』って歌ってしまう。

『きみの』はキュッと短くひと息で終わらせて、『ドールチェアーンド』にすぐ移らないと小節に1文がおさまらないのに、『きーーーみの』っていきなり伸ばして歌っちゃう上に『ドーーールチェ』も伸ばすので、『アーーンド』の時点でもうその小節からはみ出るのだ。

「ちがうよ、『きーーーみの』じゃなくて『きみの』だよ」

「きーーーみのドーールチェアーーンド」

「いや、『きーーーみの』って歌ってるよ」

そもそも、音痴だからとめったに歌など歌わない夫が、なぜこんな流行りの歌を歌い出したのかというとだ。モノマネ芸人の原口あきまささんが、YouTubeでいろんなモノマネをまじえつつ、この歌を披露していたのが面白かったらしい。

彼の中では“原口あきまさが桑田佳祐のマネをしながら歌った面白い歌”なのである。

結局、もう若い流行の歌を正しく覚えられない年齢になっているのだと思う。っていうか、教えている側の私だって、この歌の事、全然よく知らない。よく知らない者同士が、こうして夕食後に大声で歌い合っている。

何度目かで、やっと夫が『きみの』って歌えて、流行歌教室は突然終わってしまった。ずっと『きーーーみの』のままでいて欲しかった。


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