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「事務局3人組」で動く。|アートプロジェクトの運営をひらく、〇〇のことば。

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から「事務局3人組」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

今回取り上げた「事務局3人組」について、ことば本では以下のように書かれています。

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事務局3人組ーーアートプロジェクトの第一歩

アートプロジェクトは、まず事務局づくりから。「事務局」とは、プロジェクトが動いていくための道をつくり、動かしていく存在。「こんなプログラムやあんな活動があったら良いな」という思いを形にして実現できるチー ムだ。「事務局」をしっかり機能させるには、「事務局長」「広報」「経理」の3役が最低でも必要だ。事務局長は、組織の存在意義を提示し、それにもとづいたプロジェクトを構築し、実施体制をつくる。全体を統括しながら関係各所との調整役も担う。広報担当は、活動を対外的に発信し、自分たちの活動を価値化する役目。そして経理担当は、組織運営に必要な予算を確保し運用する。アートプロジェクトの現場では、予算も限られており、1人が何役もこなすケースがあるが、少なくともこの3役は担当を分けたほうがバランスのとれた運営ができるだろう。

異なる立場の3人が事業を組み立てる体制が整うと、 プロジェクトは動き出し、運営を維持するためのアクションがとれる。更なるメンバーを増やし、新たな事業を展開する可能性も出てくるだろう。アートプロジェクトの組織づくりは、まずは3人の仲間が出会うところからはじまる。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、12頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロード、もしくは郵送(送料のみ/着払い)にてお読みいただけます。

「アートプロジェクト」を説明する時のことばの一つに「ひとりではできない」があります。さまざまな人との関わりをつくりながら進めていくものだからです。まずは「事務局長」「広報」「経理」からスタートし、ベースとなるチームをつくります。事業の規模に応じて役割が増えていくこともあります。『アートプロジェクトの現場で使える27の技術』ではこのように記されています。

最低限必要な、事務局長、広報、経理の3役のほか、各プログラムを担当する者、ボランティアとの連絡調整をする者など、その事務局の特性によってさまざまな役割があります 。役割分担によって、タスクごとに責任の所在が明確になり 、各スタッ フの業務の範囲もわかりやすくなるでしょう 。

『アートプロジェクトの現場で使える27の技術』15頁

プロジェクトはある程度知っている人同士の3人組からはじまることが多いです。仲が良いことにより責任範囲の境界線が曖昧になってしまうこともしばしば。プロジェクトのスタートにあたり、立場や役割、業務範囲を明確にしておくことが大切です。体制図を作成し、視覚的に確認することも有効です。

チームビルディングに必要なことば

「ことば本」の中から2つほど、事務局づくりからはじまる、チームビルディングにかかわることばをご紹介します。

座組
ーー誰とプロジェクトを動かしていくのか

何かをはじめるとき、誰の力が必要かを考える。そのキャスティングを「座組」という。座組によって、プロジェクトの広がりや仕上がりは大きく変わる。ディレクター、アーティスト、デザイナー、自治体職員など、誰と協働すれば良いものができるのか。目的達成のイメージをしっかりともちながら、プロジェクトメンバーの構成を考える。 メンバー構成を検討する段階から、実施体制図を書いてみよう。このときアルバイトやインターン、ボランティアまでプロジェクトの実施運営に関わるすべての人の名前を書き出す。その体制図をもとに、各業務の責任者や役割分担、情報の流し方や共有の範囲を確認する。さまざまな人が関わるプロジェクトほど、誰がどの立場で関わっているのかを正確に把握することが、ス ムーズなプロジェクト運営およびリスク回避につながる。

ことば本、22頁より

体制図はたとえば1年ごとなど、節目ごとに更新することがおすすめです。メンバーチェンジは起こりうることととして考えておきます。また、関わるパートナーが増えたり、ボランティアが増えたりすることはそのままプロジェクトの成長の可視化にもなります。

情報共有
ーー立場の違う仲間への伝え方、事務局内での「ほうれんそう」

(抜粋)事務局内での情報共有では、プロジェクトが忙しくなると、メンバーの動きを把握するのが難しくなりがちだ。しかし、「ほうれんそう」を怠ると大きなリスクを招きかねない。日常的な情報共有は習慣化しよう。定期的に「報告」「連絡」する体制を整える。些細なことでもモヤッとしたらすぐ「相談」する。時間をかけられないときは、数文字の携帯メールでのやりとりでも良い。それぞれの業務で動きがあったとき、滞ったとき、問題が起こりそうなとき。それらの情報を適宜共有し、チーム全体で状況を把握できていることが、組織としての大きな力につながる。

ことば本、23頁より

チームビルディングに欠かせないことは情報の風通しをよくすることです。「え、それきいてないよ。」は気まずいムードにしかなりません。情報を共有するための報告も、連絡も、相談も手数は増えます。それでも、困ったときに助け合えるのがチームであることの強み。よかったことを増幅させられることもチームの強みです。対話を重ね、関わりを紡ぐことがアートプロジェクトであるならば、チームビルディングそのものもプロジェクトの一環であると言えます。ぜひ、めんどくさがらず、丁寧に。

大内伸輔

「事務局3人組」についてはこちらの記事でも解説しています。

▼ Tokyo Art Research Lab「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば」の再生リストは、以下のリンク先からご覧いただけます。