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レオナルド『岩窟の聖母』が2枚存在する理由

イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチは、ほぼ同一の構図を持つ2枚の『岩窟の聖母』を描きました。この作品には、聖母マリア、幼子イエス、幼児の洗礼者ヨハネ、大天使ウリエルが描かれており、岩山を背景としています。1点はパリのルーブル美術館に展示され、もう1点はロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されており、それぞれ「ルーブルの『岩窟の聖母』」「ロンドンの『岩窟の聖母』」として知られています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』1483–1486 ルーブル美術館、パリ


レオナルド・ダ・ヴィンチ他『岩窟の聖母』1495–1508 ナショナルギャラリー、ロンドン

この絵画のテーマは、幼子イエスを礼拝する幼児の洗礼者ヨハネです。これは聖家族のエジプト逃避行に関連する伝承に基づいており、マタイによる福音書には、ヨセフがヘロデ王の脅威から逃げるよう警告を受けたと記されています。また、ヨハネの家族もベツレヘムでの幼子虐殺から逃れたという伝説があり、ヨハネが大天使ウリエルに護衛されてエジプトへ向かう途中で聖家族に出会った場面が描かれています。

同じ構図の2枚が存在する理由として、レオナルドは1483年にルーブル版を描きましたが、依頼主である無原罪の御宿り信心会が何らかの理由で受け取りを拒否し、1480年代後半に別の顧客に売却されたと言われています。その後、レオナルドは無原罪の御宿り信心会のために新たにロンドン版を描いたとされています。

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