見出し画像

【Last Season Essay 2023 #12】DB#21 筏井崇介

小さい頃から逃げるのが得意だった。

自分で言うのもなんだが勉強も運動も苦手ではなかったので、そこそこ上手くいったところで言い訳をして逃げて、全力でやることを、自分の限界が見えてしまうことを無意識に避けて自分を守っていた。いまだに同期にはスカしてるとからかわれることが多いが、それは感情がでるほど何かを全力でやることを恥ずかしいと思ってきたからだろう。

そんなこんなで約20年間生きてきたのだが、大学に入ってWARRIORSに入部したことが人生の転機になる。そこにあったのは著名なコーチ陣、親切な先輩や優秀なスタッフの方、綺麗なグラウンドに専用のトレーニングジム、そしてなにより日本一を目指せるTOP8に所属したチームという完璧な環境だった。入部したての時は、スポーツだけに打ち込める、ラッキーだなくらいに思っていた。
もちろん今でもその環境は本当にありがたいし恵まれていると感じることも多々ある。しかし上級生になるにつれ、その完璧な環境は逆に自分を追い込んでいった。なぜなら、それだけ完璧な環境においては言い訳の余地もなく、うまく行かなかったら完全に自分の努力不足、実力不足という結論に行き着いてしまうということに気づいたからである。ただそんな中で、今度は、怪我がひどい、ご飯が食べれない、肉を食べると吐いてしまう、体調が悪いというように言い訳を自分の中に求めた。失敗や自分の限界から何度も逃げ出そうとした。
ただその度に「俺はまた逃げるのか、こんな環境ですら言い訳するのか、一生逃げ続けるんだな俺は」という想いが頭をよぎり、部活を続けてきた。上級生になり試合に出始め、後輩たちを引っ張る立場になると、逃げ出そうという感情は自然とほぼ湧かなくなった。しかしその分キツいことは増した。
全力でやってミスする、失敗する、負けるということは、今まで逃げ続けてきた自分にとってはとにかくキツかった。特に4年秋シーズンになると負け続ける度に、保険をかけず体当たりで臨んだ自分の4年間の取り組みを全否定されるように感じる。

ただ、ここまで部活を続けてきた根本は、弱い自分を変えたいと言う想いである。ここで置きに行ったら自分は何も成長できてない。最後の最後まで苦しんで、もがいて、勝ちたい。
もう残りの日数は少ないが、毎日やり切って、勝ちきって、引退した時に自分から逃げなくてよかった、弱い自分に勝ったって言おう。(DB#21 筏井崇介)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?