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【Last Season Essay 2023 #13】TR 山田龍仁

僕の趣味はランニングです。実力はもちろん陸上経験者には遠く及びませんが、最近は10km40分を目標としており、先日は5kmを18分44秒で折り返したにも拘らず、折り返した瞬間から予想外の強烈な逆風にあおられ大幅ペースダウン、目標達成はなりませんでした。
ランニングはストレス発散の一つです。これを言うと毎度周りに引かれるのですが、追い込むことでその辛さによって多くの他の悩みを一時的に忘れることができるからです。一方、趣味にも拘わらず時にストレスの一因となることもあります。話せばさらにドン引きされることが目に見えているため一度も他人には話したことはないのですが、折角追い込んでいたつもりだったのに走り終わった直後の疲労感がたいしたことなくて、「あの時もっとやれたのではないか」という後悔に苛まれることがあるからです。

 さて、物事に対する継続的な取り組みを喩えるには月並みな表現ですが、僕はWARRIORSへの取り組みはランニングに似ていると考えることがあります。
 WARRIORSは日本一を達成したことがありません。そのため、部活動が「ゴールは見えないけれど、全力で取り組まなければならないマラソンのようなものだ」と言われる機会があります。全力で取り組めば、周りが見えなくなるまで没頭できることも共通点の一つかも知れません。仮に自分が成長できているとするならば、現在の自分の持つ視点で過去の自分を見下ろした時にそれがひどく劣って見えることはある意味では当然かもしれませんが、「あの時もっとやれたのではないか」という後悔は常に付きまといます。一方、当時は辛いと思っていたことでも今考えるとたいしたことないなあ、と思ったりもします。これらのことも確かに共通点ではあるのですが、僕の中で両者の共通点として最も強調したいことは、上に書いたようなことではなく、「追い風には気づけない」ということです。冒頭で紹介した10kmチャレンジ失敗エピソードを読んで頂ければ、ほとんどの人は山田がたまたま行きで追い風に乗っていただけだと気づくことができるでしょう。しかし、当の本人は走っている最中はそのことに微塵も気づかず、折り返して(つい先刻まで自分を後押ししてくれていた)逆風を受けた瞬間になって初めて「今日、風つよ」とか考えていたものでした。
そんなわけでランニングにおいては逆風ばかりを自覚している僕ですが、部活動においてもこれは同じことなのではないかな、と最近になってようやく考えるようになってきました。
部活に入ってから、楽しいことや嬉しいこともありましたが、思い起こせば「辛い」と思ってばかりだったような気がします。試合に負け、チームの人と喧嘩し、リハビリに失敗し、自分の取り組みにも満足はいかず、自分に対する要求に対しては反発し。逆風の存在ばかりを手にとってはそれに対してネガティブな反応ばかりをしていました。しかし、当時の自分も、そして今現在の自分もなお、自分たちの取り組みの元にある、そしてなくてはならない、沢山の人からの支援や声援から得られる正のエネルギーに対してあまりにも無自覚だったのではないか。そんなことを、4年も終わろうとしている今になって、ようやく考えるようになっています。

駒場のクラブハウスに、設立の際の高額寄付者の方々が掲示されています。その看板に目を向けて、名前の書いてある人々がどのような人物なのか関心を持ったのはつい先月のことです。応援してくれている人たちに対して恥ずかしい取り組みはできないと自覚するようになったのは、0-44で大敗した早稲田戦の後のエール交換を聞いていたあの時になってようやくのことです。そしてその早稲田戦は、先人たちが血のにじむような努力をしてTOP8昇格を勝ち取ってくれたおかげで実現されたものです。そもそも多くの方々からの寄付がなければこの部活動は今の規模では存続すらできないでしょう。僕自身としては大学生活を部活動に没頭することができたのは両親やチームメイトのおかげですし、そもそも僕が東大に入れたのも両親や母校の先生たちのおかげです。自分の喜怒哀楽のすべては多くの人々が作り出してくれた追い風に乗っているものに過ぎないと最後の最後に少しだけ身をもって理解させてもらえたことは、僕がこの部活動を通じて得させてもらった財産かもしれません。僕やWARRIORSを支援し、声援を送ってくださった皆さまへ。この部活を通じて関わったすべての皆さまへ。今まで本当にありがとうございました。

もう僕たちに残された時間は多くはありません。ですが、最後の最後になってやっと真の意味で自覚できたかもしれない、それでもやっぱりちょっと足りないかもしれない、そんな感謝の気持ちを持って残りの時間それを結果という形にすべく、WARRIORSの活動に取り組みます。(TR 山田龍仁)

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