南北相法(前編/巻ノ二)
水野南北居士 著
門人 平山南嶽・水野八氣 校
《頭を論ず》
一 頭は心の深浅を観る。
一 頭が大きい者は心が安定する事が遅い。故に物事がみな成就する直前でダメになる事が多い。
一 頭が小さい者は大きい者と同様に、発展し難い。物事を成し遂げる事が出来ない。
一 頭が後ろへ長く、奥行がある者は心が深く、柔軟性があり、強い。
一 頭が奥行の無い者は心が浅く、少しの事を恐れる。また、物事に染まりやすい。
松岡治部が問う
頭が心を司るのは何故でしょうか。
答える
頭は天に対応しているので、その形が丸い。また、頭は諸陽の会する(合流する)所であり、心の遊情の官である。故に、頭がその心を司る。また、頭が後ろへ長く奥行がある者はその心に奥行があるのであり、心も深く、柔軟性があり、強い。逆に頭に奥行が無い者はその心に奥行が無いようなものであり、故に心も浅くて少しの事に驚くのである。この事はよく考えなさい。また、頭が大きい者はその心に締まりが無いのと同然で、身の上の事がおさまるのが遅いのである。逆に頭が小さい者は心が及ばないようなもので、故に発展し難いと観る。この事もよく考えなさい。当然の道理をもって、ここに示す。
*「諸陽」とは経絡の陽経の事。手の陽明大腸経、足の陽明胃経、手の太陽小腸経、足の太陽膀胱経、手の少陽三焦経、足の少陽胆経、督脈などが頭に集まっている。
《頂(頭頂)を論ず》
一 頭頂は品位をあらわす部位であり、万物を保てるか否かを観る。
一 頭頂が高く尖る者は一生苦労が多く、愛嬌が無い。
一 頭頂の肉付きが良く、丸く盛り上がっている者は人の下につくという事が無く、発展する。また、心が正しい。さらに、武士以外の職業である者ならば、非常に良い。
* 原文では「…長袖は大によし」。ここで言う長袖とは、公家(公卿)や医師、神主、僧侶、学者などを指す。つまり、武士が袖をまくりあげて鎧を着るのに対する呼称である。方外(ほうがい)、長袖者(ちょうしゅうしゃ)とも呼ばれる。
↑図1
一 頭頂の中が低い者は妻子に縁が薄く、苦労が多い。また、婚期が遅く、家庭が安定する事も遅い。苦労する割に手柄が少ない。少し低い場合は苦しむ事は少ない(図1参照)。
↑図2
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