東京妄想日誌#1-1 (著:Ken)

ある日のこと。
九時を過ぎたころ、少しの残業が終わって帰路に就いた。
最寄り駅までは、電車で八駅。
少し混んだ社内で、お気に入りのラジオを聴きながら帰るのが日課だ。

ラジオの一つ目のコーナーが終わるころ、最寄駅に着いた。
空腹な私は、少し早歩きでいつもの店へと向かった。
白髪が格好良い大将と、見るからに優しそうなお母さんがやっていて
上京してから、ずっと行きつけだ。

「いらっしゃい。」

温かい二人に迎えられ、いつものカウンター席へ向かったが、
この日は先客に座られていた。
見慣れない顔の女性で、おそらく初めて来たのだろう。
仕方なく、一つ席を挟んで入り口側の席に座った。
座ると同時に、いつも頼んでいる肉じゃがとキープしてある麦焼酎のソーダ割を注文した。
五分くらいすると注文していた料理と飲み物が到着。
静かに、手を合わせて箸を持った。

ソーダ割で二杯飲んでから、ロックを飲むのが自分ルール。
ちょうどこの日もいまからロックに入るというところで、少しの違和感。
カウンターの奥に並んでいたキープのボトルが、四本から五本になっていた。
この店が大好きな私は、少し嬉しくなってクっと麦焼酎を飲んだ。

この店に着いてからおよそ二時間が経ち、いい感じに酔いが回ってきた。
会計をしようと、レジへ向かいながら、大将に新しく増えたキープボトルのことを聞いた。
よくよく聞いてみると、私の指定席に今日座っていた女性らしく、
ここ最近はよく来ているお客さんらしい。
私は昔から、よく飲む女性が大好きだ。
自分もよくお酒を飲むからか、よく飲む女性と結婚したいと思っている。

今度会ったら、声をかけてみよう。

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