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個人の好きをブランドにする“はじめの一歩“Vol.3

今回も前回の記事に引き続き、個人が“自分の好きなこと”でブランドをつくるときにまず最初に考えておくべきことについて話をしたいと思います。

今回は、これからのブランドづくりは『ローカライズが生命線』というテーマで話していきます。

ローカライズとは「ローカルにする」という意味で、つまり地方的、地域的にするということです。これはご存知グローバル化に逆行する発想ですが、実はこの考え方がこれからの時代のブランドづくりの成功の鍵を握っています。

しかも、小規模な“個人”のブランドにおいては特に当てはまります

小さなブランドこそ、小規模だが繋がりの強い確かな商圏を確立することが必須だからです。

お店で考えてみる

近所の個人商店をイメージすると分かりやすいと思います。街にちょっと出れば大型チェーンなどがある中でも、近所の商店街の小さな個人商店などが成立しているのは、きちんと“ローカライズ”されているからです。

「大型チェーンの方が確かに安いけど、○○商店は家からスグだし」
「近所の○○商店とは、昔から家族ぐるみの付き合いだし」
「○○商店の店員さん、いつも前を通るだけでも挨拶してくれるし」
と思ってくれる地域のお客さんがいる限り、そのお店はきっと大丈夫です。

これがローカライズされている状態です。

どういうことかをもう少し具体的に言うと、ポイントは2つあります。

①自分の生活圏にあるという“身体的距離”の近さ
②地域の一員として信頼関係が築けている“精神的距離”の近さ

が備わっている状態ということです。

ここで見落としてはいけないのは、身体的距離の近さだけでなく、精神的距離の近さも重要であると言うことです。つまり、その地域の生活圏の中にお店を構えるだけでなく、その地域のに馴染んで愛されてはじめて、安定したお店の継続が可能になるのです。

この“ローカライズする”という考え方は、小規模なお店がグローバル化の流れの中で生き抜いていくために重要な考え方ですが、実はお店以外のブランドでも同じことが言えます。

ブランドをローカライズするとは?

しかし、ここで問題になってくるのは、お店の場合は。「ローカル=地域」と分かりやすかったのが、ブランドづくりにおけるローカルとは何か?という話です。

この疑問を頭の片隅において先ほどの①②をもう一度見てみたいと思います。

①自分の生活圏にあるという“身体的距離”の近さ

これは、つまり“アクセスしやすい”ということです。注目したいのは“生活圏”というワードで、これはさっき説明したように自分の住んでいる、あるいは通勤通学している行動範囲のことです。

しかし、もうひとつ忘れてはいけない生活圏があります。

それは、自分のスマホやPCの中です。僕たちは、インターネット上の世界を通じて、人と交流したり、物を購入したりしています。年々その傾向は強くなり、いまでは立派な“生活圏”となっています。

なので、これからの時代でブランドづくりを考える上で重要となるローカルは、“インターネット上の生活圏”のことです。

自分のブランド独自の生活圏をインターネット上に築くことが最初にすべき大切なことのひとつです。

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しかし、ここで注意したいのは、ただオンラインショップを設けるだけでは生活圏にならないと言うことです。

お店だけがぽつんとある街に誰も住みたくないのと同じです。

鉄道や水道などのインフラを整備し、オフィスや映画館などの目的地をつくり、公園やカフェなどの憩いの場をつくり、快適で居心地の良い環境を用意してはじめて生活圏になります。アクセスしやすいだけでなく、住みたくなる街の魅力をつくってあげる必要があるのです。

つまりブランドをローカライズするとは、そのブランドを置く生活圏をインターネット上につくり、その生活圏に“人が住みたくなる理由”を考えて、それを実現するということです。

街における鉄道や水道などのインフラは、インターネット上では『プラットフォーム』です。自社のWEBサイトから、Twitter、InstagramのSNSやYoutubeやnoteなど、様々なプラットフォームが活用できます。

街におけるオフィスや映画館などの目的地は、インターネットでは『情報』です。その生活圏にアクセスしたいと思ってもらえる情報があるかどうかが鍵となります。だから、自分のブランドの商品情報やクーポン情報だけではダメです。

たくさんの人が日常的にアクセスする理由がある情報があると、その生活圏には人が集まってきます。例えば、その街で実現できる憧れの暮らしが発信される“ライフスタイルマガジン”的なものもそのひとつです。

そして、街における公園やカフェなどの憩い場は、インターネット上では『コミュニティ』です。コミュニティがあると、価値観が近い人たちが集まってきます。共感できる仲間がいるので楽しく居心地のよい環境を作ることができます。

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実際の街と違う点でいうと、生活圏を自分でつくり出さなければならないところです。この作業は非常に大変ですが、丁寧にやるべき大切な作業です。

ここで、このローカルな生活圏づくりが得意なブランドをひとつ紹介したいと思います。

北欧、暮らしの道具店というセレクトショップです。

知っている人も多いと思うので細い話は省略しますが、自社のWEBサイトやインスタグラムを活用して、1日何件もしかも毎日投稿し続けています。投稿する内容は、自分たちが取り扱う商品の紹介だけではなく、暮らしに役立つ情報から料理レシピ、コラムなど様々です。

たとえ商品を買わなくても、皆が見たくなる、読みたくなる情報がたくさんあるので、人もたくさん集まります。インスタのフォロワーはもうすぐ100万人です。

そして、人が集まりその生活圏が賑やかになれば 経済活動もあとから活気づきます。売上もあとから付いてくるということです。

このように、日常的にアクセスしやすく、またアクセスする目的がある独自の“生活圏”をつくることがまずは大切です。

②地域の一員として信頼関係が築けている“精神的距離”の近さ

もうひとつ考えるべきことは精神的な距離を近づけることです。コミュニティを用意して居心地のよい環境をつくるだけではダメということです。それだけでは、お客さんとの信頼関係を築くことはできないからです。

では、信頼関係を築くために必要になるものは何かというと、それは『対話』と『活動』です。

まずは、『対話』です。

対話とはすなわち、双方向の会話のことです。ブランドから一方的に情報を発信するだけでなく、住人からも質問や意見を投げかけることができ、しかもそれに対してブランドがクイックに回答できるということです。“クイックに”というところが重要です。クイックでなければ会話とは言えないからです。

このように“双方向”かつ“クイック”に生活圏の住人と対話できる仕組みをつくることが大切になります。

LINEなどで、ブランドとお客さんがチャットできるようなこともひとつの手です。

次は、『活動』です。

活動とはすなわち、ブランドと住人が共同で行う作業のことです。“共同で”というところが重要です。ブランドが機会だけ提供して「あとはみなさんご自由にどうぞ」ではなくて、住人たちと一緒に考え、一緒につくっていく必要があります。

分かりやすいところだと「イベント」がありますが、この場合もブランドがホスト、住人がゲストというわけでなく、ホストとゲストの垣根を超えて、一緒につくり、一緒に楽しめる仕組みづくりが大切になります。

ここで、この住人巻き込み型の活動づくりが得意なブランドをひとつ紹介したいと思います。

よなよなエールというクラフトビールのブランドです。

こちらも知っている人が多いと思うので詳しい話は省略しますが、ブランドの熱狂的ファンが伝道師として積極的に活動しています。ファンが自主的にイベントの企画や運営を買って出るという状態にまで達しています。

結果として、ファンが新しい商品やサービスを作り出すきっかけにもなり、それがファンをさらに熱狂させるとともに、まわりの人にも伝搬して新しいファンを生み出すと言うわけです。

まとめ

以上が、“ブランドをローカライズ”する基本的な考え方です。

インターネット上で独自の生活圏をつくり、
その生活圏にユーザーがアクセスしたくなる理由を考えてつくり出す。
そして、ブランド自体もその生活圏の中に入っていき、コミュニティを形成して、ユーザーと対話したり活動をつくったりする。

これが、これから個人がブランドをつくるときに行う大切な作業のひとつです。小規模だが繋がりのつよい生活圏をつくることができるかが鍵になります。

その手法は様々で、きょう紹介した例や事例はそのひとつにすぎません。

このあたりの“つくり方”の詳しい手順についてはBrand Recipe(ブランド・レシピ)の方で体系的に説明していくので、詳しく知りたい方はそちらもチェックしてみてください。

また、質問相談等にも可能な限りお応えさせていただきますので、ぜひご連絡ください。よろしくお願いします。

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