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縁の下の力持ち

私は半年ほど前から、映画撮影の現場で仕事をしています。1度目の現場では照明部として仕事をしました。そこで製作部をしていた方に誘われ、今回は製作部として仕事をすることにしました。1度目の現場をやり終えたとき、1つの仕事を突き詰める決心をするには、まだまだ現場について知らないことが多すぎると感じていました。

そこで、やりたいことが定まっていないからこそ、様々な部署から声を掛けてもらえるという特権を存分に使って、色々なことに挑戦してみようという気持ちで製作部の仕事をしてみることにしました。

1度目の現場では自分のことに精一杯で、あまり周りの様子を見ることができていませんでした。それでも、現場に入ると朝早い照明部よりも先に製作部がいること、ご飯の用意やお金の精算をしてくれること、一番最後に現場を出ることなどは認識できていました。撮影現場にいなくてはならない存在なのだとうっすら感じていたことも、製作部の仕事をしてみようと思った理由かもしれません。こうして、また1から新しい仕事を学ぶことになりました。

撮影前から始まる仕事

雪景色を求めて

働き始めて驚いたのは、製作部は撮影が始まるずいぶん前から仕事をしているということです。

撮影をするロケ地を提案し、その場所の地図を作り、使用許可を取り、ホテルを探し、ドライバーを見つけクランクインに備えます。その他に、台本からシーンを想像して必要になりそうな備品を用意し、それらをトラックやハイエースに積み込みます。撮影期間中のご飯を用意することも製作部の仕事の1つです。今回は地方での撮影も多かったので、お弁当屋さんやケータリング屋さんを見つけるのに時間がかかりました。

撮影初日は富山県での撮影から始まりました。製作部はどの部署よりも早く現場に入ります。私はクランクインの3日前に富山入りをしました。富山で撮影準備をしているスタッフのご飯の手配や、撮影場所の使用許可取り、続々と富山にやってくるスタッフの受け入れなどをしてクランクインを迎えました。

撮影がある1日

撮影中を知らせる本番灯

撮影がある1日は、コーヒーやお茶を準備することから始まります。今回の現場のスタッフは100名ほど。みんなが飲む量を用意するためには、家やホテルを出る2時間前から準備を始める必要がありました。

また、照明部として見ていたとおり、製作部は現場に一番最初に到着します。現場の責任者と連絡を取ったり、現場の鍵を開けたりする仕事があるからです。さらに、俳優部が着替えたりメイクをしたりする支度場の準備もします。このような仕事を他のスタッフが来る前に終え、スタッフ達を迎え入れます。その後は、撮影中に使いそうな物をトラックから下ろしたり、準備してきた飲み物やお菓子を並べたりします。

撮影が始まると、電気や空調の管理、ご飯の準備、飲み物やお菓子の補充など、スムーズに撮影がすすむようにサポートします。その日の撮影が終わると様々な部署の後片付けを見届けて、最後に現場の鍵をかけ、責任者に挨拶をして私たちの仕事も終わります。

製作部で働いて

製作部として一番大変だったことは睡眠時間がとにかく短いことです。撮影日程自体がタイトであったことも影響していますが、1日に2時間ほどしか眠れない日々が続くこともありました。撮影場所が遠いときは、移動時間=睡眠時間ということも何度かありました。そんな眠れない日々の中、なぜ2ヶ月に及ぶ撮影を乗り越えられたか。それは、「ありがとう」を言ってもらえる回数がどの部署より圧倒的に多かったからです。まさに、縁の下の力持ちという言葉がぴったりな部署でした。

製作部として過ごした約3ヶ月は、これまであまり経験したことがないような、過酷で刺激的な日々でした。製作部は様々な部署と関わることが多く、色々な人と話ができます。その環境を生かし、撮影の現場について知りたいと思っていたこと、他部署の仕事のことなどをたくさん聞き、情報集収をしました。1度目より「撮影現場」について知ることができ、次にやってみたい仕事も見つけました。長い時間現場にいることができる製作部だからこそだと思います。以前よりも見えることが多くなり、やってみたいことが明確になった今、次の現場に入るのがより楽しみになりました。

Written by ISHI


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