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「撮影現場」という世界への挑戦【1】

はじまり

私は2023年4月に前職を辞め、住む場所だけを決めて上京してきました。半年ほど撮影機材を貸し出す会社でアルバイトしていましたが、そこで、映画を撮っているカメラマンと出会い、映画の撮影現場での働き口を紹介してもらえることになりました。

もともと映像作品と関わる仕事に興味があった私にとって、またとないチャンスです。「照明が人手をほしいと言っているから照明でもいい?」と聞かれ、すぐに了承しました。照明についての知識は皆無でしたが、せっかく開きかけた興味のある世界への扉です。怖じ気づいていてはもったいないと思いました。

先方に照明の知識が全くないことを伝えると、とりあえずやってみようというお返事をいただきました。すでに撮影前の準備が始まっているということで、早速挨拶もかねて現場に参加することになりました。

カメラテスト

初日はカメラテストへの参加でした。カメラテストは、本番の様々なシーンを想定して、どんな画角で撮るか、どんな照明にするか、俳優さんたちにはどのように動いてもらうかなどを考えます。

監督、助監督、演出部、撮影部、照明部などが集まり、実際に撮影をしたり、照明を立てたりして、本番に向けてテストを重ねます。右も左も分からない私が、最初にすることは、照明機材の名前を覚えることでした。照明機材と一言で言っても、大きい物から、小さい物まで本当にたくさんあります。

さらに、1つの物にいくつかの呼び方がある物や、形が似ていても呼び方が全く違う物もあり、頭がパンクしてしまいそうでした。そんな初日を終えて感じたことは、現場の進むスピードは信じられないほど速いということでした。

素早く動く理由

照明は撮影を進める中で、素早くセットする必要があります。なぜかというと、照明とカメラがお互いの位置や色合いを確認し準備を完了してから、俳優さんたちの動きを確認したり、テストをしたりするからです。照明の準備が遅いと他の部署を長く待たせてしまったり、時間内に撮影が終わらなかったりしてしまいます。だからこそ、照明部は現場で素早くセットを完了させなければいけません。

初現場に向けた準備

私が参加した現場では、照明部は5~6人いました。その中で1番経験が浅い私の役割は、先輩たちがそのときに必要な物を素早く準備して渡すことです。そのためには、機材の名前を覚えているのは必要最低限の条件です。カメラテストに参加できるのは残り1回。実際に撮影が始まるのは2週間後という状況でした。

2度目のカメラテストまで数日期間があったため、まずは1度目のカメラテストでメモした機材の名前を見ながら1つ1つ機材を思い浮かべることができるかやってみました。

すると、メモした機材はたったの10数個でしたが、どんな機材だったか思い出せない物もありました。インターネットで検索しても、いくつかある名前の内の1つだったのか、実物が出てこない物もあり、名前をメモするだけではだめと気付きました。そこで、2度目のカメラテストではメモと写真を撮ることにしました。

メモが追いつかないときには機材だけを撮って後からインターネットで探せるようにしました。そうして2度目のカメラテストを終え、撮影までの2週間、1つでも多くの名前を覚えられるように勉強しました。照明機材をレンタルしている会社のホームページから、機材の写真をダウンロードし、印刷してノートに貼り、名前や特徴を書いて似ている機材でも見分けられるようにしました。あとはとにかく実際の現場で必死に覚えながらやっていくしかないと覚悟を決めて撮影初日を迎えました・・・

次回へ続く

Written by ISHI


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