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大都会東京という街で見つけた、家庭のようなあたたかさ

18歳の頃、香川県という田舎の地から、私は大都会東京に引っ越した。

理由は単純、大学進学のためである。また、私自身東京はどんなところなのだろうと憧れる、少しミーハーじみた思いがあった。

しかしながら齢(よわい)20にもいかない女子が東京の街で生活することは至極不安が付きまとう。

家賃の高さであったり、治安であったり、家事をしながらの学生生活は本当にできるのかといった漠然とした不安であったり。一人で東京で生活する、ということに対する不安もあった。

そのため、私は上京した最初の頃、私が住居として選んだのは学生寮だった。それは私の地元の香川県が運営している寮で、香川出身の上京した学生が多く入居する寮だった。

家賃も都内にしては驚くほど安く、学生寮なので治安も安心だ。家事や掃除などは管理人さんがやってくれることもあり、初めての一人暮らしには最適な環境だった。

それに何より、一つ屋根の下に自分以外の住人がいるというのがありがたかった。寮は一人部屋ではあったが、家庭にいるような安心感があった。東京という大都会の雑多な街で、家庭のような安心感がある、というのは私にとってはありがたかった。

社会人になり、学生ではなくなった私はその学生寮を出ることになり、一人暮らしを始めた。そこで私が感じたのは、「東京での一人暮らしは思ったより大変」ということだった。

何せ家賃はワンルームでも高く、女性の一人暮らしは治安や犯罪も警戒しなければならない。また、一人暮らしでは管理人さんが家事や掃除をやってくれることなどもない。仕事をしながらの家事は、社会人一年目にはなかなか難しいものがあった。

そして何より感じたのは孤独感。当然隣人とのコミュニケーションや会話などは一切ない。誰もいない一人暮らしの部屋に帰る時、ああ私は一人なのだと突如突き付けられる。頑張って東京で仕事をしていこう、という前向きな希望を打ち砕くぐらいには、私にとってその孤独は大きかった。

引っ越ししよう。私がそう思ったのは去年の十二月のことだった。仕事から帰ってきて、たまった洗い物と脱ぎっぱなしの服の山を見たときだった。ちょうど住んでいる部屋の更新時期が近付いていた頃だった。

私は物件探しを始めた。なるべく家賃が安く、治安の心配がないところ。スマホで物件探しのページをスクロールしていた時に目に入ったのは、シェアハウスの情報、Tokyo<β>の入居者募集情報だった。

光熱費ネット代込みの家賃、管理会社が運営している女性専用物件、共有部の掃除は管理会社が定期的にしてくれる。これだけでも私には魅力的な条件だった。早く今の物件を出たい、そう思っていた私はすぐに内見の予約をして、内見帰りの足で入居を決めてしまった。年の瀬の出来事だった。

入居してみて感じたのは、その家賃の安さと治安の面での安全性、家事の負担の楽さ、そして何より安心感だった。

一つ屋根の下に自分以外の人間が住んでいる、その安心感は私にとっては大きいものだった。もともと、シェアハウスと似た形態の学生寮での生活に慣れていたこともあるだろう。シェアハウスには、最初上京したころに暮らしていた学生寮に似た、家庭のような安心感があった。

仕事から戻り、明かりのついたシェアハウスのドアを開ける度、今日も頑張ってよかった、と思うのだ。眠る前、明日からも仕事を頑張ろう、と前向きな気持ちになれる。この安心感を、この大都会の東京で、学生寮を出た後も感じられるとは思ってもいなかった。

大都会で生きる人たちの拠り所になる。そういった意味でも、シェアハウスというのは稀有な存在だと私は思う。

Written by yuuun

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