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街に癒されて

レトロなかすれた文字で「ショッピングロードAOIHEIWA」と書かれたアーケードをくぐると、少し懐かしい雰囲気の漂う商店街に入る。

この看板で初めて青井ではバラが有名な事を知った

よくこの商店街を歩くのだが、何かを買ったり食べたりするよりもただの散歩に使う事が多い。
もちろん素敵なお店はたくさん出ていて、可愛いイラストが描かれたパン屋さんや、お店の雰囲気が好みの居酒屋、少し奥まで行くと新鮮そうな野菜がたくさん置いてある八百屋など、目移りするものばかりだ。
どのお店も、自分の好きな事をこの街に住んでいる人のためにやっているように感じる。商店街を歩いている人は少ないが、どのお店も綺麗に丁寧に商品が並べられている。だから人が少なくても、寂しい雰囲気は感じず、むしろ温かさを感じる。

商店街に立ち並ぶ街灯には「青井兵和通り商店街」と書かれた黄色い旗が掛けられている。道の両サイドに黄色い旗がたくさん並んでいて、どこまでが商店街かがとても分かりやすくなっている。足元は足立区の木である桜のタイルや、かえるやどじょうなどの可愛いイラストも並んでいる。

年季を感じる旗に愛着が湧いてくる
こちらも足立区の木がさくらである事を初めて知った
なぜどじょうなのか分からないが色んな生き物がいて楽しい

上を見ても下を見ても楽しい光景が広がっているので、私はこの通りをただ歩くのが好きだ。

また、この商店街では毎月第4日曜日に朝市を開催していて、朝7時に花火の音を合図にスタートする。
こんなにも地元に根付いた商店街が東京にある事に私は少し驚いた。
都会だと特に人の入れ替わりは多いように感じるし、街に求められるものも変わっていくものだと思っていた。シャッターが降りいてる店も多いので、きっと昔は今よりも多くの店が並んでいたのかもしれないが、それでもなお活気のあるこの商店街は地元民からも愛され、必要とされているのだろう。

結局、長く愛されるものというのは需要や話題性ではなく、人の想いが感じられるものなのではないだろうか。そんな事を考えながら歩いている。

そして商店街の並びにもう一つ謎のアーケードを見つけた。

少しだけ怪しさを感じた

何かと思って進んでみれば、憩いの森公園という公園へたどり着いた。どこでもドアをくぐり抜けたかのように、景色は一変して自然が広がっていた。
公園といっても、遊具などはなくベンチがところどころに置いてあるだけだ。こちらも人は少なく、落ち着いた雰囲気で散歩にはうってつけの場所だ。

この街を歩いていると、何だか子供の頃をよく思い出す。地元の商店街にあった駄菓子屋や、よく行っていた公園。そんなところが似ているからなのか、この街で散歩をしながら考え事をするのが好きだ。
ここで出会うものはどれも新しいが、どこか懐かしくて温かい気持ちになる。東京には心を許せる友達は少ないし、毎日1人で忙しい日々と闘っている気持ちになって時折落ち込んでしまう。そんな時に時間を作って外を歩くと、自分が昔から大事にしてきた気持ちや、大事な友達と過ごした日々を思い出すきっかけが見つかって、また新しい気持ちで毎日を過ごせるような気分になる。

心機一転と意気込んで飛び込んだ新生活に、過去を見出すなんてなんだかおかしな話だが、私はそれにとても救われている。子供の頃から身につけてきた「帰る場所」への安心感が似ているのだろうか。そのおかげで私は毎日安心して家に帰り、傷ついた時も街に癒されながら過ごす事ができている。

Written by HINA

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