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先生の夢は?

私は3月まで、東北地方で小学校の先生をしていました。上京のきっかけは、ある日教室で子どもが言った、「先生の夢は?」という一言です。小学校の先生として働くという夢を叶え、充実した毎日を送っていた私でしたが、心の片隅に引っかかっていることがありました。それは、映像や本を制作する世界に関わりたいというもう一つの夢のことです。幼い頃からテレビや本が大好きで、私のそばにはいつもエンターテインメントがありました。映像や本は楽しい気持ちにしてくれるだけではなく、つらいときには何度も助けてくれました。その経験から、自分も映像や言葉を通して誰かの力になれる仕事をしたいと思っていました。
よく大人は子どもに「あなたの夢は?」と、夢があることが当然のように聞きます。しかし、大人は子どもに夢を聞かれたときに答えられるでしょうか。「先生の夢は?」この一言で、「自分には夢があること」に自信を持って挑戦してみようと思うことができました。

そして2023年4月、新たな世界へと足を踏み入れるため上京してきました。映像や本の世界は、新卒者以外で未経験者が正社員として働くことは難しいと求人や様々なサイトの情報を見て知りました。さらに私は大学も教員養成大学を出ており、専門的に映像や本のことを学んだことは一度もありません。そのような状況からまずは少しでも知識を身につけられたり、現場の様子を見られたりする仕事をしてみようと思い、仕事探しを始めました。正社員というこだわりをなくして探してみると意外にも様々な仕事がありました。これまで知らなかった仕事をたくさん知りました。
その中で興味を引いたのが映像制作の場で使う機材をレンタルする仕事でした。制作会社から撮影などで使いたい機材の発注を受け、その機材を運ぶ仕事です。現場でどのような機材が使われているか、どのような人が働いているかなど、興味のあることが知れるのではないかと思い、求人に応募しました。無事、アルバイトとして採用され、現在、その会社で働いています。
実際に働いてみると、機材の種類、扱い方、部品、それぞれの会社の場所など覚えることがたくさんあります。そして予想していた通り、映像の世界で働く「人」にもたくさん出会うことができます。テレビ番組を作る人、映画を作る人、広告を作る人、YouTube動画を作る人・・・「人」に出会うことでこれまでふわふわと想像することしかできていなかった映像の世界がだんだんと輪郭を持ち始めました。
私は「テレビの制作をしたい」「本の編集をしたい」「広告を作りたい」といった、具体的な目標を持って上京してきたわけではありませんでした。それは,映像や本の世界をよく知らなかったからです。だからこそまずはどのような世界か知り、その上で自分は何をしたいのか考えたいと思いました。
今は、まだスタートラインにも立てていません。知りたいことややってみたいことが多く、時間が足りないと焦ることもあります。しかし、そんなときは「二兎追う者は一兎も得ず」ということわざを思い出し、まずはこの場所にしっかり足を付けて学ぼうと自分に言い聞かせます。時間はかかってしまうかもしれませんが、想像の世界の現実を1つ1つはっきりとさせてくことで本当の目標を見つけたいと思います。

あの日、子どもに聞かれた「先生の夢は?」。もう1つの夢を追いかけるきっかけとなった子どもの言葉と眼は忘れません。次にその子に会ったらその問いに答えられるような毎日を送っていきます。

Written by ISHI

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