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旅の言葉 4. ひとつずつ数えてみた、あなたのすること



ボクの知っている女性は、
恋人ができてから趣味などが変わったようだった
それまではそうまでもなかったのに
恋人が好きなビールをいつのまにか好きになっていて
恋人が好きな作家もなぜか、
女性も好ましく思っていたようだった
そういうものかな、とボクは思っていた
(でもあれから、40年ということもある)

新しいジャンルに入る場合
音楽でも美術でも、
そして文学でも
みんなはどうやって入りこんでいくのだろうか
ボク個人の手法とか好みでもあるけど、
ひとつのパターンがあります

大学のころ
ただ漠然とクラシック音楽を聴いていた
ただ単に好きだから、教養もあるかなぐらい
ところが友だちから
ピアニストのホロヴィッツを教えてもらって、一変した
からだの中に、すうっと音が入っていった
音が何のためらいもなく入り、
ベートーヴェンが、モーツァルトが上から目線でなく
おいしいお酒のように、
心地よくしみ込んでいった
それ以来、
ピアノはホロヴィッツを通じて、
曲を、作曲家を広げていった
ひとりではすべての音楽はもうらできないので、
好きな予備のひとをもう一人選んでおいて

その人を通じて、
ピアノはどういうものか知っていった
すると自然と好きな作曲家も現れてきた
そんなふうに
好みのヴァイオリニストや指揮者を通じて、
音楽の幅を広げていった

これは文学でもそうだった
始めてスペイン、ラテンアメリカの文学を読み始めたころ、
おもしろい本もあれば、そうでもないものもあった
同じ作家ですんなりおもしろく読めたのに、
ちがう作品はうまく読んでいけなかった
変だな、と思い
ある日、おもしろかった2つの本の訳者を見て、
同じ人だったので偶然かなと思い、
試しに同じ訳者のちがう本を読んで見ると
これが、スラスラ気持ちよく読めたのだった

これ以来、外国文学で読み始める場合、
好きな翻訳者を見つけて、
その翻訳を通じて本の幅を広げていくと、
最後には必ず好きな作家も現れてきます
その時は、
好きな翻訳者でなくても
読めるようになっているかもしれないし、
原書でも読めるようになっているかもしれない

むかし、三島由紀夫がフランス文学は、
堀口大學さんの訳しか読まない
というのもわかるような気がする
だから本をパラパラ読んで、
じぶんのフィーリングにあった訳本から読んでいったほうがいいみたい
いくら他人がその訳はすごいといわれても、
じぶんの肌にあわないものは気にしなくてもいいだろう
もしどの翻訳者がいいかわからなければ
個人ひとりで、
全集を訳しているものを参考にして見たらいいだろう
全集をひとりで訳している人は、
じぶんの人生をかけてもいる場合が多くて、
思入れがものすごいから
むしろ、翻訳者の方に目が行っちゃうかも



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 ポスターも情緒豊かに。真んなか右側にヴェネツィアの古代アートについて、それからふと右下を見ると、さりげなくヴィヴァルディの四季の記事が載ってあった。




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