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「短編」 続 新しい戦争

 兵は詭道きどうなり (孫子、第一)

 戦争はあざむく道である。国家、国民の生死をかけた戦いには欺かれないためにも、すべからく欺く手練手管を心がけることも肝要でしょう。


 ここはある国の国会議事堂近くにある高層ビルの1室、
ワンフロアーでも相当広い
羽振りの良さがはっきり見て取れた
大きなテーブルの上に足を乗せ、
安楽椅子に寄りかかっているたくましい男は戦闘服を着て、
カーボイハットをかぶり、大きな葉巻をプカプカ、ご機嫌そうだった

 男の背後には、大きな額ぶちに入った「正義」の文字
いっけん組事務所の関係者かなと思われても、違うでしょう、たぶん

「中国でもそうですけど、ロシアではメディア統制されて、あまり情報が流れていないそうです、いまロシア国民はいまどんな暴挙をしているか、知らされていないんです、困ったものです、それでは次のニュースです」

 ときおり聞こえてくるテレビニュース
たくさんのニュース情報が流され、欧米オンリーの情報に汚染されている女性アナウンサーが、とても困ったちゃん

 この国では危険なところに行くのが悪い、
ということでいまもCNNとか
ロシアの相手国のニュース情報をお借りして解説、
初めに、じぶんたちの敵は悪ありきから出発する、
「西欧型自由」を信じるアメリカ資本主義を国是としていた

 テレビを消し、さて、と向き直ったテーブルの前に、
結婚式の帰りかなと思われるようなフロックコートを着て、
きちんと髪を七三分けにしてメガネをかけた男が立っていた
両手をきちんと前にそえている

「ほんとプーチンって、悪いよな」
「と思います」

「国際法を無視して勝手なことしやがる、もっともオレたちも言えたもんじゃないけど、いつも勝手に無視して爆撃し放題、いいときばかりの国際法、いいときばかりの国連のにしき御旗みはたのもとにってね、ふふふ」
「ふふふ」

「プーチンはお前たちのように、ウクライナをカイライ政権にしたいのかな」
「ですかね」

「大衆社会は中身がなくても見た目のいいうわつらと、情報統制が命というから、お前たちの国はちゃんとやってるか」
「大丈夫だと思います、公共放送SMKは世渡り上手で、テレビ夕日は肝心なときはいつも寝たふりして、あとの三局は手なづけています、あと他局からのけ者にされたかっこうのテレビ経済が、こんなときに変に気骨があったりして、でもご安心してください、名の通り財界人に圧力かければなんとかなります」

「そう、ところで用心棒代、日本語で平たく言えばミカジメ料と言うそうだが、今年からちゃんと上乗せしているだろうな」
「ハイ抜かりなく、思いやり予算という名目で、今年から年に2110億円、5年間で1兆円超となります」

「よく国民が怒らないな」
「ええ、風邪ウィルス騒動のどさくさで決めて、誰も関心ありませんよ、一度テレビで話題になったときはひゃっとしましたけど、タレントのえなりくんが、国を守ってくれるならお金をやってもいいじゃないですか、他の評論家も武器を買うよりも安上がりでいいみたい、なんて」

「戦争終っての文人上がりの政権は、古今東西、弱腰になるというのは本当だな、なんでもお金で解決しようと思いやがって、こんなことやってたら誰からも信用されないし、やがて肝心なときは誰も助けてくれないぞ、ほんと他人ごとみたいだけど、いつまでもあると思うな、親とお金と進駐軍ってな、アハハハ」
「アハハハ」

 アハハハハ アハハハハ 
 アハハハハ


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