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おーい、龍(ドラゴン)、どこにいるんだ。出てこーい。

  朱泙漫(しゅひょうまん)は竜をほうる
 ことを支離益(しりえき)に学ぶ。千金の
 家をつくし、三年にして技(ぎ)成る。
 しかもその巧を用うる所なかりき。
 「荘子 第三十二」



 むかしの中国に、こんな話があります。
  
 龍退治する男の話。その男は勇壮武装で、とても腕に自信があった。また武勇を求めるやつらしく、向こう敵なしだった。それでもその男、じぶんの住んでる身のまわりではあきたらず、もう他に敵はいないのか、そういって全国を歩きまわって敵を求めたそうだ。

  そんなある日。龍、つまりドラゴンの話を聞いた。なんでもすごい、ドラゴンというぐらいだから、人間はひとかたまりのない。勝てるやつなんていない、この世にいない。
 そう聞いた男、いてもたってもいられない。どうにか出どころをつきあてて話を聞いたら、とてもとても現在のじぶん、最強の男だと思っていたじぶんでもかないっこない。そこで、なんでもここら辺の近くの山ふもとに、龍退治の使い手がいるらしいとわかった。聞いた、その男はさっそく入門し、高い金を払って、激しい修行をへて、やっと免許皆伝となった。

  
 それでも、この免許皆伝だけじゃ不足だと思ったので、師匠に教えてもらった龍退治の秘伝を持つ男のところへ、さらに修行に出かけた。ここでも三年、あらゆる剣術をマスター、当然のように月謝も払った。
 とうとう、これで龍退治のための秘術を学んで、晴れて男は龍さがしに出かけたのだった。いまのヨーロッパがふたつみっつ、入りそうな中国全土を龍さがしに奔走したんだ。
 しかし、なかなか龍が見つからない。肝心の龍がいないのじゃ、どうしようもない。龍のうわさを聞いたら、そちらへこちらへ。龍の名前がしたら、わざわざ遠いところまで出かけていった。お頼みもうすなどといって、闘うかどうかはわからない、龍の姿を追いかけていったそうだ。

 
 行っても行ってもいない。さがしても追いかけても、捕らえきれない龍。何年も何年も追いかけていった。地の果てまで行っても、やっぱりいない。最後に、男は山に登った。どこの山か知らないけど、高い山の頂きに立って剣を抜き、こういったそうだ。
「おーい、龍。出てこい」


 おもしろい話があったものだ。



   














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