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 空は青く、青く広がって


 窓のなかから見える空は青く広がって、
ときおり入りこむ心地よい風が畳の上に寝ころがっているボクを爽やかにした

思いだすあの頃
いまでは遠くになった大学生のとき、
九州の下宿先の二階で同じく寝転がって、入学間もないころ開けた窓の外から初夏の陽ざしを浴びていたら、ときおり下宿の下で、二人の女性の語り合う声がしてきた

なんだろう、
ふと下を見れば、二人のおば様が田畑の野良仕事をやめて、日陰になった壁に寄り添ってひと休みしていた

「娘しゃん、帰って来なしゃったとよ」
なんでも、近くに住む若い女性が駆け落ちして、実家に帰って来たことを言っているらしい
「ほんとね」
ともう一人のおば様が答えていた

「何言っても聞かないもん」
「そう今は何言ってもだめ」

「ほっとかんば、いかん」
「もうほっとかんね」

「のぼせとんねー」
「ほんと、のぼせとお」

 空は青く、青く広がって、
あの頃と同じように
ときおり部屋に忍びこむ心地よい風がボクを爽やかにして


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