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【インド】潔癖の極みタージ・マハル

宿から10分ほど歩くとすぐタージ・マハルだ。穴場感はないが必ず見た方がいいと何人もに勧められていた。

定番には定番で臨むことにする。バラナシで買ったサリーを取り出し、ガンジス河でよく見た女性たちの着付けを思い出しながら、YouTubeの解説を横目でみつつ、何とか着付けを終える。赤は既婚女性の証でインドの女の子の憧れ。補色の緑にインド人の好きな金色、この2色はインドの旗の色でもある。キリスト教のクリスマスっぽくない?と訝る私に、全くそんなことはない、インドでは正統な色だと店員に太鼓判を押されたので、少し値は張ったが3,500ルピー(5,600円)で購入していた。

ガイドが引っきりなしに営業をかけてくる。その中で、現金ではなく唯一手元に残ったマスターカードの使えるチケット売り場を教えてくれたガイドのスマートさを気に入り、雇うことにする。

入口の身体検査で、女性の軍人から、とっても良いサリーね、シルクで質もいいわ、と褒められて嬉しくなる。サリーはピンからキリまであり、あまりにも安物を買うと一定のインド人からは軽蔑されると聞く。

幾何学模様を施された赤茶色の正門を抜けると、左右対称の白亜のタージ・マハルが目に飛び込んできた。青空に映える凛とした美しさに思わず歓声を上げてしまう。

ガイドに言われて目を凝らすと、確かに正面を囲むようにぐるっとアラビア文字が描かれている。これだけヒンドゥー教が浸透した国で、随一の知名度を誇る世界遺産はイスラム教の建物なのだ。毎週金曜日はイスラム教徒のお祈りのため閉鎖されるという。

ここからガイドが本領発揮し始める。私のスマホ(HUAWEI P20 Leicaカメラ搭載)を持って大きな身体を駆使して橋の下に入り込んだり、腹這いになったり、ベンチの脚を利用してフレームを作ったり、わざわざ他の観光客からサングラスを借りて映り込みを撮ったり。パノラマ機能を使って分身の術を披露されたときは驚いた。言われるがままにポーズをとっていく。周りを見ると中国人やアラブ人も他人を気にせずなりきりポーズを撮っているので、恥ずかしさを捨てる。
ナルシストの極みで恐縮ながら、一部の写真を掲載する。実際はもっと多くのポージング写真が残っている。


離れて見るとその過度に人工的な左右対称性が、本体に近づくと隅々まで計算し尽された几帳面さが、病的な潔癖さを感じさせる。石の冷たい透明感がそこに拍車をかける。
外壁も内壁もびっしりと精密な石の彫刻で埋め尽くされ、それが色づいている部分は全て天然石に由るもの。マハル妃の傾城の美女ぶりも相当なものだと恐れ入る。


背後にあるヤムナー河の対岸には、ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンが愛妃の墓と向かい合う形で自らの墓を建てようと意図していた場所があり、通称ブラック・タージと呼ばれている。息子に幽閉されて叶わぬ夢となり、今は白いタージ・マハルの1階の妃の棺の隣に彼の棺が置かれている(実際の遺体は地下)。
ここが唯一、タージ・マハルで非対称になっている場所である。

有能ガイドに別れを告げ、長距離バス乗り場に向かう。


この度初めてサポートして頂いて、めちゃくちゃ嬉しくてやる気が倍増しました。サポートしてくださる方のお心意気に感謝です。