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ハンチントンにおける日本文明救世主論(弁護士会のMLでのやりとりから)

弁護士会のなかには、親中、侮日を信条として世界を論じる人が少なくありません。そういう人たちは、ひたすら日本の文明的位置づけを蔑視し、古代においては、中国圏に属する周辺国としての位置づけを強調し、近代においては西欧の模倣者としての位置づけを強調します。以下は、今、弁護士会のあるMLで行っている、ハンチントンの「文明の衝突」における日本文明の位置づけに関する議論ですが、その発端は、安倍政権による反イスラム国同盟支援に対する彼らからの批判にありました。
「>」は親中・侮日派の議論であり、■は僕の議論です。


> 前近代の日本は,中国に対して,どのように「独自の文明圏」だったのでしょうか。
> 確か,ハンチントンの著作では,「日本文明」をハイチ(ブードゥー教の祖国)と同視していましたが。

■ ハンチントンの日本に関する見解は、『文明の衝突』日本語版及び集英社新書『文明の衝突 21世紀の日本』において語られています。ユダヤ系アメリカ人であるハンチントンは、セム系一神教文明(ユダヤ、キリスト、イスラム)と異なる文明(ヒンドゥ、儒教、神道)に連なる文明の一つ(中国の文明と明らかに異なる独自の文明)として21世紀の秩序形成のうえで、大きな役割『文明の衝突 21世紀の日本』において語られています。ユダヤ系アメリカ人であるハンチントンは、セム系一神教文明(ユダヤ、キリスト、イスム)と異なる文明(ヒンドゥ、儒教、神道)に連なる文明の一つ(中国の文明と明らかに異なる独自の文明)として21世紀の秩序形成のうえで、大きな役割を果たすことを日本に期待しています。

「文明の衝突というテーゼは、日本にとって重要な二つの意味がある。第一に、それが日本は独自の文明をもつかどうかという疑問をかきたてたことである。オズワルド・シュペングラーを含む少数の文明史家が主張するところによれば、日本が独自の文明をもつようになったのは紀元5世紀ごろだったという。私がその立場をとるのは、日本の文明が基本的な側面で中国の文明と異なるからである。それに加えて、日本が明らかに前世紀に近代化をとげた一方で、日本の文明と文化は西欧のそれと異なったままである。日本は近代化されたが、西欧にならなかったのだ。
 第二に、世界のすべての主要な文明には、2ヶ国ないしそれ以上の国々が含まれている。日本がユニークなのは、日本国と日本文明が合致しているからである。そのことによって日本は孤立しており、世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない」。

■ ハンチントンは、日本は独自の文明であり、しかも世界の主要文明のひとつだとしています。よくしられているように、ハンチントンは、世界の文明を7つないし8つの範疇にわけています。
1つ。西欧アメリカ文明(カトリック、プロテスタント)
2つ。東欧ロシア文明(東方正教会)
3つ。イスラム文明(イスラム教)
4つ。インド文明(ヒンドゥー教)
5つ。中国文明(儒教、道鏡)
6つ。日本文明(神道)
7つ。南米文明(カトリック、土着信仰)
8つ。アフリカ文明(土着信仰)
ハンチントンが7つないし8つとしているのは、アフリカ文明は現在のところ文明の統合原理がなく、将来的に期待される文明としているためです。(僕は、ユダヤ教を欠落させている点で不満があり、西洋文明は、アメリカを含め、カトリック・プロテスタント・ユダヤ教文明とすべきだと考えています)。

●●さんが「ハイチ(ヴードーの祖国)と同視している」という文脈は、正しくは、西欧文明と別の独立した文明という意味においてであり、それ以上の意味はありません。そういう意味において●●さんの引用は、日本文明に対する嫌悪と蔑視に支えられたヘイトスピーチ的偏見を色濃くもっていることを指摘しておきたいと思います。

■ むしろ、ハンチントンは、独自の文明である日本文明に、21世紀の秩序形成における重要な役割を期待しています。おべんちゃら抜きに、「文明の衝突」から世界を救う希望を日本に対して抱いているのです。

ハンチントンは日本の文明の特殊性として「日本国=日本文明」であり、一国一文明という独自の特徴をもっており、その意味において、他の文明から孤立しているとします。そのことは、当然、長所と短所があります。「文化が提携をうながす世界にあって、日本は、現在アメリカとイギリス、フランスとドイツ、ロシアとギリシア、中国とシンガポールの間に存在するような、緊密な文化的パートナーシップを結べないのである。日本の他国との関係は文化的な紐帯ではなく、安全保障および経済的な利害によって形成されることになる。しかし、それと同時に、日本は自国の利益のみを顧慮して行動することもでき、他国と同じ文化を共有することから生ずる義務に縛られることがない。その意味で、日本は他の国々が持ちえない行動の自由をほしいままにできる」

9・11以後、ハンチントンは、日本の重要性をより強く感じるようになり、ダイヤモンド社から出ている『引き裂かれる世界』では、日米関係の強化を主張し、日本が文明の衝突を緩和する役割を担うことに期待を表明しています。

最後になりますが、俯瞰的にみれば、安倍内閣は、ハンチントンが期待する21世紀の世界秩序の形成における日本の役割を果たすべく、着々と地歩を固めつつあるとみえます。原発回帰等、個別の政策については、異論もあるところですが、現時点において、僕が安倍政権を支持しているのは、そうしたハンチントン的ビック・ビジョンに照らして、日本の果たすべき役割を意図しているように思えるからです。
まさに、そこが●●さんと違う、最大の点でしょう。●●さんは、或いは、中国文明こそが、21世紀の混沌を救う世界秩序形成の主催者だとみているようにも思えますが、僕が激しく反発するのは、まさにそうした世界観です。環境、経済、政治、文化のいずれの面においても、僕は中国文明の世界化を激しく嫌悪し、その悪夢に向けた一切の動きを憎悪していることを告白いたします。

(H27/04/05)

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