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「氾濫するPR」や「PR漬け社会」というワードから考える、メディアから見たPR業界

週刊東洋経済で、珍しく「PR」が特集されているというので、久しぶりに紙の東洋経済を購入してみました。

今回、個人的にちょっと気になっていたのが、「氾濫するPR」という特集タイトル。
メインの記事も「PR漬け社会」という、ちょっとPRに対してネガティブなワード選択なんですよね、

で、いろいろと記事を読んでみた結果。
ビジネスメディアから見るとこういう風に見えるんだなと言うのが納得したのでメモっておきたいと思います。

まず、最大の視点が業界の市場規模に重点が置かれている点。
マスメディアの広告価値が下がる一方で、PR業界の市場規模が大きくなっているから、マスメディアの広告からPRに情報流通の主役が交代しているという文脈みたいです。

さらに、SNSとかオウンドメディア、PRTIMESのようなプレスリリースサービスの登場により、企業が自ら情報発信する行為も「PR」と定義したことで、PRの市場が急拡大して「氾濫するPR」や「PR漬け社会」という印象になったということの模様。

ただ、個人的には、おそらく日本におけるPR業界の存在感が今まで薄すぎたというのが正直なところなんじゃないかなと思ったりしています。
昔、高広さんに言われてなるほどなと思ったんですが、マスメディア時代は「PR」的な施策も電通や博報堂などの広告代理店が実施してたんですよね。

それが最近はベクトルやサニーサイドアップのようなPRをメインとする代理店も存在感を増してきているので、業界としてのPR業界の存在感も増してきてるんですが、東洋経済の記事にもあるように、実はベクトルも「広告」を扱っているから売上が大きくなっているのが実態だったりするわけです。

10年ぐらい前に、LENOVOさんにCESに招待いただいた時に、PR会社のフライシュマン・ヒラードがブロガーの対応をしていて、自らをPR会社ではなくデジタルエージェンシーと定義していたことを思い出しました。

日本でも、7年前に「ノンクレジット記事広告」という記事広告と明示しないステマ記事が、大問題となりそれを主力商品として販売していたベクトルグループが謝罪する事態に発展したことすらあったんです。

当時、歴史あるPR業界の方からすると、記事広告の販売を主力にするベクトルグループはPR会社では異質な存在という発言をされる方も少なくなかったことを覚えてます。

私も前職ではソーシャルメディアを中心としたPR会社と自分達を認識してましたが、結果的に成果を出すために広告も取り扱うことになりました。

また、マーケティング協会の戦略PRについての議論の際に、今ファミリーマートCMOの足立さんが、戦略PRはマーケティングトップの仕事だとはっきり明言されていたのを良く覚えています。

もはやPRと広告の境界線は溶けてしまっているんですよね。

だからこそ、メルカリはPRに経営トップの小泉さんがコミットし続けているんだと思います。

でも、メディアの方の視点からすると、従来は情報流通の主導権は自分達マスメディアだったり、マス広告だったりしたのが、PR代理店の台頭やオウンドメディア的なものの登場によって自分達の主導権が奪われている、という風に見えるんだなと言うのが記事を読んでみた印象でした。

ただ、個人的に思うのは、実際に起こっているのはそういうことではなくて、ネット上の情報が急増した結果、情報流通の主導者が消費者側に移ったというのが本質だと思うんですよね。

で、本来のPRの「パブリックリレーション」という発想自体の重要性は昔も今も変わらなくて、その「パブリックリレーション」のやり方が、広告やマスメディアPR一辺倒から多様にせざるをえなくなった、と企業の方々は考えないといけないと思います。

別に広告代理店とか既存のマスメディアから、PR代理店とかオウンドメディアに主導権が移ったわけではなく、選択肢がめちゃめちゃ多様になっただけなわけです。

そういう意味で、今回の東洋経済さんの特集を読んで、今は広告よりPRだから、広告代理店ではなくPR代理店に頼もう、とか、オウンドメディアで広告の代わりをしよう、と考えるのはそれはそれで危険なんじゃないかなと感じてしまった次第です。

もちろん、PRの重要性は今も昔も変わらないんですが、その重要性が相対的に大きくなっているのは間違いありません。
そういう視点でこの特集を読んでいただくと、PR業界全体の動向が俯瞰的に学べて理解が深まる気がします。

ちなみに、東洋経済さんの特集の後半のオウンドツールのパートでは、noteについてもかなりページ数をさいてご説明頂いているので、興味がある方は是非ごらんください。


追伸
ちなみに、タイムリーに来週火曜日は、「広報やPRに求められる新しい役割」をテーマに等身大の企業広報を開催しますので、このあたりの印象も矢嶋さんと今井さんに聞いてみたいなと思っております。
タイミングが合う方は是非どうぞ。


ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。