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長時間労働との向き合い方:燕三条の町工場の一例

製造業は長時間労働なのでしょうか?
確かに以前は長時間労働でした。私が町工場で働き始めた30年くらい前は、週6日、8時間+残業2~3時間が当たり前でした。更に忙しくなると日曜も出勤していました。およそ年間3000時間位働いていたということでしょうか。
製造業の場合、加工数×単価=売上 となっているため、加工数が増えれば売上も増えていきました。加工数を増やすためには加工時間を長くする必要があるため、おのずと長時間労働になっていったのです。

現在の製造業の働き方
現在では働き方改革の影響で、残業時間が制限されています。
法律で定められた労働時間の限度:1日 8時間 1週 40時間
時間外労働の上限:⽉45時間・年360時間
52週×40時間+360時間=2440時間
という計算になります。
細かく言えば、5日間の有給休暇が義務付けられているので、-40時間、2400時間になります。(祝日等々で休みを増やしていけば更に時間は減りますが)
年間3000時間働いていたころと比べると、上限でも20%削減されたことになります。
現状はどうでしょうか。
昨年度のトクニ工業の場合、年間の時間外労働の平均が217時間、平均有給休暇取得日数が10日となっています。
52週×40時間+217時間ー10日×8時間=2217時間
という計算になります。
1年間に占める労働時間の割合としては
365日×24時間=8760時間
2217÷8760=25.3%
通勤時間などもありますからやや強引な気もしますが、およそ4分の1を労働に割いているということになります。

働き方改革の影響などもあり、1年間の労働時間はおよそ25%削減されました。それにもかかわらず、会社の売上や利益は維持しなければなりません。
どうやって減った25%分の労働時間を補って、売上や利益を維持しているのでしょう。

先ほども書きましたが、製造業の場合、
加工数×単価=売上 となっています。
労働時間が減れば、加工数も減少し、同じ単価であれば売上も減少します。
加工数の減少を受け入れつつ、売上・利益を維持するためには、
①単価を上げる
②生産設備を活かして補う
③効率よく働く

単価を上げる
電気・材料・購入品など、様々なものが高騰している今日、活動を維持していくためには加工単価を上げていく必要があります。但し好き放題値上げできるわけではなく、競合他社もいるわけですから取引先にも納得していただける価格が望ましいわけです。法外な値上げは論外として、市場の動向も踏まえたうえでの値上げは必要だと思います。また、必要な値上げを怠って経営が立ち行かなくなっては、働いている従業員はもとより、破綻することによって加工先を失ってしまう取引先にも迷惑が掛かってしまいます。
生活費が高騰している今日では、物価の変動に合わせた人件費の値上げも必要になってきます。働いてくれる人がいなければ製造業は成り立たないのですから。

生産設備を活かして補う
早いだけが新しい機械の魅力というわけではありません。年々スマホが便利になっていくように、専用の加工機も更新するごとに使い勝手が良くなっていきます。特に、切断工程で使われるレーザーやタレットパンチプレスなどは、プログラムと材料をセットすれば、スタッフが帰った後の夜間運転も可能です。
スタッフが常に機械に指示し続けなければならない機械でも、新しい機械では加工精度が上がっていたり、加工データの取り込み方が進化していたりと効率的に作業できるようになっています。再現性を増していくことで、リピート注文の際の時間短縮を図ることが出来ます。

効率よく働く
個人差もありますし、企業文化などによる差異もあるとは思います。しかし、一日一日を実直に作業しているスタッフは、1年後、5年後、10年後と、確実にスキルを上げていきます。技術が向上してくれば、おのずと効率も良くなるものです。教えられて伸びる人もいれば、自分で創意工夫しながら発見していく人もいます。
製造業の場合、やはり一つ一つものづくりをして成果を出していかなければならないため、裏技があるわけではありません。正攻法で研鑽を積むのが、効率よく働くコツです。
それとリズム。長距離走のようなものですから、毎日8時間、もしくは9時間。週5日働いて、2日休息する。自分に無理のないペースで走り続けるのが肝要だと思います。但し、周りの人に迷惑をかけないよう、協調性を持って。

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