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「なな」⑥「おにぎり」

今回は「なな」とおにぎりの思い出を書いてみたいと思います。

「なな」と付き合ってから、財布はすべて「なな」に任せていました。

毎月の給料日に「なな」と同額のお金を、1つ財布に入れて、あとは、すべて「なな」任せです。

財布の中身が少なくなると、「なな」がおにぎり作って持って来てくれました。

そのままずっとアパートに過ごすときもありました。

始めて「なな」がおにぎりをつくってきてくれた時のことです。

「私さあ、不器用だから恥ずかしいんだよね⋯」そう言っておにぎりをだしてくれました。

私は、その、おにぎりを見た時にビックリしました。

不格好だからではありません。

「なな」の作ってくれた、おにぎりは、軟式野球はボールよりも少し大き目で、海苔で全体的を巻いてありました。

その、おにぎりは、私の母親の作ってくれたおにぎりとそっくりでした。

だから、とてもビックリしたのです。

まさか、母親と同じおにぎりを「なな」が作ってくれるとは、夢にも思いませんでした。

「なな」にも言いました。

「あのさあ。このおにぎりさあ」

「やっぱ。不格好?不格好じゃやだよね?」

と言う「なな」に。

「そうじゃなくてさあ。家の母親が作ってくれるおにぎりと同じなんだよね。だから、嬉しくってさ」

そう言うと。

「なな」は、「へぇーそうなんだ。お母さんと同じなんだね。私もなんか嬉しい」

と言って、いつもの満面の笑顔を私に向けました。

おにぎりの具も、鰹節に梅干し、そして、シャケと母親と同じ物でした。

「なな」のおにぎりを食べていると、なんだか懐かしくなってきました。

それからは、動物園に行く時も、遊園地へ行く時も「なな」特製のおにぎりを持って行くのが定番になりました。

「なな」と結婚しても、母親の味を味わえるんだな。

そう思うと、とても幸せな気分になれました。

                                                                    つづく

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