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ハインリッヒ・シュネーの『「満州国」見聞記』を読む

最近ハインリッヒ・シュネーの『「満州国」見聞記』という本を読んでいる(上記の本)。元々近代の日本及びアジアの歴史には興味があるのでそれ関連の本はいくつか読んでいるけどこの本は特に面白い。まだ読み途中だが他の本にはない魅力があると思う。

著者であるシュネーは満州の実態調査のために派遣されたリットン調査団の委員でドイツの代表である。他にもイギリスやアメリカ、イタリア、フランスの計5か国の委員がいて、本書ではそのリットン調査団の旅行の様子が描かれる。

本書の何が面白いのかというと無駄な記述が多い点である。本題とそこまで関係のない旅の途中の景色や人物の印象が詳細に描かれていたり、ちょっとした無駄話が細かく記述されている。記述内容としては事実なんだけど「それを取り上げちゃうんだ…w」と思わず笑ってしまうような描写が多々あるのだ。

具体例を出すとフランスの委員であるクローデル将軍の描写が面白い。クローデル将軍は英語が苦手だからたまにフランス語で会話していたり、食事の時は他の4人の委員は一緒に食べるのにクローデル将軍だけは通訳の医者と2人で食べていたりしたらしい。事実ではあるけどこの事実を取り上げること自体が将軍をいじっているように読めてしまう(もしくは揶揄している)。そういった意図がない可能性も考えられるけど、だとしてもシュネーの視点は独特で面白い。

他の歴史本を読んでいると教科書のように事件の内容や歴史的背景だけが語られていたりする。それはそれで面白いけどシュネーくらい無駄な記述が多い方が当時の空気感が伝わってきてより歴史に入り込める気がするので面白い。シュネーの感想自体は少ないが取り上げる事実に彼の絶妙な嫌らしさが出てて個人的には好み。彼のユーモアある一面が浮き彫りになっていると思う。

事実を列挙するだけでここまで個性が出せるんだなぁという発見があった。これを機に見聞記や日記、旅行記なども色々読んでみようかなと思う。

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