『ささやくように恋を唄う』を読んだ感想(2023/1/15の日記)

※『ささやくように恋を唄う』の1巻のネタバレがあるので注意

『ささやくように恋を唄う』という作品を1巻だけ読んだ。百合漫画総選挙という企画で1位をとった作品らしい。その企画自体はどの程度の規模か知らないけど『やがて君になる』を抜いて1位を獲得したということで興味を持った。

『やがて君になる』は本当に好きな作品だ。『好き』という感情をよくある使われ方で捉えるんじゃなくて独自の繊細な感情として描いている点が非常に良かった。こういう言語化できなそうなレベルまでそういった概念を細分化していく作品はどうしても好んでしまう。

そして今回読んだ『ささやくように恋を唄う』も非常に良かった。途中までは「よくある感じかなー」と思っていたけどラストの告白シーンの後で「私の好きは先輩のと違う」とモノローグで語る場面で神漫画だと確信した。この瞬間ガッツポーズ、ショーシャンクで脱獄したときのような解放感を味わった。

「女性に好意を向けられるのはちょっと……」とかじゃなくて好きという意味が違うというモノローグ。この時点でこれは繊細な感情扱う作品なのだろうということが伝わってくる。お互いに似たような感情を向けているんだけどそこに絶妙な齟齬がある。そのディスコミュニケーションが個人的にはとても好きだ。

百合漫画は男女の恋愛作品よりもそういった繊細な差異について描くから好きな作品が多いのかもしれない。作品によるかもしれないけど男女恋愛の作品だとどうしても恋愛をするということが前提かつ常識となりすぎてしまっていて相手を想うという感情について「本当に恋愛対象として相手のことが好きなんだろうか?」という悩みが描きづらいような気がする。

さらに言えばそういった感情が性欲にまとめられてしまい雑に処理されてしまうという面もあると思う(もちろん作品による)。だからこそ描けるものもあると思うけど個人的には百合作品的な作風の方が好きではある。

『ささやくように恋を唄う』はとても良かったのでそのうち読もうと思う。

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