<ゲームの売れ行きアップ方法>第5回:売れるためにはグラフィックを軽視してはいけない

 インディーゲーム開発者やパブリッシャー向けに「ゲームのクオリティアップや売れ行きを増やす方法」を解説していくシリーズ。

 第5回は「売れるためにはグラフィックを軽視してはいけない」です。

 

<ゲームの売れ行きアップ方法>第5回:売れるためにはグラフィックを軽視してはいけない


 グラフィックはゲームプレイ中にずっと見る事になるものです。
 また、購入を検討している人にとっては「そのゲームを欲しくなるかどうか?」を左右する大きな要素の一つでもあります。
 しかし、インディーゲームではそのグラフィックを軽視している作品が少なくありません。

 ドット絵のゲームの場合、色数がやけに少なすぎる作品も多く、動いている時はともかく静止している時はずいぶんとチープなグラフィックで購入意欲が大きく落とされる作品が多いです。
 
 開発者にとっては色数が少ない、チープなグラフィックの方が開発期間を短くできるメリットがあるのでしょうが、ソフトを購入する一般ユーザーからすれば「プレイ中ずっと目にする事になるグラフィックがしょぼいので購入意欲が大きく落ちてしまう」という風に映ります。
 またそれでも購入したユーザーにとっても「グラフィックがチープなのでプレイ中の楽しさがずいぶんと減ってしまう」という事になります。

 昨今のインディーゲームでわりと多いのが、「ドット絵の色数を少なくしてそのかわりにアニメーションパターンをかなりリッチにして滑らかに動かす」という物。
 それよりも「静止画段階でも見栄えする程度には色数を増やす(画面全体で見た場合はもちろん、キャラ単位で見た場合でも)」の方が売れ行きアップにつながります。
 
 動いている時は滑らかな動きで見映えが良くても、動いていない静止画で色数が少ない事が原因でチープな印象をユーザーに与えてしまうと、ストアでそのゲームを買う時にわりと購入意欲を低下させてしまうので注意してください。
 ストアで購入する時は静止画のスクリーンショットも見る事が多く、その時に色数が少ないせいで絵面がチープだとずいぶんと購入意欲が低下します。

 「画面に対してプレイヤーキャラがずいぶんと小さい」というアクションゲームもインディーゲームではわりと多く、この手のはチープな感じがして購入意欲を落としてしまいがちです。
 画面に対してプレイヤーキャラが小さいとマップが広い範囲を見えやすくなったり、ボス戦でよりボスを巨大に感じさせるというメリットもありますが、「自キャラの表示が小さくてプレイ中ずっとしょぼい感じがする」という大きなデメリットがあります。
 昔のアクションゲームを参考に、「プレイヤーキャラは画面に対してある程度のサイズで表示する」をして見映えを良くしましょう。

 昔のゲームは4:3画面でしたが、昔と同じキャラサイズ(画面に対する比率)で16:9の画面で作ると左右の範囲が増えているせいでキャラが小さく感じる事もあります。
 4:3の時よりやや大きめにしたり、画面の左側や右側はパラメーターを表示するエリアにして4:3画面に近づけるという手もありでしょう。

 
 また、技術的にはレベルが高くても、「ゲーム全体のグラフィックの雰囲気が悪かったり、くどいデザインになっている」というのも多いです。
 インディーゲームは「確かに個性的ではあるが、グラフィックデザインが悪い」「雰囲気が暗い」「色彩感覚がどぎつい」というのも少なくありません。
 「それこそインディーゲームだ」というご意見ももちろんあるでしょう。
 本来はインディーゲームは売れ行きの事などあまり気にせず自由な絵柄やゲーム性で作っていくべきです。
 しかし、ユーザーからすれば「グラフィックの魅力が落ちると購入意欲も大きく低下してしまう」というのもまた事実なのです。
 

「キャラクターが魅力的であるかどうか」もソフトの購入意欲にかなり影響を与えます。
「個性的だけど魅力的か疑問なキャラクターデザイン」になっていないかはインディーゲーム開発者は気をつけましょう。
  
 海外のキャラクターデザインは昨今は日本のアニメ的な要素を取り入れて魅力的なキャラクターデザインになっているのもありますが、昔の洋ゲーのような「個性的だけどいまいちなデザイン」というキャラデザインが未だにわりと見かけます。
 日本製のゲームでも、「単にキャラクターデザインのスキルが低くてキャラクターがいまいち魅力が薄い感じになっている」というのもあります。
 「単純に作画のクオリティが低い」や「画力はあってもキャラクターデザイナーの絵柄が一般受けしにくい」というのも。

 余談ですが、3DダンジョンRPGの残月の鎖宮というソフトはプレイヤーキャラのキャラデザインがやや一般受けしにくいデザインに感じました。
 このゲームはアップデートで今のキャラデザインとはまた違うキャラデザイナーが描かれたプレイヤーキャライラストも選択できるようになると、今後のセールの時に売れ行きが増えるのではと思います。
 「アップデートで新たなキャラクターグラフィックを追加しました」みたいにゲーム系ニュースサイトで取り上げてもらい、それにあわせてセールも行ったり。
 ダンジョンRPG系作品はデザイナー一人だけでなく複数のデザイナーでプレイヤー好みのキャラ画像を選択できるようにした方が売れやすくなると思います。


 このような感じで、ソフトを買うユーザー側からすれば

・ドット絵のゲームでグラフィックがチープすぎる
・グラフィックの雰囲気が好きになれない
・キャラクターデザインが魅力的とは言えない

という作品は、いずれも購入意欲がずいぶん落とされるのです。
 3D系のゲームもグラフィックの魅力や雰囲気でやはり売れ行きが変わってきます。
 
 インディーゲームではない普通のゲームを昔から開発してきた人達は、これらがソフトの売れ行きにかなり影響を与えるのを良く知っていました。

だからこそ
・ドット絵系はグラフィックをきちんと作りこむ
・3D系のゲームも魅力的なグラフィックにする
・グラフィック全体の雰囲気が多くの人に受けやすい感じになっているか?
・キャラクターデザインはきちんと魅力のあるデザインになっているか?

などをグラフィック担当のスタッフ達は本当に気を付けて開発していたのです。
 

 また、ここまで書いてきた事と真逆に感じるでしょうが、「グラフィックは魅力的にすべきだが、あまりにも頑張りすぎるのも考えもの」というのがあります。
 グラフィックは頑張れば頑張るほど制作期間が延びてコストも増えていきます。
 利益をきちんと出すためには魅力的なグラフィックにしつつも「手を抜くところはしっかり手を抜く」や「ほどほどのクオリティで満足してそこで止める」というので開発コストをある程度までに抑えるのは考えておくべきです。

 インディーゲームにおいてはグラフィックが過剰に頑張りすぎな作品もたまに見かけます。
 アニメーションパターンが過剰すぎたり、背景の書き込みが必要以上にやりすぎだったり。
 そういうゲームも素晴らしいと言えば素晴らしいのですが、「制作コストを考えてグラフィックを作っていく」というのをやっていかないと採算が取れにくくなり、長くゲーム制作で食べていくのは難しくなります。
 2Dはもちろん3D系のグラフィックのゲームも予算を考えてほどほどで止めるようにしましょう。

 背景を描きこみすぎたゲームは「画面内の情報量が多すぎて視認性が悪化したり、プレイしていて脳が疲れてしまう」というのもあります。
 背景は本来は添え物のはずですが、背景を描きこみすぎて背景が自己主張しだしてしまうとキャラの視認性が悪くなったり、プレイ中に背景に無駄に意識がいってしまったり、プレイしていて脳が疲れるゲームになってしまいます。
 視認性の悪さによってゲームの楽しさや売れ行きがずいぶんと低下する事はまた別の回でもしっかりとお話しします。

 

このシリーズは私のnoteの「ゲームの売れ行きアップ方法」のマガジンで連載しています。
第1回から順番にお読みください。


次回は第6回「ファミコン風グラフィックよりスーパーファミコン風グラフィックの方が今はおすすめな理由」です。