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脳疲労がかなり進んだ状態では脳の各所が破壊された状態になっているという話 <精神疾患の治療のための学びの記事>

記事の見出し画像はみんなのフォトギャラリーから、中目黒土産店さんの画像を使用させていただきました。

https://note.com/nakameguromt/

今回も文章量が多い記事のため、時間がある時にゆっくりと読んでください。


前回の記事の「精神疾患と脳疲労の密接な関係 (脳疲労を甘くみてはいけないという話)」では、脳疲労が進みすぎると脳の各所が正常に機能しなくなってしまい、やがて精神疾患に至るという話をしました。


今回はその『脳疲労』についてもっと深堀りして語りたいと思います。
脳疲労がかなり進むと、一体脳はどのような状態になっているのか?」という話です。
結構ショッキングな内容かもしれません。

今現在、自分や家族、知り合いが精神疾患で苦しんでいる方や、「最近なんだか心や体の調子がずっとおかしい」という方向けの、脳機能の回復を助けるための学習記事となっています。
脳疲労をきちんと解消させる事は脳の機能回復につながり、心や体に起きる不調を減らす事になります。

また今現在はそういう心や体の不調が無い人も、時間がある時に良かったら読んでみてください。
脳疲労を溜めない生活をする事がいかに自分や家族の心や体の健康のために大事かがわかるでしょう。


<脳疲労がかなり進んだ状態では、脳が大きく壊れた状態になってしまう>

脳疲労がかなり進んだ脳は、動物実験でのネズミや猿、その他の動物の脳の解剖研究でも、人間での観察や測定研究でも、いずれの場合にせよ

・脳の神経組織で傷んだり、死滅(消滅)しているのが多く確認される
・神経組織以外にも、脳の色々な細胞が損傷したり一部死滅している
・脳の血管も健全な状態とは別物のようにぼろぼろになっている箇所があちこちに発生している
・脳内物質の生成を妨害する物質が脳内で増加している

という、悲惨な状態になっている事がわかっています。
動物実験の場合は意図的にストレスを与えたり睡眠を抑制して脳疲労が蓄積したモデルを作り、それを殺して脳を解剖する事でこれらが観察できます。

すごい簡単に言うと、「脳疲労がかなり進んだ脳は、悲惨なくらい脳が物理的にぼろぼろな状態になっている」という事です。

ぼろぼろの状態になった脳がまともに機能する事はなく、当たり前のように脳の各部位は本来行うべき仕事をきちんとできなくなります。

脳内物質の分泌や伝達を行う神経組織で傷んだり死滅しているのが多くあり、同時に脳内物質の生成を妨害する物質も増えているため、心に関わるセロトニンやドーパミン、その他の脳内量も大きく低下します。
また眠りに関わるメラトニンの量も通常の人より大きく減って睡眠障害が起きてしまいます。
ぼろぼろになった脳がきちんと思考できるわけもなく、頭がうまく働かなくなったり、妄想が発生したり、色々な思考のバグが発生します。
自律神経も正常に動かなくなります。
他にも脳の色々な箇所がぼろぼろできちんと機能しません。

しかしこの「ぼろぼろになった脳」ですが、脳疲労をきちんと解消する生活を長期間続ける事で、神経組織以外の脳の細胞(グリア細胞)や血管などはわりと早く再生されていきますし、脳の神経組織も海馬などはそこそこ早く再生し、またそれ以外の箇所の脳の神経組織もゆっくりですが再生していくのがわかっているのです。

また脳内物質の生成を妨害していた物質も脳疲労を解消する事で脳内でじょじょに量が減っていく事がわかっています。(その解説は後ほど)

鬱病やその他の精神疾患でセロトニンやドーパミンなどの分泌異常が長期間起こっていた人も、きちんと脳疲労を解消させる生活を続ける事でじょじょに脳の神経組織の修復や再生がされていき、またセロトニンやドーパミンの生成を阻害する物質も減っていく事で、ようやく脳内のセロトニンやドーパミン、その他の生成量が通常量に戻ってきて、心の不調が改善されていくというわけです。

逆に言うと、「脳疲労をきちんと解消しないと、いつまで経っても脳内物質の分泌量は元には絶対に戻らない」という事でもあります。

精神疾患の治療中の「今は頭をしっかり休めなさい」という医師の指導がいかに重要かよくわかったでしょうか?


<何が脳をぼろぼろにしていくのか?>

人は起きている時の脳内では活性酸素というのがよく発生しています。
脳だけでなく体のあちこちで活性酸素は発生しています。

活性酸素は細胞に酸化という現象を起こし、細胞をぼろぼろにしていく性質があります。
脳の場合は活性酸素が脳の神経組織を部分的に破壊していったり、グリア細胞をぼろぼろにしたり、脳内の血管を壊していくという事になります。

この活性酸素は、

1・感情を高ぶらせたり、興奮する事で脳内で発生量が大きく増える
2・頭を使いすぎな時も脳内で大きく増えている
3・ストレスがかかっている状態でも脳内で増える
4・高血糖状態でも脳内で増える
5・外気温や気圧で体に負荷がかかっている時も大きく増える(暑い時、寒い時他)
6・感染症にかかっている時も防衛反応として大きく増加する

など、色々な条件下で脳内や体内で大きく増える事がわかっています。
つまり、上記のような事をよくするほど「活性酸素が増えて脳がどんどん壊されていく(脳疲労が進む)」というわけです。

私含めて、過去に精神疾患を発症した人や今現在精神疾患を発症している人は、上記のような事をよくしてしまったために脳内で活性酸素をよく増やし、それが自分の脳をぼろぼろにしていったために、やがて脳がまともに機能しなくなり精神疾患を発症したというわけです。

脳疲労が進む生活を続けた末に脳が物理的にぼろぼろになった」という。

また、これらの壊された脳の色々な部分は睡眠中に修復されていくのがわかっています。
だから毎日睡眠をきちんと取るという事は脳の健康にとってものすごく大事なのです。


ここまでの部分だけを見ても、精神疾患に今なっている人は

・脳内で活性酸素が増えるような事はできるだけ減らす
・睡眠をきちんと取る

が、「今現在ぼろぼろになって機能不全を起こしている脳の修復を少しでも早く進めるために大事だ」という事がよくわかったのではないでしょうか。

活性酸素は抗酸化物質でも多少は減らせるので、食事などで抗酸化物質が含まれる物を食べる事でも脳疲労回復のある程度の助けになるでしょう。


<脳疲労は脳内物質の生成を阻害する物質の増加も起こしてしまう>


脳疲労が進むと免疫系にも異常が出てきてしまう事がわかっています。

人間の体の中には同居し続けているウイルス(ヘルペスウイルスなど)も存在し、免疫系に異常が起きて免疫の活性が低下すると、これらのウイルスが活発に増えていってしまいます。

「脳や肉体の疲労度を測定するのに、体内のヘルペスウイルスの量を調べる」という手法が今現在確立しているのはこういう理由からです。
ヘルペスウイルスの量が多いと「この人は疲労の蓄積が進んでいる」と診断できるのです。


脳疲労が進んで免疫力が低下してウイルスが体内で増殖した場合も、インターフェロンやその他の物質の量を増やして人体は対応しようとします。
しかしこのインターフェロンは脳内でセロトニンなどの生成や伝達を阻害する事がわかっています。

つまり脳疲労が進んだ人の脳内では

1・まずは免疫力の低下で体内のウイルスが増殖する
2・体内の増殖したウイルスに対応するために人体はインターフェロンなどの量を増やしてしまう
3・インターフェロンが増えたせいでセロトニンなどの生成や伝達量が減ってしまう

という流れで、セロトニンなどが生成や伝達しにくい脳状態に陥ってしまうのです。

色々な病気の治療ではインターフェロン投与の治療法もありますが、このインターフェロン投与治療で抑うつ症状が起きやすくなるのも同様の原理です。

脳疲労が進んだ状況では先に解説したように「活性酸素で神経組織が多く壊され、そのせいでセロトニンやその他の脳内物質の生成や伝達量が減っている」という状況にプラスして、インターフェロンの増加によりセロトニンなどが生成や伝達しにくい状況になっているため、病的なほどセロトニンやその他の物質が脳内で減ってしまい、その結果として心がおかしくなってしまいます。

だから精神疾患の治療薬としては病気の種類にもよりますがセロトニンなどの量を調整するSSRIをよく処方しています。
この薬でまずはセロトニン量を増やして心を楽にしようというわけです。


脳疲労を解消していくと免疫力がまた戻ってきて、インターフェロンの生成量が自然と減っていき、セロトニンなどの生成や伝達量も元に戻っていきやすくなります。
先ほども書いたように「脳内の神経組織も修復されていく」という事が脳疲労解消の生活をしていると同時に起こるため、ますますセロトニンやその他の脳内物質の量が戻りやすくなり、気づいたら心が元の健全な状態に回復しているという事になるのです。

しかし脳疲労を解消する生活をきちんとしないと、当たり前のように脳の不調はいつまで経っても改善されません。

薬はあくまでも一時的に補助する物であって、治療の基本は「脳疲労を解消する事」なのです。
精神科医も「今は頭をしっかりと休めてください」としつこく言うでしょう?

脳疲労を解消していかないといけないのに、

・感情を高ぶらせる(興奮する)
・頭をよく使ってしまう
・甘い物をよく飲食して血糖値を高くする

などのいずれかをやって、逆に脳疲労を進めて治療を遅らせる人も多いです。

<脳疲労によって壊れていく海馬と、その壊れた海馬の修復>

睡眠は脳疲労の回復(色々壊された脳の修復)のためにとって何より大事ですが、逆にその睡眠をあえて減らしたりすると、特に早くに起こりやすいのが「記憶しにくくなる」という現象です。
これは海馬が壊れていく事で起きています。

海馬は活性酸素が発生しやすいのか、活性酸素を増やすような事をよくすると脳では特に海馬がどんどん破壊されていくのがわかっています。

しかしそういう性質だからこそなのか、この海馬は壊れた時も比較的早く修復されていくという性質もあります。
他の部分の神経組織の修復が亀のように遅いのに、海馬はずいぶんと早い。

また、ほどほどに身体を動かすと海馬の修復を早める物質が分泌されるという事もわかっています。
この物質は特に海馬に存在する神経組織に働きかけ、その成長を促します。
脳由来神経栄養因子という言葉を聞いた事がある人もいるのではないでしょうか。

精神疾患の症状が重い時に記憶がなんだかおかしくなるという体験をした人も多いと思います。
壊れやすい海馬の破壊が進んだ状態になっているので、それが起きるのも当然です。
しかしそれも脳疲労をきちんと解消していく生活を続けると、やがて海馬は修復されて記憶力が元に戻っていくというわけです。


余談となりますが、受験や仕事の学習で何らかの記憶をしたいという人は

・脳疲労を蓄積しない生活を心がける
・脳疲労があまりない状態で覚える事を行う

と、海馬が健全な状態になってまずは短期記憶がしやすくなります。

脳疲労がある程度ある状態では海馬も相当ダメージがいって機能低下しているため、その状況で何か物を覚えようとしてもなかなか頭に入ってきません。
短期記憶として海馬にきちんと情報が保存されないと、それが長期記憶に変換される事もありません。

子供達も日常的にスマホの触りすぎで頭をよく疲れさせてしまうと、学習効率がずいぶんと下がる事になります。


<修復が遅い神経組織は「再生しない」と誤解されやすい>

比較的早く修復が進む海馬の神経組織と違って、修復の遅い脳の別の部分の神経組織の場合は「再生速度より活性酸素による破壊の速度の方が早くて再生していかない」という状況に陥りやすいです。

活性酸素が発生しやすい生活(脳疲労が進む生活)をさせたり、睡眠不足な生活をさせると、再生速度の遅い神経組織では再生が確認されないために、「この神経組織は再生していかない物だ」という間違った認識をされる事がよくあります。

しかし生物の体内の組織で有機物が多い部分は、その細胞が再生寿命が尽きたりしていない場合や再生エラーでおかしくなっていない場合以外は、基本的に再生をしていこうとします。
その再生速度が早いか遅いかの違いはあれど。

活性酸素やその他の何らかの「細胞を破壊していく要素」はその遅い再生を邪魔する大きな要因になっています。

認知症の治療においても、再生速度が遅い箇所の神経組織をどうやって早く再生させていくか、また同時にその神経組織の再生を邪魔する物(破壊したり、再生の生理反応を妨害する物)をどう取り除いていくかが治療の課題となっています。
脳の神経組織の再生を誘発したり早める薬が登場すると、認知症治療が大きく進化する事になります。

<栄養状態と脳の修復速度の関係>

脳疲労がかなり進むと、脳の神経組織も細胞も血管もぼろぼろの状態になる」と書きましたが、そのぼろぼろになった脳の睡眠中の修復速度については栄養状態も大きく関わってきます。

栄養が不足する食事では当然脳の修復速度も低下しますし、逆に過剰な栄養は

・高血糖(血流を悪化させたり細胞を壊す活性酸素を増やしたり免疫力を低下させる)
・高脂質(血流を悪化させたり、余計な脂質が体内の正常な生理作用を阻害する)

などを引き起こし、脳の修復を遅らせる事になります。

適切な食事を継続する事は、進んだ脳疲労の解消のために大事な要素の一つと言えます。

精神病院入院の場合は栄養がきちんと考えられた食事が提供されますが、自宅療養の場合は自分や家族がきちんと食事を考えないと、それによって脳の修復速度をずいぶんと低下させる事になります。


<脳疲労解消の大切さ>

前回の

という記事でも、今回のより深掘りした記事でも、

いかに脳疲労を進めない事が大事か

というのを解説しました。

脳疲労がかなり進むと今回の記事で解説したように「脳が物理的にぼろぼろの状態になってしまう」というのがよくわかっているからこそ、一般の人も日頃から脳疲労を溜めないように

・睡眠をしっかり取る
・脳を酷使しない
・勉強や仕事の合間に頭を休める時間を必ず設ける

というのが大事です。


また今現在心や体の不調がすでに発生している人は、脳を壊していく活性酸素を増やしてしまう以下の事はできる範囲で減らしてください。

1・感情を高ぶらせたり、興奮する事
2・頭の使いすぎ
3・ストレスを受ける
4・高血糖状態にする(甘い物の過剰な飲食)
5・外気温や気圧で体に負荷がかかっている状態(暑い時、寒い時他)

これはいずれも脳で活性酸素を増やして脳を破壊していく事です。

この記事を書いている今はどんどん暑くなってきましたが、脳の健康のためには我慢せずにエアコンを使うようにしましょう。


逆に

・睡眠をしっかり取る
・頭を休める時間をたっぷり設ける

は脳疲労の回復につながるため、しっかりやってください。