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先生と過ごした時

 森園先生が逝去されて一年が経ちました。

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寂しいな、ちゃんとお別れをしたかったな、と思いつつ時節柄どうしようもなかったと自身に言い聞かせています。

 先生との出会いは21年前の夏。先生との思い出は夏の打ち上げ花火のようでありました。

戦前から戦後を生き抜いた深淵な人生訓、ビジネスにおける論理的思考、お酒の嗜み方、先生からの学びは私達の心に豊かさを与えてくださいました。

目的を達成するための実行力、西郷南州翁への敬幕の念、薩摩琵琶を弾奏するお姿、先生の情熱はまさに爆発する魂そのものでした。

打ち上げ花火を見ているとき、祭客はどの花火が最後のひと玉かわかりません。
すべて打ち上がった後に、「さっきの花火が最後だったんだ」と気づく。先生とのお別れは予測できませんでした。

厳しい暑さを感じるも、過ぎ去れば短い夏の終わりのように、先生との時間を振り返っています。

 私が上京して間もない2004年頃、稽古場は、目黒の三洲倶楽部(鹿児島県・宮崎県人の会員制クラブ)の会館にありました。

とある夏の稽古日、先生は生徒と囲碁に耽った後、少し疲れて昼寝をしようとクーラーを効かせた座敷に横たわっていました。
当時の私は、隙あれば先生を質問攻めにする癖があり、その日も、横になっている先生に向かって、海外で琵琶を弾いた時の感想などを聞いたりしていました。
先生はうとうとしながらも、丁寧に答えてくださり私が、
「ハンガリーで演奏されたんですか、いつか僕も行ってみたいですね。」と言ったところ、
先生は、「君も行けるよ・・・」
とだけ、優しく言い残して気付くと寝入ってしまいました。

今、先生との時間を振り返るとき、思いだされるのはなぜか、こうした何気ない会話であり、そのときは意識していなかった日常であります。

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