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【滋賀】琵琶湖へ遊行、琵琶法師・蝉丸

先日、蝉丸神社にお参りするため、滋賀県の大津へ行ってきました。
琵琶湖の周辺には琵琶にゆかりの深い場所が多く存在しています。

蝉丸神社もそのひとつです。

琵琶の祖・蝉丸を祀った蝉丸神社

蝉丸神社はその名の通り、蝉丸という人物を祀っている神社です。
彼は小倉百人一首にでてくる人物として有名です。

平安時代にいた琵琶法師と言われていますが、その存在は謎に包まれています。天皇の子供であったという説もあります。目の見えない琵琶の名手という伝承から、琵琶法師の祖と呼ばれています。

そんな蝉丸神社へ、今後の琵琶生活を見守っていただきたいと願いを込めて参拝してきました。

歴史を感じる鳥居と神楽殿

大津駅へ到着して、歩いて10分ほどのところに蝉丸神社はあります。
京阪電鉄の踏切越しに鳥居と神楽殿が見えます。

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ホームページによると蝉丸神社では年に一回、音楽のイベントを行っているそうです。
http://semimaru.ehoh.net/index.html

この神楽殿がステージとなります。

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能の演目としての「蝉丸」

中に進んでいくとお能の演目「蝉丸」の説明もありました。
お能の「蝉丸」は伝承を元に作成された物語です。目の見えない蝉丸と生まれつき逆立った髪を持つ姉、逆髪が再会の折、お互いの境遇を慰め合い別れるというとてもせつない物語です。
まだ、観たことはないのでいつか観てみたい能の演目の一つです。

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本殿の中は一周できるようになっていました。記帳のノートに参拝したことを記録できるようになっていました。

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「逢坂の関」かつては関所だった

小倉百人一首の蝉丸の歌の中で、有名なのが以下です。

これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

逢坂の関は、現在の滋賀と京都の県境にあった関所と言われています。
蝉丸はここに庵を結び、関所に行き交う人々を見てこの歌を詠んだと言われています。
今で言うところの、東京駅構内の混雑のようなイメージでしょうか。
逢坂の関所には多くの人が訪れ、出会いと別れを繰り返していたのでしょう。

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逢坂山で蝉丸を感じる

国道1号線沿い、逢坂山も歩きました。あいにくの空模様もあり、とても冷たい空気が流れていたためか、蝉丸の苦労や悲しみが私の心に身に染みるようでした。

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宝山検校に思いを馳せる

実はこの周辺は薩摩琵琶にも縁があります。
現在の大津付近にはかつて、妙音寺というお寺があったと言われています。鎌倉時代に、このお寺の琵琶法師であった宝山検校が源頼朝の命を受け、島津忠久と共に薩摩に渡ったことが薩摩琵琶の発祥に大きく影響しています。

鎌倉時代からあると言われる大きな石塔が、大津駅近くの山にありました。この石塔を宝山検校も触れたかもしれないと思うと感慨深いものがあります。
話が脱線しますが、芋焼酎で有名な「宝山」は宝山検校が名前の由来です。

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琵琶湖の周囲で琵琶を弾く人々が思い浮かんだ

山を上がっている時、ふと自分の中にイメージが湧いてきました。
それは、山にあるお寺や神社で琵琶を弾く琵琶法師の姿です。

琵琶湖周辺にはかつて、蝉丸や宝山検校を中心に数えきれないほどの琵琶法師が住んでいたのではないか。

そして、琵琶法師が多く集まる湖だから、琵琶湖と呼ばれるようになったのではないか。

琵琶湖の由来は「湖の形が楽器の琵琶に似ているから」というのが通例ですが、琵琶法師に縁のある場所が多いことを考えると、琵琶を弾く人がたくさんいたのだと考える方が自然な気がします。

(琵琶奏者として、この水面が琵琶の形と似ているとは言い難いなと思うところもありました笑)

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蝉丸や宝山検校など琵琶楽の祖として名高い人物がかつて暮らしていた場所に来て、琵琶を弾く人が集まっている様子を思い浮かべ、かつての琵琶法師たちが見たであろう風景を見て、当時の空気を感じられたことは大変素晴らしい体験でした。

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皆様も是非、琵琶湖にお立ち寄りの際は、楽器の琵琶の音を想像しながら歩いてみてください。
DNAが呼び起こされて、聴こえないはずの琵琶の音が聴こえてくるかもしれません。

(徳)

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