対話メモ #3(対話型鑑賞@ミミクリデザイン)
1月末にミミクリデザイン主催の対話型鑑賞に参加した。これはファシリテーターのもと複数人で一つの美術作品(アート)について対話するといったアクティビティで、未経験ながら多くの示唆が得られたためここに学びのポイントをご紹介する。
アートによる学習
①作る学習
②見る学習
今回の対話型鑑賞は②見る学習に相当する。Jstageでも多数の論文が検索できるほか、『学力を伸ばす対話型鑑賞』『教えない授業』といった文献が紹介されていた。
アートを見る学習による学習効果
プレゼンテーションでは、下記のように紹介されていた。
①経験の内省により、ものの見方をメタ認知できる
②事実と解釈を分けることでものの見方を語る
③他者との対話によってものの見方を共創する
出典:「対話型鑑賞による‛ものの見方’の変成プロセスを探る」投影資料
学習プロセス
ものの見方の補足説明にチェッカーシャドー錯視が紹介されていた。これは「人はものを見ているようで実は見ておらず、経験則に基づいた予測をしているに過ぎない」ということに気づかされる仕掛けである。
これに対してアートを見る学習には、その予測を揺さぶる問いが内包されていると説く。例えば、下記のように予測モデルが新しく生成される。
①自らの予測でアート作品を見る
②よく見たり、対話していると予測からズレる部分が見えてくる
③葛藤が生まれる
④新しい予測モデルができあがる
⑤リフレクション(振り返り)で内省する
鑑賞ファシリテーターが行っていたこと
ファシリテーターのおかげで気持ちよくアートを見る学習ができたわけだが、彼らが行っていたことは下記のような事柄である。
①ポインティング:アート作品のどこに言及している発言かを指さしでナビゲート
②パラフレーズ:自ら発言者の言葉を言い換え言語化
③フォーカシング:例えば「ここに描かれている木に関して他に何か感じたところある人いますか?」
④インフォメーション:作家や時代背景等の情報を加える
⑤コネクト:伸びがしたいといったコメントもあったり、寂しさを感じるといったコメントもあったり…のように複数のコメントをつなげる
⑥サマライズ:要約する
出典:「対話型鑑賞による‛ものの見方’の変成プロセスを探る」投影資料
また、鑑賞中のファシリテーターの代表的な問いも紹介する。
・どこからそう思う?
・他に発見はある?
・そこからどう思う?
出典:「対話型鑑賞による‛ものの見方’の変成プロセスを探る」投影資料
対話における心構え
シンプルに2点。
①判断を保留する
②傾聴する
出典:「対話型鑑賞による‛ものの見方’の変成プロセスを探る」投影資料
参加して感じたこと
対話を続けていくと自らの体験/経験、価値観に基づく予測が言語化され続け、自らの思考が丸裸になっていく感覚を覚えた。感じていることをストレートに表現できる心理的安心感があるが、これはファシリテーターの力量によるところも大きいと感じる。ABDのファシリテーターのそれとは違い、それ相応の力量が求められる印象を受けた。自らの偏ったものの見方に気づけ、先入観が強い作品ほど新しい予測モデルを築くのに葛藤が起きる(もやもやする)。
振り返りの中で、「推理モードと妄想モードがある」という話題があった。推理モードを突き詰めると正解探しになってしまう他、推理モードは作品との対話、妄想モードは同じ鑑賞者との対話という側面が強いといったコメントも聞かれた。
対話型鑑賞とはどのようなプロセスに類似しているのか?という問いも投げかけられた。ワークショップでは「ワインテイスティング」「旅行体験の雑談」といったテーマが挙がったが、個人的には今一つしっくり来ていない。ぼんやりと考え続けていくことにする。
なお参加者との交流で、鑑賞型ファシリテーターの講座が下記から申し込めるとの紹介を受けた。興味がある方は、ご一考あれ。
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