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歴史から観る『街の文化』

 「ブラタモリ」(NHK)は、ひじょうに興味深い番組だ。その土地固有の地形や地質などが、街を形成する大きな要因であることを教えてくれる。また「秘密のケンミンshow」(日本テレビ系列)では、その地方特有の料理がなぜ誕生し普及したのかを、その地方固有の経緯から教えてくれる。どちらの番組も、現代に生きるわれわれは、長い歴史の必然の中に位置づけられていることを教えてくれるのだ。

 仕事でいろいろな地域に行くうちに、消費文化が盛んな地域とそうではない地域があることに気付いた。消費文化が盛んな地域では、レストランや飲み屋などの外食店や喫茶店が多かったり、高級化粧品店があったり、おしゃれな美容店があったりする。まじめに調査したり、きちんと統計を取ったわけではないが、かつての街道筋それも宿場町は、消費文化が盛んなことが多いように思われる。

 名古屋から中央(西)線に乗れば、愛知県から岐阜県に入り、多治見、土岐、瑞浪、恵那、中津川と中央アルプス(木曽山脈)に向かって走って行く。中央道なら恵那山トンネルで長野県に抜けるところだが、中央(西)線は中津川市から中央アルプスを越えることなく木曽川に沿って北上し、塩尻に抜ける。ふつうに考えれば、山脈に向かっていけば、だんだんと街も寂しくなっていくところだが、恵那も中津川も立派な地方都市だ。そのわけは、おそらく中山道の宿場町だったからだろう。どちらも盛んな消費文化をもっている。

 土岐、多治見になると中山道からは外れるが、別な歴史的経緯がある。それは美濃焼だ。美濃焼は日用食器であり、かつては全国から買い付けの商人が訪れたであろう。つまり、街道の宿場町ではないが、商人が買い付けに来て宿泊していく。

 街道の宿場町や商人が買い付けに来て宿泊していく場所では、同じような特徴をもっている。まず、目の前で各地から来た人々が通り過ぎていく。各地から来た人々は、それぞれ各地の文化を携えて移動しているのだ。つまり新しいものに対する抵抗が少ないと考えられる。次に、宿泊をすれば外食もするだろうし、外で酒も呑むだろう。江戸時代なら遊女と遊んだかもしれないし、現代ならきれいなお姉さんのいる店にもいくだろう。さらに、そのように各地の人を受け入れる店があれば、地元の人も通うようになるだろう。また各地からやってきた、地元では珍しい物品を購入するのかもしれない。

 このようにして消費文化が形成されていく(仮説)。だとすれば、地域経済を活性化させていくためには、まず地元の歴史的特徴を深く考察する必要があるのではなかろうか。もしかすると、そこには地理や地質が関わっているのかもしれない。

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