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国民皆保険は本当に庶民の味方?ー米国Super Tuesdayを踏まえての考察

皆様こんにちは、本日は↓記事を元に米国大統領選の行方等を考えていきたいと思います。

上記記事は米国大統領選Super Tuesdayの郡毎の選挙結果を多様な軸で分割集計したものです。

まず最初にSuper Tuesdayの主要プレイヤーのキャラクターですが、バイデン氏・ブルームバーグ氏は大きな政府(税金をたくさん取って巨大なコストセンターである官僚機構を維持しつつ分配する)を志向する左派政党である民主党の中で、左派中道(Moderate、割と現状維持)とされいて、サンダース氏・ウォーレン氏は左派急進(Progressive、割と現状破壊)とされています。今回の記事では前者を中左、後者を極左と呼びたいと思います。

単純に考えると、低所得郡ほど国への貢献(税金支払)ではなく国からの援助(補助金・生活保護等)が増えると期待できるので、極左候補者に投票すると予想されます。

しかし統計は真逆の結果を示しており、家計所得中間値がUSD 58.4K以下(要は低所得)の郡からの自身内の投票獲得割合は、中左>極左となっています。逆に言うとお金持ちから極左はより支持されているということになります。↓は上からバイデン氏(中左)、サンダース氏(極左)、ウォーレン氏(極左)、ブルームバーグ氏(中左)です。

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ウォーレン氏が大統領選から離脱を表明し、唯一の極左代表となったサンダース氏の目玉公約は国民皆保険の実現です。

この論点に関して、もし仮にこの政策が支持されているなら、現在保険カバー率の低い郡においても極左が投票を集めそうですが、またしても逆の結果となっています。

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ここで米国の民族毎の年収中央値を確認しておきましょう。

↑Pew Research Centerの2016年の調査によると、黒人・ヒスパニックが米国の低所得層を形成しております。

(単位:USD)
アジア人:51,288
白人:47,958
黒人:31,082
ヒスパニック:30,400

今回のSuper Tuesdayではバイデン氏が圧勝したわけですが、それ以前のアイオワ・ニューハンプシャーという白人比率が90%以上の州の投票ではサンダース氏が勝利していて、今回のSuper Tuesdayにおいても白人比率が88.7%超の州においてはサンダース氏の得票率がバイデン氏を上回っています。

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ここで割と日本のメディアに毒されていると勘違いしてしまう統計をあげておくと、前回大統領選(トランプ氏対クリントン氏)において「低所得層がトランプ氏に投票したからトランプ氏が勝利した」という説があります。

ところが↑NYTの出口調査によると、米国の所得層を6層に分けた下位2階層がクリントン氏を「熱狂的に」支持し、上位4階層は「薄く」トランプ氏を支持していることがわかります(↓青がクリントン氏、赤がトランプ氏)。

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民族別では↓となります。

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今年の大統領選において、↑の支持基盤を持つ現職トランプ大統領に対して、バイデン氏/サンダース氏は立ち向かわなければなりません。そしてトランプ氏は小さな政府を志向する共和党の支持を受けていますので、中途半端に導入されてかえって負担が増えただけとされるオバマケアの廃止もしくは全面改定を狙っています。

ちなみに米国大統領選を制するためには、Swing Stateと呼ばれる共和・民主の間で票が揺れ動く激戦州を多く取らなければなりません。

そして↓著書によるとグーグル・トレンドがその良い先行指標となることが知られています。

過去三度の大統領選では、検索語として先に入力された候補が当選している(例:トランプ クリントン)。さらに面白いのは、この入力順は個々の州の投票動向の良い先行指標になることだ

試しにSwing Stateの中で選挙人割当数が多い上位3州の現在を見てみると、

フロリダ州

ペンシルバニア州

オハイオ州

いずれも"biden sanders"が"sanders biden"を上回っていますので、大統領選の民主党勝利を見据えるとバイデン氏の方が良いのではないかと予想されます。

最後に果たして国民皆保険は庶民のためになるのかということに関して、日米両国を見ていきたいと思います。

まず日本は国民皆保険を維持していますが、自営業者の加入する国民健康保険の保険料は例えば渋谷区で夫婦子供2人・年間所得が200万円の低所得家庭の場合、年間約22万円にもなります。

家族4人で年間200万円と言えば、家賃等を考えると相当カツカツな生活が予想されますが、そこから22万円を負担し、さらに窓口で3割負担などと言われるのならば、病気になった時に10割負担しますから国民健康保険を抜けさせてくださいと言いたくもなるのも理解できます。

そしてこの高負担は、↓下落を続けた一般賃金動向とは「大幅に」かけ離れた医療職種賃金の上昇等も一因となっています。

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(出典:社会保障について② (医療) - 財務省

庶民が死にものぐるいで稼いだお金の上前をエリートが「不当に」ハネる構造、それは桃太郎侍風に言えば「ひとつ、人の世の生き血をすすり、ふたつ、不埒な悪行三昧、みっつ、醜い浮世の鬼を、退治してくれよう、桃太郎」になるのではないでしょうか!?(笑)

健康保険のみならずシルバー民主主義(+ガラパゴス日銀による奇特なデフレターゲット政策)がもたらした激増年金保険料含めた日本の可処分所得の「阿鼻叫喚」推移は↓ご参照ください(ちなみに↓における社会保険料負担は、企業負担と言う名の実質では自己負担である部分は考慮されていないので、実態はもっと酷い)。

そして国民皆保険のない米国も事情は同じで、医師給与は一般賃金水準対比「異常に」増加し続けています。

個人的には医師の仕事は頭脳と言うよりは体力勝負の面が強いと思っているので、理系地頭の良い人材を「人為的な」医師供給量の制限&それに伴う高給を餌に根こそぎ医学部に誘導するのは(↓国公立理系の偏差値ランキングでは上位を医学部が独占していることをご参照)、他のセクターの発展を阻害することに繋がり、国民経済全体の視点で見れば好ましくないと考えています。

人助けがしたい天才くんたちは、医師一人が助けることのできる人数と比べ物にならないインパクトを与える可能性がある、医師AI/新薬/レイシックのような手術ロボット(素人でも操縦可能な)、の開発をするエンジニアに進んで、必要な医師・専門職人材の削減→医療コストの低減や新薬開発→その後の特許切れによる薬品のジェネリック化・低コスト化により、庶民を助けて欲しいと思います。

もちろん個人の進路を国家命令で変えるのは副作用も大きいので、一般賃金の上昇率に対して大幅に乖離するような医師・薬剤師供給の「不当な絞り込み」・「市場操作」を政策的に改めるのが、庶民向けの医療改革の第一歩となるはずです。

具体的にはミルトン・フリードマンが約60年前には↓で提案していた職業(医師・薬剤師)免許の廃止であったり、免許を残すとしても免許取得までの時間・お金のコストを下げたり、隣接職種の看護師による診療範囲の拡大を通しての競争推進、AIによる診療を認可することによる効率化、一般セクター同様に企業参入の認可等があげられます。

医は仁術であるとか算術であるとか色々な言われ方をしますが、Super Tuesdayを通して米国及び日本の医療効率がホンダのスーパーカブ並みに安価に広く提供され、世の福利厚生を高める普通の産業になること、目標としては↓の世界銀行の医療費/GDPにおいて、先進国でトップ水準のニュージーランド・オーストラリア・フィンランドの9.22%~9.49%程度になることを願っています。(現在、米国は17.07%、日本は10.93%)


スーパーカブは1958年に日本で新発売され、瞬く間に爆発的なヒット商品となった。 59年間の長きに渡って生産を続け、その累計が2017年に1億台を超えたのであった。
フォード・モデルTとフォルクスワーゲン・ビートルとスーパーカブには、一つの共通点がある。それはフォードモデルTの生みの親がアメリカ自動車産業の風雲児であるヘンリー・フォードであり、ビートルはアドルフ・ヒトラーが率いるナチス・ドイツ政府の国民車構想によってフェルディナント・ポルシェが設計し、スーパーカブは一代でホンダを世界的企業に育てた天才技術者の本田宗一郎が開発した傑作オートバイであったことだ。言わずもがな三者とも自動車の世界史年表に、その名を刻み込む強烈な個性と才能の持ち主である。


医療改革にあたっての参考図書:底なしの道路利権が進行していた道路公団の民営化を主導した元東京都知事猪瀬氏の多面的な分析が光ります。


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