見出し画像

6月の化石 ザ・ループTRPGリプレイ 第三回「石切場と謎の球体」

解説:グラフィック社刊行「ザ・ループTRPG」のリプレイ記事、実際のゲームの様子を元にした読み物の第三回目です。第一回はこちら。 第二回はこちら。

text :朱鷺田祐介 Illust:桐部ゆき

ザ・ループTRPG(グラフィック社)

キャラクター作成を扱った第一回、導入部分の第二回はこちら。


■OP:石切場と謎の球体


 化石を探して、石切場に入り込んだキッドたち。
 ダンジョンのように入り組んだ地下の奥にあったのは……。

第三回:石切場と謎の球体


【登場キャラクター】
運動部員 ルイ・アームストロング 13歳 
(プレイヤー:蝸牛くも)

ロッカー ジャスティン・ウェーバー 14歳
(プレイヤー:柴田勝家)

コンピュータ・ギーク フレデリック・レンノ 13歳
(プレイヤー:BakaFire)

変人 セイラ 11歳
(プレイヤー:桐部ゆき)

ゲームマスター(GM)朱鷺田祐介

キャラクターシート

【前回までの物語】

 スウェーデンの片田舎、メーラレン湖の島々に住む少年少女たち(キッド)は、自分たちが通う基礎学校(スウェーデンの学校教育で日本の中小学校にあたる)の先生と、科学研究施設の科学者の結婚式に参列する。そのパーティ会場で、理科の先生ロヴィーサ・アンデルスに、ザ・ループの若手科学者ベルトルト・オングストロームが新種らしい三葉虫の化石をプレゼントしたのを見たキッドたちは、自分たちも新種の化石を見つけようとし、化石が見つかった閉鎖中の石切場に入り込む。

 石切場は危険だと立入禁止になっていたが、結婚式の終わり頃、時ならぬオーロラの出現で大人たちが騒いでいる隙間をついて、冒険にでかけたのである。

 石切場の探検は、「大規模トラブル」のルールで解決され、一番若いセイラが「疲労」した。また、途中でジャスティンが「動揺」した。

 「ザ・ループTRPG」は、ヒットポイントのような数値ではなく、このように、受けた状況でコンディションから選んで記録する。この二人は、コンディションが回復するまで、ダイス・ロールで触れるダイスの数が1個減ることになる。

【コラム:ザ・ループTRPGのダイス・ロール】

 能力値と技能の合計数のダイス(6面)を振り、6の目が出たら、成功になる。余分の成功が出れば、結果はよくなる。使い方は技能による。

【表記ルール】

【能力値】〈技能〉

 

冒険が始まった!


GM:君たちは石切場を探検していく。途中、色々あって…
ジャスティン:音楽の神は俺を裏切らない!(でも、ちょっと動揺)
セイラ:この中で一番小さいので、ちょっと疲れちゃった(疲労)。
GM:かくして、皆さんは石切場の洞窟の奥にたどり着く。
 そこで目撃したのは、不思議な照明に照らされた石壁である。
ジャスティン:おおお。
フレデリック:照明? 電気が来ているということ?
GM:はい。壁の正面に、大型のライトのようなものがあり、石材を取るために垂直に斬られた壁面には、化石の文様が見える。
ルイ:化石だぞ!
GM:そのライトはケーブルで、その横にある直径4メートルほどの金属の球体につながっており、その球体もまた、太い電源ケーブルでどこかにつながっています。この球体は、エコー球と呼ばれています。ザ・ループが初期の実験で用いたものらしく、メーラレン湖諸島の色々な場所に放置されています。
 画集の方の「ザ・ループ」P76を御覧ください。

 あるいは、こちら(原作者シモン・ストーレンハーグ)のギャラリーの3枚目をごらんください。

GM:エコー球から伸びたケーブルが特殊な形状のライトにつながって、垂直の石壁を照らしており、背後から伸びる太いケーブルもあり、機械として稼働中らしい。
フレデリック:光源は?
GM:エコー球からつながっている大型のライトですね。投光器というべきかな。
フレデリック:フレデリック:そうなると、どこから電力が来ているのかは気になりますね。

 推理を口にすることで、仲間に考えを伝えていくスタイルのフレデリック。推理型のストーリーゲーム「惨劇RoopeR」が代表作のBakaFireさんらしい、理系キャラである。

ルイ:その辺の石をひっくり返したら、ソケットがあったりして。
ジャスティン:エレキギターが弾けちゃうな。
フレデリック:いや、こんな石切場の奥に電源? おかしくないか?
ルイ:石切場の工具のために電気を引っ張ってきたんじゃないか?
フレデリック:それだとなんか納得できないな。
GM:それを考えたい場合は、〈分析〉+【テック】のダイス・ロールを振りましょう。
フレデリック:何か役に立ちそうなものはないかな。イワサカ・スパイダーのフィギュアをはボーナスになりますか、GM?
GM:イワサカ・スパイダーはフレデリックのアイコン・アイテムなので、それを振り回しながら、調べるなら+2。
フレデリック:振り回しながら?
ジャスティン:振り回しながら!
フレデリック:ど、どういうこと!?
GM:ルール上は、イワサカ・スパイダーをその行動の描写に使えるなら、アイコン・アイテムのボーナス+2が得られます。鞄の中に入れているのはダメ、手に持っているとか、話しかけるとかならOK。
セイラ:調べるぞおおお(何かを振り回すロールプレイ)。
フレデリック:いや、その絵面は……。
 まあ、フィギュアを取り出し、こんな場所でも持っているぐらい、機械関係が好きだから……ではどう?
GM:OK。

【アイコン・アイテム】

 キャラクターのトレードマークとなるアイテム。それを使うことで、判定のダイス・ロールに+2できる。


フレデリック:(ほっとして)【テック】5+《分析》2+アイコン・アイテム+2で9個ダイスを振ります。お、4つも成功した。
GM:をを。《分析》の場合、まず、1個目の成功で以下の中から2つの質問が出来ます。

・用途は?
・どのように動作するの?
・どうすれば使用できるの?
・誰が作ったの?
・どんな問題を発生させうるのか?
・違法な品物かどうか?

フレデリック:ちょっと考えましょう。成功がたくさんある分は?
GM:さらに、余分の成功が3つもありますが、成功1個を使って技能ごとに決まっているボーナス効果が得られます。《分析》の場合、もう1つ質問をするか、後で今回の情報を活用する際にダイス・ロールでダイスを1個追加できます。ダイスを増やせるのは最大+3まで。
フレデリック:まず、質問1つ目。誰が作ったのか?
GM:エコー球を製作したのはザ・ループの初期の研究者です。その後、誰かが改造してライトに見えるものを接続してここに置きました。おそらくは、ザ・ループの関係者でしょう。
フレデリック:用途は?
GM:ザ・ループのメイン・コンピュータやグラヴィトロンと接続され、ある種の情報処理を行うもののようです。
フレデリック:何かをインプットして、何かをアウトプットすると。
GM:ザ・ループの研究員以外は、まあ、そこまでしか知りません。
 追加の成功が3個あるので、もう少し情報を出しましょう。
 まず、このエコー球自体は最近設置されたものです。
フレデリック:最近? 新しすぎるだろう。もう少し詳しい用途が知りたいですねえ。
GM:どうやら、この機械は地磁気に関係しています。
フレデリック:むぅ。他には?
GM:あなたは、「ザ・ループ」の研究の目的を思い出しました。「ザ・ループ」は円形粒子加速器であり、この研究所の目的は時間と空間の秘密を探ることです。その「ザ・ループ」が作ったエコー球は、地磁気を利用して時空間に影響を与える機能を持っている可能性があります。
フレデリック:(ちょっと腕を組んで考えてから)もしかして、地磁気の影響でオーロラが起こったり、時計が止まったりしますか?
GM:ええ、起こりうる現象です。
 あと、ザ・ループに関して、パソコン通信に流れている噂のひとつに、彼らがテレポーテーションを研究しているというものがあります。
フレデリック:とんでもの領域に入り込んできましたね。まあ、それを口にするかどうかは、さておき。
 時計が止まったり、オーロラが出たり、パソコンが壊れたりしたのと、なんかつながってきそうだな。

実力行使!


ルイ:そこまで聞いてもよくわからないから、調べてみようぜ(と、エコー球に向かう)
セイラ:中に入れるの?
GM:エコー球にはハッチがあり、中にも入れそうだ。
セイラ:じゃあ、入ろうよ!
ルイ:腕力でこじあけるぜ。
ジャスティン:かっこいいぜ、ロックだ!
フレデリック:おい、お前ら、危ないって思わないのか?
ルイ:ぶっこわしたら、ごめんね。

 脳筋ロールプレイに走るルイ。

GM:ハッチがあり、それを力づくで開けるならば、【ボディ】+〈腕力〉の判定になります。
フレデリック:ちょっと待て。先に調べる。
GM:では、【テック】+〈分析〉でダイス・ロール。
ルイ:【ボディ】と〈腕力〉、バットを構えて開ける準備をしています。
セイラ:頑張れ、ルイ兄ぃ。
フレデリック:待て、待て! 〈分析〉しますよ。イワサカ・スパイダーのフィギュアを握って+2。便利道具になっている。

 よし、1個成功!

GM:ハッチの横にキーパッドがあるので、これを〈プログラミング〉すれば開けられるな。
フレデリック:ハッキングだな。その方が得意だぞ。イワサカ・スパイダー、助けて! あ、1個も出ない。

ルイ:バットの出番かな。

フレデリック:背後で、ヤル気満々でバット振ってるやつがいる! ちょっとビビりながら、コンディションをひとつ受けて、ダイスを振り直す!
 (受けるコンディションは)動揺か萎縮だな。

ルイ:バットをぶんぶん。

フレデリック:動揺だな。これを壊したら、絶対、怒られる! ヤバい、ヤバい、ヤバい。あ、1個出た!
ルイ:ぶんぶん。
フレデリック:待ってろ、待ってろ。ほら、開いたぞ。

GM:内部は、まるで映画「スターウォーズ」の戦闘機のコックピットのような操作席になっていて、ボタンやメーターがある。
セイラ:かっこいい!
フレデリック:わかりやすく、機械っぽくてよかった。さらに、〈分析〉で調べていくぞ! 9個振って、お、4個成功!

 荒ぶるダイス。
 フレデリックは、エコー球の操作方法がなんとなく分かってくる。

GM:真空管式でたくさんの数字が表示されるメーターがあり、その下に、「Year(年)」「Month(月)」「Date(日)」「Hour(時間)」と英語で書かれている。下のボタンで入力できて、となりのレバーで起動する。
フレデリック:ああ。分かった。
 俺、今からとんでもないことを言うかもしれない。
ジャスティン:おおおお。
フレデリック:これ、タイムマシンかもしれない。
ルイ:なんだってーー。
 ちなみに、その日付は?

GM:00000000:00:00:00:00

フレデリック:それは0000基点なのかな。
 もしも、結婚式の終わり頃の時刻を指していたら、オーロラ発生装置だったかもしれないんだが、それではない。
GM:数字の前に「プラス/マイナス」がある。
フレデリック:そういうことか。
GM:その上、この機械、周辺環境に影響を与えそうな気がする。そう言えば、エコー球から出たケーブルの1本は石壁を照らしているライトに直結している。
フレデリック:照らしている先は?
GM:そのライトが照らしている石壁をよく見ると、昨日、オングストロームが持ってきたのと、似たような化石があることに気づく。
ルイ:ほお?
フレデリック:もしかして、照らしている場所に、影響を与えるのか?
セイラ:ライトがあたっている場所の時間を戻したり、進めたりできるってこと?

実験してみよう!


フレデリック:実験してみよう。パンを取り出して、二つに割り、ライトの光の中に置いて、1時間戻す。
ルイ:ぽちっとな。
GM:パンは引き裂く前の状態に戻った。
フレデリック:戻りますか! マジに、これ、タイムマシンだ。
セイラ:じゃあね、じゃあね、もしかして、私達が大人になれるってこと?
ジャスティン:ロックだぜ。
ルイ:やってみるか?
フレデリック:まあ、待て。ちょっと気になるから、パンでもう1回実験しよう。今度は1時間後だ。
ルイ:ぽちっとな。
GM:パンが消えた。
セイラ:え、なんで?
フレデリック:こえええよ。

 みんな、怖い考えになってしまった。

ルイ:時間を戻そう。
フレデリック:そうだ。時間を0000に戻して……
ルイ:ぽちっとな。
GM:二つに引き裂かれたパンが出現した。
フレデリック:分かったような気がする。1時間経過するまでの間に、このパンはなくなるんだ。誰かが食べちゃうかもしれないし、野生動物が引っ張っていくかもしれない。
セイラ:もしかして、ここにいたら、危ないってこと?
フレデリック:まあ、誰かが鞄に入れるだけかもしれない。
セイラ:ここにネズミのマイケルがいるのだが、これを1歳若返らせることが出来るってこと?
フレデリック:出来るかもしれないが、俺はやりたくない。

 ちなみに、ネズミの寿命は約2年とされます。

セイラ:マイケルが長生きできるかもしれないじゃん。
フレデリック:でも1年、時間を戻したら、記憶も消えると思うんだ。セイラとの1年が消えてもいいのかな?
セイラ:そうかあ。それは寂しいからやめよう。

ルイ:ほ。プレイヤーとして、ちょっと、今のは怖いよね。
セイラ:この娘(こ)は、純粋に、自分が大人になったら、どうなるかなあって、スイッチをいじりそうだなあと。10年間の未来の記憶を持った私がそこにいるのかなあ。でも、パンが消えたのは怖かった。
ジャスティン:自分に当てて、1年後を指定したら、消えたとか、超怖い。
フレデリック:これはわくわくもするが、怖い方が強いねえ。
ルイ:じゃあ、今度はこの壁の化石に当ててみようぜ。
セイラ:それが動き出すかもしれないね。
フレデリック:この化石がやばい生き物だったら、どうするんだよ!
セイラ:それ、アンモナイトだよ。貝類だよ!

 どっちかと言えば、オウムガイや頭足類(いか・たこ)ですね。

ジャスティン:いや、アンモナイトは水棲生物だ。ここは海じゃない!
ルイ:待て。ここにアンモナイトの化石があるということは、時間を戻したら、ここが水没するんじゃないか? 俺たちが溺れ死んじゃうぞ。
 あ、でも、ルイはそこまで気づかないよなあああ。
全員:うんうん、そうだねえ。
フレデリック:そこは化石の知識を僕が思い出したことにしましょう。
《理解》+【マインド】で3成功。
GM:アンモナイトに関する知識を思い出します。追加成功があるので、以降、アンモナイトの関係の情報は自動的に手に入りますね。

 アンモナイトは古生代から白亜紀末までの3億年あまりの間、海洋に繁栄した頭足類の仲間だ。アンモナイトの化石があるということはその頃、ここが海だったことを示す。白亜紀末というと、およそ6,600万年前。

フレデリック:……いきなり水没はやばいから、こいつが生きていた時代まで戻すというのはなしだ!

地底湖の怪物


GM:では、ここで、皆さん、ある出来事が起こります。
 マイケルが鳴き声を上げ、セイラは水音を聞きます。
セイラ:水音? 近くに水場があるの?
GM:振り返ると、今いる場所から50メートルばかり先で、洞窟がさらに傾斜し、その先は水没しています。割と深い穴が地底湖のようになっています。水音はその中でしました。
 まるで、何か大きなものが泳いでいるようです。
セイラ:何かいる!
ジャスティン:魚か?
GM:もっと大きいな。
ジャスティン:じゃあ、イルカだな。かっこいいぞ。
ルイ:ジョーズかもしれないな。

 サメ映画の古典『ジョーズ』は1975年公開。1977年に『スターウォーズ』が公開されるまで、世界最高の興行収入を誇った大人気映画である。当然、80年代キッドたちには必須教養である。

GM:ちなみに、皆さんの住んでいるメーラレン湖は淡水ですよ。
ジャスティン:じゃあ、カワイルカだ。
フレデリック:どうしてもイルカにしたいんだな!
ルイ:サメなら、どこにでも出てくるぞ!
ジャスティン:ロックだな。

 サメが宇宙まで飛んでくる『シャークネード』シリーズは2013年のSFディザスター映画!だそうです。80年代のサメはまだ、海にしか出てきません(何を言っているんだ)。

セイラ:11歳なので、水音に惹かれて、水辺の近くまで行きます。
ルイ:じゃあ、ついていってやろう。落ちたら危ないからな。
ジャスティン:海辺のイルカの歌ぁぁぁ(じゃじゃん)
フレデリック:海辺じゃないし!
セイラ:水辺に近づいたら、懐中電灯で水面を照らすよ!
フレデリック:待て、水中に何かいたら、大変だろ! 肉食生物とか、肉食生物とか!
ルイ:ホラー映画の見すぎだよ。わはははは。
GM:じゃあ、水中から巨大な爬虫類のようなものがセイラに襲いかかる。【ボディ】+《運動》を振ってください。
セイラ:来たーーー。
ルイ:GMがさっきから古生物図鑑を開いているから、いやな予感しかしなかったんだよ。
GM:そうですね。種類としてはモササウルスですね。
フレデリック:肉食べそうですね。
GM:食べます!

 ・・・というか、フレデリックはさきほど、アンモナイトについての知識の判定で追加の成功を得ていますので、これがアンモナイトを食べるだけの硬い歯を持った捕食者であることを知っています。

 「ザ・ループTRPG」の知識系のダイス・ロールは1個で成功するが、追加の成功があれば、関連の知識があるかないかの判定に自動成功できたり、あるいは、その知識を使ったダイス・ロールにボーナスを得たりできる。

GM:古生物図鑑を開き、こいつですね。
セイラ:歯があるイルカ?
ルイ:モササウルスはやばいんだよな(恐竜大好き)。

 モササウルスは、すでに絶滅した爬虫類有鄰目モササウルス科の生物で、白亜紀後期に海中での捕食者の頂点に立っていた大型のトカゲである。手足はヒレに代わり、ハクジラに似ているが、明らかにトカゲである。アンモナイト、魚類、魚竜、翼竜などを捕食していた。時には浜辺に突進して陸の動物を襲うことすらあった。

フレデリック:そいつは肉食だ。気をつけろ!
セイラ:たーべられるーーー。
ルイ:セイラが落ちないように、すぐそばにいましたので、かばいます。
GM:それは協力として扱いますので、セイラのダイスを+1。
セイラ:ルイ兄ぃ、ありがとう!
GM:フレデリックは、さっき、アンモナイトの知識ロールで余分の成功が3つもあった。これで自動成功を買ったりした上で、知識を使って警告したので、セイラの回避に+1のボーナスをあげよう。
ジャスティン:エレキギターを振り回してモササウルスを牽制しよう。
GM:アイコン・アイテムなので、セイラにさらに+2。

ジャスティン:これがロックの力だ!

フレデリック:いや、違うだろ?
ルイ:だめだったら、俺がセイラを担いで逃げよう。先になんとかできますかね? イニシアティブ?
GM:ここで、重要なお知らせです。

「ザ・ループTRPG」には、なんと、戦闘ルールがありません!

一同:まじかーー。
GM:イニシアティブもありません!
ルイ:本当だ。
セイラ:HPもないし。
GM:そもそも、キッドは死なないとか、スゴイことが書いてあったりしますが、もちろん、こういう危機的な状況、このゲームではトラブルと呼ばれるものを処理する方法はあります。
 代表者がダイス・ロールをして、トラブルを切り抜けるための必要成功数を稼ぎ出せば解決できたことになります。

 そして、皆さんは、それを自然にやってくれました。

 ここでは「モササウルスの襲撃から逃げる。当事者はセイラ。必要成功数は3」です。セイラが【ボディ】+《運動》を振ってください。すでに、ルイが守ると言って+1、フレデリックが前のダイス・ロールの余分の成功で得た知識を応用することで+1、ジャスティンがアイコン・アイテムであるエレキギターを振り回すことで+2のボーナスを与えます。

セイラ:だめーーー。こんなに振ったのに、6が1つしか出ない。
GM:では、必要数に足りない2個分、コンディションが適用されます。

 すでに【疲労】しているセイラは、2個もコンディションを受けると、【くじける】寸前まで言ってしまう。コンディションを受けて振り直すのもちょっと危険である。

ルイ:ここはセイラをかばって、私が受けます。今なら、まだコンディションを受けてないので。さすがにこれはまず【動揺】だな。そして【疲労】しました。-2だあ。
GM:「ザ・ループTRPG」では、ダイス・ロールで成功の目(6)が出なくても、すぐに失敗ではなく、その行動は行われ、代わりにペナルティを受けた状態で話が進む、という扱いになります。
ルイ:そこがナラティブなんですね。じゃあ、みんなでセイラを守り、背負って逃げたルイは、動揺して疲れたということで。

「ぜーはー、あれは何なんだ? やっぱりサメか? ジョーズか?」

フレデリック:だから、言っただろう。モササウルスだ。白亜紀にアンモナイトや海の生き物を食べていた最強生物だよ! サメじゃないけれど、やばいのは確かだよ!
ルイ:セイラ、大丈夫か?
セイラ:ありがとう、ルイ兄ぃ。
ジャスティン:追ってきますか?
GM:四肢がヒレになっているモササウルスは、明らかに地上で移動するには向いておらず、地上での移動速度は明らかに遅いですね。

ジャスティン:よし、じゃあ、ここは恐竜に向かって歌を歌って、魅了しよう。古代からありがとう! 俺の歌を聞けぇ(1成功)

GM:ジャスティンのロックな魂が石切場に響き、モササウルスの注目を引きました。モササウルスはジャスティンを襲います。
ジャスティン:やったぜ!
GM:【ボディ】+〈運動〉で回避してください。1個でも6が出れば回避できますが、失敗すると、コンディションを受けます。
ジャスティン:エレキギターで殴り返す!
GM:その場合は【ボディ】+〈腕力〉で、モササウルスのトラブル解決のための必要成功数は3です。
ジャスティン:ロックだ。【ボディ】4、〈腕力〉1、エレキギターで+2。7個。
GM:【動揺】を受けているので-1の6個。
セイラ:エレキギターで恐竜を撃退したら、伝説だね(応援で+1)。
ルイ:バットを振り舞わして協力しよう(応援で+1)。
フレデリック:モササウルスの弱点は鼻面だと助言(応援で+1)。
ジャスティン:みんなの愛がロックだぜ。やってやるよ!
 9個振ります。ぐ、2個だ。
セイラ:1個足りない!

GM:ここでルール解説です。

 なんと、プライドを使うと、自動成功が1個得られます。1回のセッションで1回ですがががが。

ジャスティン:ここはプライドを使いましょう。
「友達のために立ち上がる」
 これが俺のロックだあああ、とモササウルスの鼻先に、エレキギターを叩きつける。
フレデリック:ロックだ。
GM:モササウルスは鼻先を殴られ、悲鳴を上げて水の中に逃げ帰る。
ジャスティン:自分の居場所に帰りやがれ! 
セイラ:ジャスティン、かっこいい!
ジャスティン:すべては友達のために!
 ああ、これがロック。

ルイ:いや、ジャスティンが歌わなかったら、襲ってこなかったんだが。
フレデリック:ほんとだ。

恐竜の謎


 水辺は危険なので、エコー球まで戻ってきた一同。

セイラ:もしかして、あのライトと恐竜には関係あるのかな?
フレデリック:モササウルスは正しくは恐竜じゃないんだけど、キッドだから恐竜って言うんだろうなあ。今、分かったことは、あのライトで化石を恐竜にまで戻せるということだ。
セイラ:あのライトを動かして、恐竜を照らせば、化石に戻せるのかな?
フレデリック:たぶん出来る。
セイラ:あの恐竜は何食べて生きているのかな、魚?
ルイ:あれだけじゃなくて、アンモナイトとかも化石から戻っているんじゃないかな? 
ジャスティン:もしかして、この島全体が古代に沈んでしまうのか?
フレデリック:俺たちが今、恐竜を元に戻す必要はないんじゃないかな?
セイラ:つまり、ここに恐竜がいることは、私達だけの秘密。
フレデリック:そうかもな。

 秘密は、キッドたちの大好物。

 かくして、キッドたちは、アンモナイトの化石を持って帰ってきた。

エブリデイ・ライフ:キッドたちの癒やし


 キッドたちが小さな冒険から帰宅しても、夏のメーラレン湖はまだ明るく、大人たちは昼間のオーロラ騒ぎで子供たちのことは気にしていない。

GM:では、各自のエブリデイ・ライフを描きましょう。
 「ザ・ループTRPG」では、ミステリーのシーンと日常生活を描写するエブリデイ・ライフのシーンを交互に行います。
 行ってはいけない石切場への冒険も大人たちにはばれてはいないようだ。まあ、午後はどうしていたの? ぐらい聞く親はいるでしょう。聞きもしない親かもしれませんが。

ルイ:ここで、拠りどころと会うことはできますか?
GM:はい、ここで、心の拠りどころになっているNPCと過ごすシーンを入れると、コンディションがすべて回復します。
ルイ:回数の制限はありますか?
GM:セッション中、何度でも出来ます。
ルイ:じゃあ、家に帰って、猫のマカンに今日の冒険を報告しよう。親ではなく、マカンに報告。
GM:それで、コンディションが全快します。
ルイ:今日、俺、石切場で冒険したんだぜ。

 

統率技能を使ってみよう


GM:コンディションの回復については、この他に、〈統率〉技能を持つキャラクターは、一緒に過ごす相手のコンディションを回復することが出来ます。この場合はダイス・ロールが必要で、成功なら1個のコンディションを回復、余分の成功があれば、自分が回復したり、より多くのコンディションを回復したりできます。
ジャスティン:〈統率〉1あるな。
セイラ:じゃあ、ジャスティンと一緒に過ごそう。
 恐竜を殴ったおかげでエレキギターに傷がついちゃったけれど、それはそれでエモいよね。
ジャスティン:これは大事な傷だぜ。一生もんだぜ。
セイラ:そうだよ。あたしはずっとジャスティンを見ているよ。
ジャスティン:〈統率〉+【ハート】で振る。あれ、ない?

GM:統率で回復しようとしたのに、そのダイス・ロールに失敗した場合、判定した人は対象と同じコンディションを受けます。

セイラ:ごめん、【疲労】がジャスティンに行っちゃった。
ジャスティン:疲れたぜ。
セイラ:ごめん、巻き込み事故だ。しょぼん。
ルイ:石切場に行って、恐竜と戦った後、ロックの演奏をしたら、そりゃ疲れるよ。

 こういうところは、やはり、拠りどころの方が効率がよい。

それぞれの拠りどころ

フレデリック:石切場に行ったことが親にばれるとやばいので、フィギュアの中の空洞にアンモナイトの化石を隠します。そっして、そのフィギュアを見ながら、にやり。
 その後、パソコンの中にいる友だち(仮)に話しかける、というか、パソコンに記録を残すことで、心の拠りどころのシーンにしましょう。

セイラ:猫に語りかけるルイ兄ぃ、パソコンに話しかけるフレデリック。
 人間同士で話した私達は疲れが取れないのに!
ルイ:猫のマカンのおかげで、【動揺】も【疲労】も消えましたよ。
ジャスティン:猫は偉大じゃ。

 コンディションが回復しないままでも困るので、セイラとジャスティンも拠りどころのシーンをプレイする。

セイラ:ルイ兄ぃの家に行き、パパさんに会って回復します。他人の家では猫をかぶるあたし。
GM:他人の親で癒やされる。
セイラ:格好は変だけど、ちゃんと挨拶します。
ルイ:父親はねえ、「セイラちゃんはちゃんと挨拶できて偉いねえ。ルイも見習いなさい。ああ、うちも女の子が欲しかった」
ジャスティン:ルイは悲しくなっちゃう?
ルイ:いや、ルイは気にしないんでしよ。

ジャスティンの歌


ジャスティン:心の拠りどころは音楽の先生なので、先生のところで、恐竜の歌を作ろう。そう言えば、先生のことは何も決めていなかったけれど、優しい人だと思う。ロックに理解もあるし。
GM:先生、今は社会人としてちゃんとしているが、ストックホルムで音大生をしていたころには、パンクバンドをやっていて、髪を立てていたので、ジャスティンを優しい目で見ている。

 GMの脳内では、「けいおん」の先生のイメージ。

ジャスティン:(歌う)

 今日は恐竜をぶん殴ったぜ!

 ギターでぶん殴ったぜ!

 ぼこぼこにしてやったぜ!

フレデリック:直接的!
ルイ:ロックだとそういう歌詞もありそうだ。
セイラ:先生は「恐竜は現代社会のメタファー(隠喩)ですね」と解釈してくれる。
ルイ:抑圧する社会とか、教師とかを恐竜に例えて、ギターで殴った、すなわち、音楽で反抗したと。
GM:レジスタンスだ。パンクだ!
ジャスティン:そういうことだぜ! これがロックだ。

 タイトルは「恐竜をぶん殴った歌」。

GM:英語で言えば、「Strike the Dinosaur」。
ルイ:うわああ、ありそう!
先生(GM):で、どんな恐竜だったの?
ジャスティン:イルカみたいなやつ。
先生(GM):え?
ジャスティン:(歌)

 恐竜は歯のついたイルカみたいな奴。

 凶暴だけど、でも、ちょっと可愛い。

先生(GM):ロヴィーサ先生が喜びそうね。

 冒険のきっかけになったロヴィーサ先生は古生物大好きな女性教師。彼女にオングストローム氏がアンモナイトの化石を渡したのがきっかけだ。

ジャスティン:そうだ。ロヴィーサ先生にも、今度、この歌を聞かせよう。
「恐竜をぶん殴った歌」!

 音楽で癒やされるジャスティンであった。

あとがき


 おまたせいたしました。「ザ・ループTRPGリプレイ 6月の化石」第三回です。2月が多忙で遅くなってしまいました。
 今回は、石切場の謎が登場しました。いや、古生物は夢ですねえ。

 ここまでのプレイ時間はキャラクター作成を含めて「3:07:43」。
 次回は3月後半を予定しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?