さくら

桜も梅と並んで日本人に影響を与えた花です。万葉集では花といえば梅になりますが古今集,新古今集(かなり時代が離れています)の時代はすでに花は桜になっていました。

近所に咲いていた河津桜

私の感覚ですが梅の開花は比較的長期に亘るので咲き始めると『ああ今年も春が来るな』と安心感がある長閑な雰囲気になるのですが桜は嵐が吹くと一日で終わってしまう時もあるので咲き始めると『早く見に行かねば』と焦ってしまいます。

勧酒(于武陵)

勸君金屈巵,滿酌不須辭。
花發多風雨,人生足別離。
(君に勧む 金屈巵(きんくつし) 満酌 辞するを須いず。
花発(ひら)いて 風雨多し, 人生 別離足たる。)

井伏鱒二『厄除け詩集』

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

井伏の訳のハナは桜を指していると思いますが原文の花は一般的な花のことで桜ではないと思います。

桜といえば花見ですね。散ってしまわない内にお弁当やお酒を持って桜の名所に出かけますが花は見ずに人出が多かったと言う小噺があります。また『長屋の花見』、『花見の仇討ち』』等花見の落語があります。『花見の仇討ち』は仮装の話です。

古書店で購入した『小金井市史 資料編 小金井桜』には玉川上水の桜の資料が数多く集めれています。探し出せなかったのですが境の駅から仮装の虚無僧と武士が酒のやり取りをしながら歩いて行った話があったと記憶しています。その他明治から戦前の花見の時期の新聞記事、江戸時代、明治時代の寄稿文など興味ある文が満載です。

 仮装といえば最近知りましたが、お花見の場所でコスプレ大会をする催しを知りました。小さい子供のいる家族のコスプレは微笑ましいです。また若い人達の凝ったコスプレも目を見張るものがあります。これらもきっと花見の仮装の影響を受けているのでしょう。

 桜がなければ『春のこころはのどけからまし』ですがないとなんとも寂しい春になるでしょう。桜があった方がどれほど楽しいでしょう。
『みわたせば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける』

『山里の 春の夕暮れ 来てみれば 入相の鐘に 花ぞちりける』
『ながむとて 花にもいたく 馴れぬれば 散る別れこそ かなしかりけれ』
『八重にほふ 軒端の桜 うつろひぬ 風より先に 問ふ人もがな』

『暮れてゆく 春のみなとは 知らねども 霞に落つる 宇治の柴舟』
『願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ』

 古今集や新古今集にはたくさんの桜の名歌がありますがこのくらいにしておきます。 

(表紙の写真は枝垂れ桜で昨年のものですが本文の桜は全て最近撮ったものです。)

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