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スマホと子育て

ちょっと前の日経新聞電子版(2023年3月24日)に「学習障害・物忘れ・無気力 スマホ漬けが招く脳機能低下」という記事があった。[有料会員限定]なんだけど、なんと最もよく読まれた記事なんだそうだ。それによると「スマホ依存症の人の脳の働きに異変が起きていて子供では学ぶ力の低下、大人では物忘れや計算能力が低下する「プチ認知症」になるのだそうだ。
福島県の保健所などでは「スマホを母親が見すぎると、子どもの発達に悪影響がある」みたいなポスターがあちこちに貼ってある。
スマートフォンは現代の生活において不可欠なツールであり、親子ともその恩恵を受けているが、スマホが子供の発達に与える影響については、悪い面ばかり強調されている。
ちょっと必要があって、関連文献を色々探したが、今の所、悪影響があるというエビデンスはない。
そもそも、現代の育児でスマホもタブレットも子どもに見せないという生活は成り立つのだろうか?病院の待合室でも電車の中でも子どもがぐずり出すと、タブレットの動画を見せるシーンはよく見かける。
自閉症の子どもは乳幼児期からスマホやタブレットが好きなことがあり、それらを使ってインターネットにアクセスすることで、実世界の非構造化された混沌とした不安に満ちた世界から、一時的にでも逃れて、好きな鉄道や恐竜の世界にはいって様々な知識や情報を得ることができるし、それをきっかけに興味が広がったり、共通の趣味をもつ友だちができたりすることも多い。
母親に子どもにスマホをみせるなという専門家もいるけど、子どもがスマホを見ている時間だけが、貴重な自分自身の時間ですという人もいる。
特に自閉傾向のある子どもにスマホを禁止すると、子どもは混沌とした世界の中で不安が強まり、癇癪が増えたりするし、母親は疲弊し、自分の時間もなくなり、親子の関係も悪化しやすい。「子どもがイライラした時にスマホを見せると落ち着く、でも、それで落ち着かせる私は母親失格です」と泣いて訴える人もいる。
今の社会で、幼児期に子どもにスマホやタブレットを見せないで過ごせる家庭は相当に恵まれた環境にある人々に限られるのではないだろうか。
自分の場合は、外来で相談されたら、スマホもタブレットも推奨している。

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