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小説『歩いてみたら』

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コピー機のリース会社に勤める水沢博一は、会社から突然の休暇を言い渡された。「働き方改革」が理由らしい。趣味もないので暇になった。すると妻から愛犬•ケイティの散歩を頼まれた。妻も働…
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#短編小説

『歩いてみたら』 第4章

4  寝ても覚めても散歩のことばかり考えるようになった。  来週からは会社勤めの生活に復帰する。仕事が始まれば毎日のように広場に顔を出せない。ケイティの散歩係は継続するつもりだが、出勤前に徒歩で四十分もかかる公園に行くことは難しい。  となれば、メンバーと会えるのは休日だけ。  毎朝淹れるコーヒーの出来を山科夫妻に伝え、改善のアドバイスをもらえるのはせいぜい週二回だ。金森さんがライを撮る様子を見て腹を抱えて笑う機会も減るし、曽我さんと話して少年のように心をおどらせることも少

『歩いてみたら』 第1章

 1  働き方改革なんて他人事だと思っていた。その影響が我が身に及ぶことになるなど、毛ほども予想していなかった。  水沢博一(みずさわひろかず)が勤める会社はコピー機のリース業を主としている。大学を卒業し、入社してから六年間は営業部に籍を置いた。その後メンテナンス部に移り、客先に出向いて筐体の設置や点検、修理などに五年間励んできた。  とくに希望して就いた仕事ではない。  大学のキャリアセンターに求人があったのでエントリーシートを提出した。それが通ったから面接を受け、採用が