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4 寝ても覚めても散歩のことばかり考えるようになった。 来週からは会社勤めの生活に復帰する。仕事が始まれば毎日のように広場に顔を出せない。ケイティの散歩係は継続するつもりだが、出勤前に徒歩で四十分もかかる公園に行くことは難しい。 となれば、メンバーと会えるのは休日だけ。 毎朝淹れるコーヒーの出来を山科夫妻に伝え、改善のアドバイスをもらえるのはせいぜい週二回だ。金森さんがライを撮る様子を見て腹を抱えて笑う機会も減るし、曽我さんと話して少年のように心をおどらせることも少
3 広場に集う犬の飼い主グループを構成しているのは、主に四組である。 一、 山科(やましな)夫妻。飼い犬はセント・バーナードが二匹。名前は五郎丸とマイケル。彼らは毎朝、軽油で走るランドクルーザーに乗って公園にやってくる。住まいは運転免許試験場がある都下だ。二人そろって体が大きい。ともに同じメーカーのナイロンパーカを着ている。遠目からだと見分けがつきにくい。住居を兼ねたカフェを営んでおり、夫がキッチンを、妻がホールを担当している。 二、 金森(かなもり)さん。飼い犬