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中小企業の社長の皆様へ。10人の組織と1000人の組織。社長の悩みは大体一緒でございます

日々の会社運営、大変ご苦労様です。本日は全国44万8000社の中小企業の社長の皆様に、勝手ながらエールを送らせていただきたく、この手紙を書いております。

突然ですが、日本の会社は約180万社あるんです。その中には「ひとり社長」の会社もありますので、10人以上の会社となりますと45万社くらい。さらに1000人以上の会社となると、たった2000社です。

10人や100人規模の組織を率いている皆様のお悩み、お察し申し上げます。ニュースや新聞に出てくるような1000人以上の大企業を見て、こんな風に思われたことあるんじゃないでしょうか?

「優秀な社員が腐るほどいていいよな。うちは全然いないよ」
「マネジャーがちゃんと育っててうらやましいよ」
「1000人もいるなら5人くらいウチにくれよ。人が全然足りないんだよ」

改めましてお気持ちお察し申し上げます。

でも社長!

10人の会社と1000人の会社、実は大して違いがないんですよ。

そりゃ、事業やサービスの話をし始めたら、全然違いますよ。でも今日お話ししたいことは組織の話です。つまり、一人ひとりの社員とその人間関係やチームワークの話です。

10人の中小企業と1000人以上の有名企業、大して変わらないから、堂々と勇気を出して組織を育てましょう、という話です。「ウチじゃ無理」なんて考えずに、「やれる!」って勇気が湧いてくる話です。

社長はまさかお忘れではないと思いますが、念のため私のプロフィールをおさらいしておきますね。

以前、売上高1兆円以上の超有名企業で本社人事の管理職をしていました。社員数は本体だけで1万人、グループ全体だと4万人を超える会社でした。

そんな会社を46才で辞めたときには、「なんで辞めたの?バカなんじゃないの?」と言われました。

そんな話をすると、何だか自慢のように聞こえますが、全くそうではないんです。中にいた人間として言わせてもらいますと、大企業だってきれいごとばかりじゃないんです。

エクセレントカンパニーと呼ばれる会社でも、組織と人間関係の悩みは果てしなく尽きません。多くの社員がグチをこぼし、疲弊しています。

「仕事のアイディアはあれど、いったい誰がやるんだ」
「マネジャーのくせにマネジャーの仕事してない」
「部長の後任が全く育ってない」
「仕事の仕方を根本的に変えなければいけない」
「定年間際の鈴木さんが仕事しなさすぎる」
「業務量が多すぎる」
「人が足りない」
「この組織おかしい」
「上司が丸投げ」
「殿ご乱心」

完全にエンドレス・レイン状態です。涙が止まりません。

だからといって、中小企業もそれで安心していいわけじゃありません。大企業は問題に手を打っては失敗し、たまに成功しては、また失敗し、を繰り返します。その積み重ねでノウハウを積み上げる努力をしています。

中小企業も同じように挑戦し続けないと始まらない、ということでございます。

決して社長を批判しているわけではなく、人と組織の話で言えば、全国の中小企業と大企業の社長の悩みは大して変わらないということです。

確かに大企業には、有名大学卒で地頭がよい人材がそろっているかもしれません。

とはいえ、答えのある問題を解くこととビジネスは違います。

学歴に関係なく、課題を見つけて、対策を練って、行動する能力が求められます。もしマネジャーになれば、戦略立案やチームビルディングを新たに学ぶことになります。そこには問題用紙も答え合わせもありません。

社長、せっかくですので、ここからは少し真面目な話をしてみましょう。この話を聞くと、大企業とか中小企業とかどうでもよくなります。きっと勇気がでるんじゃないかと思います。


会社組織がなぜ必要か?

ある人がビジネスを始める。最初はひとりで頑張るが、次第に自分だけでは手が足りなくなる。

そこで人を雇って仕事を分ける。これを「分業」と言います。

さらに時間が経つと、分業した社員が「私のところにも人をつけてください」と言ってくる。そしてその社員が仕事を分ける。さらに人が増えると「分業」が大量に発生します。

でも、もともと一人でやっていた仕事を分業したわけですから、最後は「分業」した仕事を、もう一度みんなで協力して「統合」する必要があります。

なぜなら、お客様には「統合」されたサービスを提供しなければならないからです。

この「統合」の概念を理解していない社員は、こんなグチが出ます。

「ウチの部署はちゃんとやっているのに、あの部署は全然ダメ」
「営業と開発って、一生仲良くなれない」
「オレが正しい。あいつが絶対おかしい」

会社組織の本質は、この「分業」と「統合」です。当たり前のように聞こえるこの本質を、実際の組織では理解されていないことがとても多い。

10人の組織も1000人の組織も、この点は同じレベルです。社長のところだけじゃないんです!


組織の基本は「ヒエラルキー」

組織には、ボスがいて、手下がいて、またその下に手下がいる。つまり上下関係です。

仕事をまわしていると、必ず問題が発生します。その場合、できるだけヒエラルキーの下の方で判断させます。その仕事とお客様を一番よくわかっているからです。

下の方で判断することが最優先だが、もし必要なら上司に相談する。その上司が判断できないような問題は、さらに上へ上へと相談が上がっていきます。

これが合理的で効率的なヒエラルキー組織です。健全なヒエラルキー組織であれば、無理にフラットな組織にする必要はありません。ヒエラルキーであることが、創造性や戦略性を阻害することもありません。

この「ヒエラルキー」の概念を理解していないと、こんな社員が出没アド街ック天国してしまいます。

  • 部長になった途端、態度が偉そうになる。

  • 上司は偉い人だから、自分が違う意見を言ってはいけないと思い込む。

ヒエラルキー上のポジションは、役割の違いでしかありません。偉いとか偉くないとかの話ではないんです。

当たり前のように聞こえるこの本質を、実際の組織では理解されていないことがとても多い。

社長、10人の組織も1000人の組織も、この点は同じレベルです。社長のところだけじゃないんです!


大昔、人は単独で生きていたが、やがて集団を形成するようになる。

集団でいる方が、より安全に眠ることができる。猛獣に襲われないよう、交代で夜通し見張ってくれた。

集団で狩りをするほうが、より大きな獲物を取れるようになる。協働して狩りを行うことで、自分が命を失うリスクも少なくなった。

集団生活は、単独生活よりも生き永らえるようになった。

一方で、夜の見張り役がサボっていたことがバレると、その見張り役は責任を追及され、集団から除外された。狩りで役に立たない人間も、無能扱いされ、集団から除外された。

集団から外されると、単独で狩りをし、単独で眠りにつくことになる。命を失うリスクが高まり、飢えと襲撃によって命を失った。

こうして人は「集団から外されないようにどうすればいいか」という知恵を身につけていった。とんでもない長い期間を経て、人の本能にまで組み込まれるようになった。

その知恵の一つの形が、嫉妬だ。人間の醜さの象徴であると同時に、集団で生存し続けるために必要なスキルであり、誰しもが本能的に備えているものである。

他人の仕事にもっともらしいケチをつけるのも、自分より相手が優遇されることへの恐怖である。

自分が他人よりも優れた人間であることをボスにアピールすることは、醜い行為であるが、本能に裏付けられた人間の自然な行動なのである。


社、社長、シャッチョ!いま寝てたでしょ?

人と組織の本質を理解できたところで、最後に組織運営の肝をお伝えしておきますね。

企業はまず第一に、利益を出す組織であるということです。「利益を出す」活動に組織のトッププライオリティを置く。集団として、最も重要で目指すべきこと。

この「利益」を安定的に出せるようになってくると、次は組織の一体感を高める動きが社内に湧き上がってくる。集団自体のクオリティをあげたくなってくる。

その動き自体はいいものの、利益創出の能力とは関係ないところで、社内政治に長けていたり、情報通・事情通のような宦官が台頭し始める。そして、内向きな議論が増えてくる。

ここでもう一度、組織の本質に向きあう。

組織は「分業と統合」により利益を生み出すために存在し、「ヒエラルキー」構造によって、個人の事情・感情(嫉妬)に左右されることなく最適な意思決定を冷静に下す。

そして人材マネジメント。

優秀な上位20%には、昇格と報酬で報い、大半を占める中間層には、仕事の配分や働き方の自由度で報いる。そして「ありがとう」の言葉を忘れずに。

組織を阻害する下位数%には、残念ではありますが組織から卒業してもらうことも必要です。

社長には決断が求められます。時に苦しい選択を行うこともあります。何かを捨てて、何かを取る。今から一時的に悪化しても、長期的に再浮上することを考えます。

簡単な意思決定なら、誰も不満を言いません。

社長、あなたこそがその決断をできる唯一の存在なんです。

10人の組織も1000人の組織も悩みは一緒です!自信をもって、あなたの会社を育ててください。応援しています!

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